ある野良魔導士の書斎

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第一話:目覚めた眠り姫(6)


「まあ、いい。…それにしても、何かあるぞ。この魔力は常人のものじゃない」
少し考え込むエルデルグを確認すると、ベヒモスは目を閉ざし、指で印を組んだ。強力な魔力を発するイリュアスを庇おうと、結界を張ったのだろう。
「…千年以上生きた精霊の魔力に近い。いや、それ以上だな」
エルデルグが何か問おうとしたがベヒモスは一人呟いて声がかけられない。彼はイリュアスの左腕に手を翳し、何か調べているようだった。
「そこには痣がある。…なんか奇妙な」
「奇妙な?」
気が付いたエルデルグがベヒモスに助言する。精霊は聞き返しつつもそっと、傭兵の左腕を取った。すっ、と彼女の腕を捲くる。…目に飛び込んできたのは鉤束のような縦長の痣だった。途中に目のようなものもある。そして、それにベヒモスは見覚えがあった。ごくり。彼の喉がなる。生暖かい汗が、だまって背中を流れて行った。
「おい、どうしたんだ?」
「い、いいや…何でもない」
ベヒモスはそそくさと袖を戻し、そのまま脈を図る。序に魔力も見る。…暴走しかけている魔力は行き場がわからず、彼女の身体・精神を駆け巡っていた。
(これは…拙いな)
深い、深いため息が漏れる。彼はエルデルグの目をじぃ、と中まで見えるように見つめた。
「お、おっさん?」
強い眼差しにたじろぐエルデルグ。
「…例えばの話だ」
「?」
ベヒモスは真面目な顔のまま、エルデルグの目を見続ける。若者の背中に冷たい汗が流れた。
「本当に心から愛せる人ができたとする」
「はぁ…」
「その人にとんでもない力があって、制御できずに苦しんでいる。そして、制御できなかったらその存在はおろか、世界までもが秩序や命を失ってしまう」
「……ん?」
「リミッターになれるのはその存在が心から信頼できるパートナーだけだ。しかし、失敗すればお前の命も…魂も危うい。それでも、お前は…力になるか?」
なにを言い出すんだろう、この人は。エルデルグは半分呆然となりながらベヒモスを見た。しかし、彼はあくまでも真面目な顔をしていた。

 空の魔族であるシルクレアはいつでも翼を召喚し、空を舞う事が出来る。大空は彼女の支配エリアといっても過言ではない。そんな彼女が思わず飛行中に落ちそうになるほどのニュースが伝えられたのだ。それを先ほど夫である精霊に言った所である。
「もう、そんな時期なのね…」
彼女はそういいながらはるか南を見つめた。そこには大きな海があり、竜がいる。人々が『竜王の海』と呼ぶ恵み豊かな海だ。
「貴方が、呼んでいる存在が…イリュアスなの?」
彼女の声は、僅かに震えていた…。

 そして、同じ頃。四枚翼の青年を伴ったエルフは不敵な笑みを零し、シルクレアと同じ方向を見ていた。『竜王の海』の何処かに、本当に竜の王の一頭が存在する、と睨んでいた。
「その竜を…是非とも愛でてみたいものだね。私の腕の中で」
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by jin-109-mineyuki | 2005-07-16 10:10 | 小説:竜の娘(仮) | Trackback | Comments(1)
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Commented by みんなのプロフィール at 2005-07-16 15:28 x
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