ある野良魔導士の書斎

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つまりは、経緯です (ネフライト、おねだりしました)


 ソレント渓谷を流れる水の音。そして、鳥の鳴く声。風が吹けば木々がざわめき、その合間に幼子達の笑い声が混じっていく。
「ねえねえ、今日は何して遊ぶ?」
「この間おいしい木の実を見つけたから、そこに行こうよ!」
「うん、それがいいねぇ」
楽しげに話す子供達の中にはエルフや、ワービースト、ハーフエルフもいた。彼らの住んでいる村には様々な種族の人間たちが存在しており、それが彼らにとっては当たり前だった。
「あれ?アメジストは?」
背の高いエルフの少年の言葉に、おさげの少女が苦笑を浮かべる。
「また樹の上で眠っているかもしれませんね」
「レナータ、まだ固いなぁ。俺たちは友達なんだし、もう少し気楽にいこーぜ?」
少女の方をたたいたのは浅黒い肌をした少年。その傍らではちょっとだけ少年のような少女が頷いている。
「アンバーの言うとおりだよ。
 この村の皆、レナータを友達だって思ってるんだもん♪」
「それにさ。お前のお師匠様には村長の命を救ってもらっている。
 感謝してもしきれないよ」
別のハーフエルフの少年がそういい、レナータと呼ばれた少女はようやく頷いた。その様子に、アンバーと呼ばれた少年がにっこり笑う。
「まぁ、困ったことがあれば何でも俺やネフィ、アメジの兄貴に言ってくれ。
 力になるからさ」
そういって、少年は傍らのネフィ、と呼んだ少女と肩を組む。刹那、その少女は少しだけ頬を赤くした。

―そう、それは……幼いころの……。

カードワースショートショート
『切なる我儘』 著:天空 仁

 それから何年経っただろうか。既に成人したネフライトは、ある晩、村長でもある母親に呼び出された。
「何でしょうか、母上」
「実は……凄く言いづらいんだけれども、お見合いしてもらいたいの」
母親は凄く申し訳なさそうにそういい、ネフライトは表情を険しくした。お見合いなんてしたらそのまま嫁がされるかもしれない。好きな人がいる彼女としては、それは嫌だった。しかし、自分は村長の娘である。村の存亡をかけたものならば応じなくてはならないかもしれない。だが、彼女の記憶が正しければ、この村はそんなに厳しい状態ではない。
「……母上、それはどの様な経緯でお見合い話が持ち上がったのでしょうか?」
「実はね……」
ネフライトの問いに、母親は苦笑したまま話を始めた。

 事の発端は2カ月前。偶然にもアレトゥーザに遊びに来ていた貴族の若様が森で道に迷った。その際、使用人の1人がこの村の人間たちに捜査協力を依頼した。ネフライトも幼馴染達と一緒にそうさにあたり、その甲斐もあって精霊たちに襲われそうになっていた処を助ける事に成功した。その際、その使用人が、ネフライトに惚れてしまったらしい。主である若様は使用人の様子から察し、今回の見合いを思いついた、と言うのだった。

「……そんな」
「でもね、『恋人』や『許婚』がいるならばあきらめる、と言っているの。
 ネフィ、誰か『恋人』がいるの?」
母親の言葉に、ネフライトは小さく首を横に振る。しかし、その使用人と見合いをするのは嫌だった。年齢は近いし、物腰は柔らかい。紳士的だし、顔も悪くはない。しかし、ネフライトは彼にときめかなかった。
(……でも)
好きな人はいる。しかし、彼が自分をどう思っているかは解らない。けれど……彼以外に結ばれたくはない。
(我儘と言われてもいい。僕は……っ)
一つうなづくと、ネフライトは母に自分の要望を伝えた。それに母は小さく微笑む。
「やっぱりね、ネフィ。でも、此処からが本番だからね。あとは母さんに任せて」

 その夜。村長に呼び出されたエルフの男は彼女の言葉に顔をほころばせた。
「いいのですか? 私の息子で……。
 確かにネフライトの事を想っているようですが……」
「娘が、貴方の息子であるアンバーに想いを寄せている、と打ち明けてくれたの。
 アンバーがあの子に惚れているのは前から知っていたし……。ここはいっその
 こと、2人を許婚にして仲を発展させてみようかしら?」
「! それは面白そうですねっ。 互いに想い合っているならば……」
そう言い合い、互いに顔を見合わせる。
「「フフフフフフ………」」
そして意味深な笑みで握手をするのだった。

 翌日。ネフライトは沐浴をすませると母親から呼び出される。部屋に入ると、そこにはアンバーとその父親がいた。挨拶もそこそこに、村長たる母親は、ネフライトとアンバーにこう言った。
「貴方達は、今日から『許婚』よ。
 昨日の夜、トパーズと話し合って決めたわ」
その言葉に、アンバーの目が丸くなる。隣にいたネフライトは、驚きながらも小さく微笑んだ。心から好きな人の元に嫁げる、と。

―けれど……アンバーは、僕の事……好きなのかな。

アンバーが全く同じ事を想っているとも知らず、ネフライトは考えた。

(終)
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
後書き

ネフライトとアンバーの二人についてだったり。フーレイです。
両思いでありながら素直になれず、こんなふうになりました。
普通じゃ横暴だと思われても仕方がないのですけれども、村人たちはみな、2人の不器用な関係を知っていたので寧ろグッジョブ、村長!だそうです。

そしてアレになる訳で。
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by jin-109-mineyuki | 2010-02-09 23:21 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)