ある野良魔導士の書斎

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レジェドラのSSで、シリアスですよ(フーレイ、実は心配)


レジェンド・オブ・ドラグーン SS
『悪夢の影、約束の言葉』  著:フーレイ

―それは、思い出したくもない、痛い、夢…。
目の前で散っていった親友の姿と、記憶が重なる。
その瞬間、彼の中で全ての器官が麻痺した。

(これは、夢だ!あの時の悪夢だ!)

何度叫ぼうとも、彼は二度と、戻ってこない

ヘルライナ監獄の夕闇に、若き王は絶望の瞬間を迎えた。

:*・*・*・*・*:

 薄暗い、血生臭い、痛い夢。激しい音を立てて崩れいく友達。それが、幼き王、アルバートの脳裏に過ぎった。
「!?」
跳ね起きる。質素な寝台が軋み、少年は荒い呼吸を必死に整えようとする。額に浮かんだ汗で張り付いた前髪を、ゆっくり、はらっていく。
「…そんな訳…ない…よね…?」
信じたくなかった。そんな悪夢など。彼は深呼吸を何度も繰り返し、朝の日差しを浴びた。今日も一日、何事もなく過ごせたらいい。そんな事を心の底から願う。しかし、少しだけ…背中が疼いた。
「……っ」
痛みを堪え、黙って傷に触れる。父が殺され、アルバートに継承された月の宝珠。それが、体に埋め込まれている。これは自分が国の命と共に守る物だ。
「行かなくちゃ」
彼は頷く。今日も「王」として、己の命を全うする為に…。

 ラヴィッツは騎士であると同時にアルバートのよき理解者であり、槍術の師であり、友人である。そんな彼が主の異変に気付かない筈が無かった。槍術の稽古が終わり、何時ものように休憩を取っている時も「何かがおかしい」と思ってしまった。
「アルバート様、いかがなされましたか?」
少し疲れているようにも思える主に、彼は問う。まだ少年と言える年齢の王はにこっ、と微笑んだ。けれどそれは、どこか陰のある笑顔だ。
「いいえ、何でもありませんよ」
「しかし、何時もより顔色が優れません。…何かあったのですか?」
「本当に、何でもないんです!」
少し強く言ってしまった。発してからアルバートは我に返り、ばつが悪そうに目を逸らす。その仕草が余計に気になってしまう。が、これ以上聞いてもダメかもしれない。仕方なく、頷くと彼は足を投げ出して座っていたアルバートの隣に腰を下ろす。そして、同じように足を投げ出して空を見上げた。
「…あの…」
アルバートはおずおずとラヴィッツを見た。従者は不思議そうに主と瞳をあわせる。
「…?」
「ごめんなさい。実は…」
そこまでいい、一度唾を飲む。思い出すだけで背筋が冷たくなっていく。けれど、何故だろう。長年そばに居てくれる彼になら、兄とも言える彼になら全て言ってしまえる気がした。
「実は、貴方が死ぬ夢を見たのです」
その言葉にきょとん、としてしまうラヴィッツ。しかし、彼はくくくっ、と笑ってしまった。それが、アルバートには不思議でたまらない。
「ど、どうしで笑うのですか?」
「いつでも、そんな可能性があるからですよ、我が君」
ラヴィッツは笑顔でそういうものの、アルバートの表情は険しくなる。
「でも…そんなのは嫌です!」
「しかし、私はアルバート様の盾にも剣にもなると決めた存在です。いつ、貴方の前で死ぬやもしれぬ存在なんです」
朗らかに、穏やかにラヴィッツは語る。しかし、すっ、と…槍を手に戦うときのような顔で、彼は言葉を続けた。
「貴方は、この国の王。ならば、従者を失う覚悟を…しなくてはならないときが来ます。…時に、国が分かれた現在は」
そう言われ、少年ははっ、とした。そうだ。この国は二つに分かれている。彼が納めるバージルと、伯父が納めるサンドラに…。
「でも……っ!」
アルバートの眼が、険しくなる。脳裏に浮かぶラヴィッツが死ぬ瞬間。そして、重なってしまったのは…父親の死ぬ瞬間。影が、飛び散る血が、音が、全てが重なっていく。
「それでも、大切な人を失うのは…もう、嫌です…」
涙が、零れた。震えていた。息が苦しくなっていく。ズキン、背中の宝珠が疼いていく。同時に、脳裏の遺体がバウンドしていく。
「それでも…覚悟しなくては、いけないのですか…?」
その途惑った言葉に、ラヴィッツは息を呑んだ。目の前にいるのは、確かにバージル公国の王。しかしその前に、まだ幼い子どもなのだ。
「アルバート様…」
彼は目を細め、ただ優しく少年の頭を撫でる。そして、改めて跪く。
「ならば誓います。この名と槍にかけて…。私は、貴方を守り、共に生きていきます。たとえどんな事があろうと、生き抜いて、貴方を支えます」
「本当…?」
嗚咽を殺し、少年は問う。
「ええ…」
本当は、そんな約束が出来ない。そう思いつつも、ラヴィッツは誓う事にした。
「本当、だね?」
「はい、アルバート様」
笑顔でそういわれ、幼い王は頼もしい従者にだきつき、ありがとう、と呟いた。

