ある野良魔導士の書斎

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第五夜:黄金の地編


-黄金の

金色に輝く、安寧の竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、古の遺伝子眠る者。
真実を求めんとする思いが、運命の扉を開く。

 穏やかな朝の光が、カーテンを越えて、本に溢れた空間に流れ込む。その一角には沢山の机があり、その一つに沢山の本が積まれている。そして、机に伏せて眠っている大柄な青年の頬を僅かな光が撫でた。暫くすると青年の表情が僅かに曇り、手が動く。運悪く積んであった本を崩し、大きな音を立てて机の下へ落ちて行った。
「うわあっ!?」
それに驚いてしまったのか、青年が飛び起きた。途端にバランスを失い、思いっきり後ろへひっくり返ってしまった。鈍い痛みが、背中全体を覆っている。
「いててて…。あーあ、またやってしもうたか」
青年は苦笑し、身を起こす。そして素早く本を拾い上げた。そのどれもが大昔に起った【ドラゴン戦役】関連の書物だ。その中でも目立つのが【黒い魔物】に関する物。【月の御子】が生まれるはずなのに、変わりに【黒い魔物】が現れては町や村を壊滅させる。そこで、彼はある仮説を立てた。【黒い魔物】は【月の御子】を殺しているのではなかろうか。だから、【月の御子】は何時まで経っても現れない…。
「いつかは、『ドラゴン戦役』の遺跡を巡るんだ。この足で…」
そして、この謎を解いてみせる。1人決意を確認する。そうしながらも、彼は本を片付け始めた。名前はティルハーニャ。ミール・セゾー国立図書館の司書であり、学者もやっている。若き学者の夢は、【月の御子】と【黒き魔物】の謎と関係を解く事…。

 ティルハーニャが事務所に行くと、同僚が苦笑して出迎えた。彼が図書館で夜を明かすのは時折あることだから。本当は、非番であるはずなのに彼が居る。それだけで研究に熱中しすぎた事が丸わかりなのである。
「まったく、お前は本当に好きだよな…『ドラゴン戦役』の研究」
「まぁ、ね。なんか…こう、惹かれるんよ。魂がさ、『解いてくれ』って言うとるし」
同僚の言葉に、ティルハーニャが苦笑する。それは物心付いた頃からで、二十代後半に差し掛かった今でも、それは変わらない。
「そんなんだから未だに嫁の貰い手がないんじゃよ」
そう言ったのは上司だ。彼にそう言われ、ティルハーニャは苦々しい顔になる。研究の話になると人が変わったようになるため、近づいた女性は全て去っていく。それ故に中々恋が成就しない。それだけ、研究にのめり込んでいるのだ。この青年は。
「だったら、今の恋人は『ドラゴン戦役』関連の本やろねぇ」
彼はそう言うと一礼し、事務所を後にした。

 とりあえず、住んでいる家に戻る。家族は居ない。子供の頃は孤児院で育った。赤ん坊の頃に拾われ、現在も時折子供たちに読み書きを教える序に食事を食べに行く。彼にとって、孤児院の子供たちが弟、妹分。出身者が兄弟・姉妹。先生方が親同然だった。
「本当に、浪漫が詰まっているよな…『ドラゴン戦役』は」
彼は自然にそう呟くと、肌身離さず持っているお守りを懐から出した。金色に輝く宝珠だ。拾われた時には既に手にしていたらしく、特に親しかった先生からずっと持って置くように言われていた。思い出せば、ミランダ様もそう言っていたっけ。彼はそっと、宝珠を両手で包み込む。そして思い出した。生まれる直前か、もっと前にも、ドラグーンが活躍したらしい。詳しい事は知らないが、ヴァラージや怪物と戦い、数々の危機を救っているという。
(それに、沈まぬ月の崩壊も関わっているんやろうな。…ああ、会ってみたいよ)
そして、旅の話を聞きたい。ティルハーニャの思いは徐々に膨らんでいく。彼らの物語の中に、世界の真実が見えてくるかもしれない。そんな予感が、彼の中にあった。それに、妙な噂も耳にする。最近、異常気象や魔物の異常繁殖、巨大化の謎に、ドラグーンが立ち上がった、というのだ。だったら、余計に気になる。そのパーティに出会う事があれば…。ティルハーニャの目が光る。そして、自然と口ずさんでいた。
「ドラグーンの一行に同行し、物語が作られる瞬間を…この目で」
その言葉に反応したのだろうか、両手の隙間から、金色の光が零れ出た。思い出す。似たような宝珠を持っていた子供たちに、図書館への道を聞かれたことを。

後に彼はそのドラグーン一行に出会う。それは一度出会っていた子供たちだった。後から自分もドラグーンの1人と知ったとき、ティルハーニャは決意する。
「真実を、この手で掴む。…たとえそれがどんな結果であろうとも」
そして、手にした仲間をこの手で守る…とも。

お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

 …番外編もプラチナで折り返しを迎えました!残りは彼を含め3人となりましたが…いかがでしょうか?実は彼の話も三角さんに期待されている模様。期待に添えたかが不安だったりします。彼のアイディアは実を言うと『黒い魔物』の話があったからこそ生まれたんです。つまりはロゼがいなかったら彼はこの世に生まれていなかったんですね(だからと言ってロゼが産んだ子ではありませぬ:汗)。残り3話よろしくお願いします(最終話はオリジナルです)。
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by jin-109-mineyuki | 2006-03-11 01:52 | 閑人閑話図書館 | Trackback | Comments(0)
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