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ある野良魔導士の書斎

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レジェドラSS第一弾でifです(フーレイ、ちょっとドキドキ)


レジェンド・オブ・ドラグーンifストーリー
『真夜中の出会い』  著:天空 仁(フーレイ)

 それは、ちょっとした運命の悪戯だった。

 セルディオの王都・ベール。インデスル城の奥深く。夜も更けた地下書庫を一人歩く影があった。小柄な、未発達な影だ。片手にはカンテラを持ち、そぉっと歩いていく。
「この辺りになら、面白そうなものあるかもね」
少年は淡い金髪をゆらし、くすっ、と笑った。この少年の名はペリドート。この国の第一王子だ。上にはやさしい姉が一人居る。やんちゃな王子は夜中に自室のベッドをこっそり抜け出し、地下書庫へと足を踏み入れた。パジャマの上にマントを羽織り、寒さを防いではいるが、若干肌寒い。それでも、好奇心が勝って足を進めている。
「あれ?」
ふと、ペリドートは顔を上げた。背よりも高い本棚の奥に何やら光るものがある。一気に興味を惹かれてしまう。何だろう、と思って近寄ってみるとそれは大きな鏡だった。
「こんな所に鏡が…?」
不思議に思い、覗き込んでみた。こんな暗い場所に何故この鏡はあるのだろうか。相当古いものであるらしく、綺麗な装飾には蜘蛛の巣が張っている。縁には文字が刻まれているようだったが、一部消えていて読めなかった。傍らの箱にカンテラを置き、もっと近寄ってみる。
「一体、何でだろ…」
ペリドートが首を傾げ、鏡に触れた時である。鏡に一つの波紋が広がり、音もなく一度だけ光った。そして奥を見ると、自分に似た別人が映っていたのだ。思わず、目が合う。
「「うわぁっ!」」
思わず尻餅を付くが、それは鏡の向こうにいる少年も同じだった。よく見ると眼鏡をかけている(半分ずれているが)。ペリドートより若干華奢だが、髪の色とパシャマは全く同じだ。
「き、君はだぁれ?」
鏡の奥から声が聞こえた。女の子のそれにも聞こえる、やわらかでのんびりとした声だ。
「僕はハルモニア。一応、セルディオ国の第一王子です」
にっこりとして、ハルモニアと名乗った少年は言った。けれどこの国の王子って…?ペリドートは訝しげに口を開いた。
「俺はペリドート。セルディオの第一王子だ」
「ええっ?」
今度はハルモニアが驚く番だった。彼は目を真ん丸く見開くと、ほんのちょっと首を傾げる。そしてこんな事を言い出した。
「そうか…、これはこういう事なのかしら。夢という可能性もありえるけれど…」
「ど、どうしたんだ?」
ペリドートが問いかける。ハルモニアはちょっと考えると、へにゃ、と柔らかで温厚な笑みを向けた。
「では聞きますけれど、父様と母様の名前を同時に言いましょう」
「いいよ」
二人が息を吸う。そして、同時に口を開いた。
「「父の名はアルバート、母の名はエミル!」」
途端に、二人ともキョトン、となった。
「そ、そんなことって…あるのか?まさか、これって…こういう事なのか!?」
「ど、どうしたんです?」
今度はハルモニアが問いかける。ペリドートはちょっと考えるとなんとなく、鏡の向こうの相手も同じ事を考えているのかもしれない。
「これはまさか」
ペリドートが鏡に触れる。それにハルモニアも合わせると、二人は掌を重ねているように見えた。
「これはもしかして」
ハルモニアは何と無く嬉しくなる。それはペリドートも同じ。なんだか胸がわくわくして、同時に口を開いた。
「「別の可能性の世界?」」

 ペリドートはやんちゃな王子。いつも窓から抜け出して、城下で遊んでいる。一方ハルモニアはのんびりとした王子。庭に畑を作って野菜を作ったり本を読んだりしている。ペリドートには姉が一人いるだけだが、ハルモニアには姉と弟がいる。けれども二人とも父親の槍を振るう姿に憧れて、槍術を学ぶようになった。二人は気が会い、お互いの世界のことを話し合った。共通している事と違う事の差を楽しむように。そして、ポツリ、とこんな事がハルモニアの口から零れ出た。
「あのねぇ、最近妙に気になる事があるの」
「…俺もだよ。なんだか、誰かが呼んでる気がするんだ」
ペリドートが答える。そして、何気なく胸に手を置いた。
「もうすぐ、物凄い事になりそうな気がするんだ」
「僕も、そうなんだよ。毎日、同じ夢を見るの」
二人は顔を見合わせて笑った。予感がする。何処かで誰かが呼んでいて、それに自分の魂が引かれている事を互いに感じあっていた。
「きっと、俺…もうすぐ国を離れるよ。そんで父上みたいに旅をするんだ」
「それは、世界の運命をかけた旅になるかもね。父様たちみたいに…」
二人は、手を重ねる。鏡越しだが、確かに暖かい。互いに、また会えるといいな、と思っていた。もうすぐ、別れの時が来るのを何故だろう、二人とも知っていた。
「また、会えるかな?」
「あえると思う。ううん、きっと会えるよ!」
ハルモニアにペリドートが笑って答える。だから、寂しくなるけれど、笑ってみせた。短い時間だけれども、異次元の友達が出来て、嬉しいから。きっとまた会えると信じたいから。
「またね、ペリドート!もっと話そうね!」
「またな、ハルモニア!」
そう言って、二人は分かれる。カンテラを持って、鏡に背を向けて。瞬間、鏡はまた光り、波紋を広げる。鏡はまた、普通の鏡に戻った。

 二人が出会って数日後、予感は的中した。ペリドートも、ハルモニアも父親と同じように碧緑竜のドラグーンとして覚醒し、他のドラグーンと旅に出る事になった。『動なる戦い』がまた起るのだ。けれど、きっと乗り越えていける。二人はそう信じていた。

(幕)

あとがき
 どうも、フーレイこと天空 仁です。これは三角 勇気さまへのお礼SS第一弾です。第二段はのちほど。とりあえずディスク二枚目の…重力崩壊の谷行き前(メルの仲間入り直後?)です。

 この物語は…僕と三角さんが考えたアルバートとエミルの子二人が主人公で、夜中に出会ってしまうという…話なんです。話がつたなくてすみません。実を言うとヒントは小説版『玻璃の薔薇』だったり(笑)。一つの異変が起るとそこにピンが刺され、可能性ごとに枝分かれしていく…というものでそのうちの二本が鏡を通じて…という感じですかね。うわー、読んだ人にしかワカラナイ例えだー(汗)。それはいいんですが、恐らく誰にも満足していただけない意味不明なものになってしまったような気がしますが、僕はちょっと満たされています。とりあえず可能性を分に出来たので。本当はハルモニアに薀蓄かたらせてペリドート君につっこんで貰う予定でした。

 と、いう訳で今回は初SSとなったのですが、これまで。それでは、また。電文乱文閑人閑話失礼しました。
天空 仁(フーレイ)
by jin-109-mineyuki | 2006-01-31 10:33 | 閑人閑話図書館