:*・*・*・*・*:

―12年後

 アルバートは、夢から醒めた。そして、あの絶望を思い出す。目の前で、ラヴィッツは死んだ。何者かの持つ剣に刺され、永遠に消えてしまった。
「あの約束、やはり果たせなかったのですね」
そう呟き、泣きそうになるのを堪える。歳を重ねるにつれ、彼にもあの時の言葉がわかるようになってきた。あの約束は、幼い自分を安心させる為の約束だった。それでも、絆だと、信じたい。けれど、その一方で、あんな夢など見なければ良かった、とも思う。見なければ、まだマシだったかもしれない。14歳の自分は、この瞬間を見てしまったのかもしれないのだから。
「…アルバート?」
不意に、声がかけられる。穏やかなアルトボイスだった。顔を上げると、黒髪の女性がそっと様子を伺っている。
「ロゼですか。…どうしたのです?」
「いえ、苦しそうだったから」
彼女はそういうと、水を手渡す。ぬるいが、頭をすっきりさせてくれる気がした。
「だいぶ、楽になりましたよ」
「ならば、いいんだけれどね」
アルバートの言葉に、ロゼがどこか心配そうに頷く。そして、何故かそっと、アルバートの頭を撫でて…、くるりと背中を向け、どこかへ歩いていってしまった。辺りを見渡すと、ダートもシェーナも眠っていた。
「ロゼ…?」
不思議に思う。なぜ、彼女は頭を撫でたのだろうか?けれど、懐かしい。あの悪夢を見たときも、ラヴィッツは頭を撫でてくれた。なんだかくすぐったくてしょうがなく、思わず、くすっ、と笑ってしまった。

:*・*・*・*・*:

 長い月日が流れ、アルバートは旅から戻った。旅の途中で出会った姫を妻に向え、既に子どももいる。
(…おや?)
彼は読んでいた本にしおりを挟む。何処からとも無く、幼い息子の泣き声が聞こえてくるのだ。どうしたのだろう、と思っていると、幼い王子は父王に駆けてきた。
「どうしたんです……?」
「……っ…」
王子は父王にしがみつき、目に涙を浮かべてこう言った。
「こ、怖い夢を…みたんです…」
そんな息子をかわいく思い、アルバートはそっと、息子の頭を撫でてやった。

(終)。

あとがき
 …ども、フーレイです。不肖ながらラヴィッツとアルバートの話。なぜかロゼ姐さんもでております。ブラックキャッスルに行く前だと思ってください。なんとなく「予言夢」チックなネタが湧き、こんなシリアスなSSになりました。なんか物足りないって方も居るでしょうね。第一、ラヴィッツはアルバートにとってかけがえの無い戦友ですからね。ファンの皆さん、ごめんなさい。
 因みにこれは三角さんへ捧げます。エミル姫&『月の短剣』を描いてくれ!という俺の我が侭を叶えてくださる、との事でお礼です。バトンは今しばらくお待ちを。

 最後に。実はラストにアルバートの子どもがでておりますが…それは俺が考えたハルモニアか、三角さんが考えたペリドット君か…。それは皆様のご判断にまかせます。

それでは、今回は是で。

ペリドット君とハルモニアのイラストが大好きな著者:フーレイ

おまけ
…三角さん、いつか親子でドラグーンVerを描いてください(アル様&ペリ君で)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-10-19 00:12 | 閑人閑話図書館