ある野良魔導士の書斎

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第七夜:暗黒の闇編


-暗黒の

黒曜の煌きを宿す、聡明な竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、きまぐれなる旅人。
記憶虚ろな時を超えて、鮮明なる現在へ躍り出る。

 何故だろう、何時の間にか、「それ」を手にしていた。少数民族の末裔であるコーラルは、手の中にある宝珠を見つめ、いつも思った。気がついたとき、自分は涙を流せなかった。そして、黒い「それ」を手にしていた。初めはこれの所為で涙を流せない体になった、と思っていたが、どうも違うらしい。なんとなく、そんな考えと共に、崖の上からある一行を見つめる。一人を除く四人は自分とさほど変わらない年齢だろう。そんな彼らは、沢山の魔物を相手に戦っている。キャスケットを被りなおし、小さく溜息。自然と、懐の宝珠に触れながら。
(苦戦しているようには見えない。けれど、面白そうだ、戦いの様子でも見るか)
コーラルは内心で呟くと、その場に跪いて上半身を折りたたむ。腕を交差し、額を膝に押し付けた。少数民族、ハツバサの民が戦いの前に行う『目覚歌(めざめうた)の儀』である。
「…ハツバサ、失われし鋼たる民よ。今目覚めて〈竜〉に仕えよ。ハツバサ、失われし戦の民よ」
そう唱え、コーラルは懐からナイフを二本取り出し、急な崖を駆け下りた。

 レニを初めとする一行は崖から降りてくる少女に目が点になった。両手に大振のナイフを持ち、人とは思えないスピードで走っている。それでこそ魔法であるかのように。―これがハツバサの民の特徴だ。大昔から特殊な戦闘技術を持ち、戦っていた―そして、華麗に舞う彼女に目を奪われた。ティルハーニャが倒し損ねた獣を、彼女は一撃で倒したのである。それが最後であったらしく、一行は言葉を失ったまま、己の得物を懐へ戻した。
「きみは?」
レニは不思議そうに問いかける。すると、キャスケットを被った少女はにっ、と笑った。
「ハツバサのコーラル。追い剥ぎまがいの冒険者さ」
何処か小悪党めいた笑顔に、レニたちが思わず笑ってしまう。どう見ても似合わないのだ。どこからどう見ても普通の女の子にしか見えない。けれど、確かに人並み外れた戦闘能力を持っているようだ。
「君たちは〈竜〉なんだろ?だったら、その旅にお供させてよ」
「でも…危険な旅ですよ。それも普通では考えられないような…。それでもですか?」
ハルモニアが不安げに問い、それにコーラルは若干むっ、としつつも
「キミやあっちの細いお嬢さん方よりも、戦えるぜぇ?」
「僕やハルちゃんはキミと一緒で男なんだけれど?」
「いや、彼女は女性や」
プラチナの抗議にティルハーニャが訂正をする。灰色のローブを纏った彼女は、一見男に見えるのだ。彼の一言に満足したのか、コーラルは乾いた地面を一つ踏んでレニ達を見つめた。
「竜に仕えるのが、民の誇り。キミたちが噂の『竜』なら僕は従者になる。よろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしく。ただし、仲間としてね」
ディオは優しい笑顔で握手する。コーラルはその体温を感じ、楽しげに噛み締めた。

 涙は慈愛の証。『慈愛と勇気』が、彼らが彼らである証。それが、コーラルには苦しかった。彼女は涙が流せないのだ。村人たちはそんな彼女を気遣っていたが、一部の人は村から追い出そうと考えては行動に移した。だから、そういった奴らをどうしても見返したかった。
「先祖は、遠い昔…〈竜〉と共に有翼人と戦った、と伝えられている。それ以来、我々は何時の日か再び〈竜〉に仕える為に、日々技を磨いているのだよ、コーラル」
両親を失って以来自分と兄を育ててくれた長が、ある日コーラルに語った。いつものように村の子供たちと喧嘩して、負けて帰ってきた日のことだ。
「〈竜〉に仕える事は誉。だからその戦いでは多くのハツバサが戦場へ躍り出た」
長はそう言うと聞き入る少女の頭をそっと撫でる。
「〈竜〉って…なに?」
「〈竜〉とは、巨大な存在だ。魔力と勇猛を生き物にした、と言った存在。もう一つが…それに認められし人間。我々の先祖は認められし人間たちの為に共に戦ったのだ」
長は浪々と、優しく、深く語り続けた。コーラルは顔を上げ、長を見つめる。
「ぼくも、〈竜〉に仕えられる?そしたら…認めてくれるかな…ハツバサとして」
希望が、見えた。自分が、民の一員である事を認めてもらえる可能性が。涙が流せなくても、「勇気」はある。それを、見せ付けたかった。

 旅の途中、噂の天才吟遊詩人とであった。彼女は若干苛々しているようだったが〈竜〉が動き出した事を教えてくれた。そして、レニたちと会ったのである。過去の事を振り返りつつ、コーラルは前を向いた。
「それじゃ、行きましょか」

 後に、彼女は持っていた宝珠の正体と涙が流せない理由を知る。それを意味するのは長い旅と戦いの始まり。それでも、いや、だからこそ笑顔で受け入れる。誇りと涙と世界の為に、歩くことを選んだのだ。

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 竜騎士のラストは一番のおちゃらけキャラクター…の筈だったコーラルです。ロゼが『ミステリアスな女戦士』ならばコーラルは『意味不明な自称悪党』というイメージで行きました。次はいよいよおまけの話になりますが、タイトルが以下の通り。

災いの雫

 これは最後まで『レジェンド・オブ・ドラグーン』をプレイされた方ならわかるであろう代物です(僕はまだ攻略本に載っている所までしか知らないので本当のエンディングは知らないんですが…)。そして、僕の中で思いついてしまったネタはレジェドラではなく、別の物語として書こうかな、などと考えています。

※次回は前編と後編に分けます。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-25 22:05 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)
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