ある野良魔導士の書斎

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第一夜:真紅の炎編


-真紅の

紅蓮なる、勇ましき竜の騎士。
その鎧受け継ぎしは、憧れを力に戦う娘。
目覚め近し今、様々なる思いと共に剣を握る。

 静かな朝を迎えるセレスの村。その朝霧を切るように一人の少女が木刀を振るう。漸く顔を見せた太陽が、僅かに上気した頬を、汗の浮かぶ額を照らす。ビュンッ、と風を切る木刀。見慣れた者が彼女を見るならば、おそらく誰もがこう言うだろう。
『戦う様は父親に生き写しだ』
少女の名はレニ。セレスの村を治める元傭兵の娘であり、誰もが認めるじゃじゃ馬だ。彼女は嘗ての父親のように強くなる事を目標に、毎日練習を欠かさない。父親は過去に長い旅をしており、それで多くの仲間と出会っている。その一人にセルディオの王がいたりするが、レニは気にしていない。父親は彼女の誇りであり、憧れだった。

 レニは朝の稽古を終えると家に戻った。母と弟が朝食の準備をしている。そして、テーブルをふと、見たが…其処に居る筈の父は今、居ない。3日前から何かの用で出かけているとは聞いているが、なんだか不安だった。
「レニ、どうしたの?」
不意に、声がかけられる。振り返ると双子の弟・ディオがいた。彼はレニの顔を見、表情を曇らせる。理由が、何と無く解かっているのだ。
「父さんのこと?」
「いや、なんでもないよ……」
レニは首を横に振り、席に着く。ディオはそれが不安になりながらも彼女に習った。湯気を立てる目玉焼きなど質素な朝食が並ぶ中、三人で食事を取り始めた。

朝食を食べ終わると、レニは母親の使いでベールへ向かうことになった。身支度を素早く整え、村を出る。その際、お守りとしている紅い宝珠を胸元にしまった。
(父さんも、ベールに居るのかな?)
ふと、レニは思った。父親が色々な用事で村を出るのは多々ある事だが、奇妙な心配がするのは珍しいことだ。また、不安が色濃くなる。自然と胸元の宝珠を取り出し、深い溜息と共に握り締めた。幼い頃、川遊びの時に拾ったもので、両親はそれを見て多少驚いた。一体何かは教えてくれなかったが、大切にしなさい、と言われていたので大切にしているものだが…。
(父さんなら、強いから心配する必要なんてない筈なのにね)
レニは立ち止まり、深く目を閉ざした。そして、自分の意識が何処か深い場所へと引かれていくのを感じ取った。

ぼやけた光の奥に、父親はいた。
けれど、遠い、とおい、何かに阻まれて…届かない。
遥か彼方に、まあるくて、白く輝く、大きな月があった。
(月なんて…無い筈なのに…)
よく見ると、手前に自分がいる。
しかも、炎の紅を纏い、剣を手にして。
背中には、確かに見覚えのないような、あるような、皮膜の翼が…。

そこで、レニは目覚める。

 我に返ったとき、レニはその場に倒れていた。急いで立ち上がり、手に居ていた宝珠を胸元へしまおうとした。が、手を止めて見入る。何故だろう、紅い宝珠は僅かに光り輝いているように見えた。暖かい、力強い何かが自分を呼んでいる気がした。
「ねぇ、何か知っているの?父さんがどこに行ったのか、知っているの?」
その問いに、宝珠は答えなかった。

 後に、レニはこの宝珠の正体と父親の消息を知る。しかし、それは彼女の運命を変える長い旅の前奏に過ぎなかった。

(終)


お題:いまだにレジェドラが好きだという、小粋な人へ捧ぐお題
   出題者は三角 勇気さま。HP『碧緑翠』にお題はあります。
著:天空 仁(フーレイ)

ここから抜粋したお題七つ+オリジナルテーマの計八週連続で『勝手にシリーズ』の延長戦SSをかいていきますので、よろしくお願いします。感想などありましたら書き込みをお願いします。更新は毎週土曜の予定です。
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by jin-109-mineyuki | 2006-02-11 23:37 | 閑人閑話図書館 | Trackback
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