ある野良魔導士の書斎

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探偵は足で頑張るものだよ (ヒスイ、寒空の下がんばる)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:62
ヒスイ、聞き込みに勤しむ

 街はクリスマスイブということもあり、賑わっていた。すれ違う子供たちはクリスマスソングを歌い、親子連れは笑顔で教会に向かっていた。そんな姿を見送りつつ、ヒスイは聞き込みに精を出していた。
(依頼を受けたなら完遂しませんと)
それが他の先輩冒険者たちから学んだ事だった。確かに…レーテを救えなかった事は今でも胸の中でしこりとなっているが……。
(……)
首を横に振り、顔を上げると子供達が遊んでいた。その1人が不審そうにヒスイを見る。
「なんだ、お前。目障りな奴だな」
「目障りで申し訳ありませんね。序ですけど少しお伺いしたい事が」
と、ヒスイはその子供にシトラスとオレンジについて聞いた。が、その少年は知らなかった。堪え終わるとさっさと失せろ、と少年にあっかんべー、をされてしまった。
(まぁ、子供は元気が一番ですけど、可愛げがありませんね)
気を取り直し、木の葉が舞い散る中聞き込みをしていくとシトラスは白樺通りに住んでいる美人な女性。性格もよく、学生時代は男女ともに好かれていた、ということが分かった。白樺通りではシトラスの幼馴染という青年、タンジェリンにも会い、彼からは自分が街に戻ったのは内緒だ、と言われてしまった。が、オレンジという人物については情報が得られなかった。

(しかし、オレンジ・ザボンか。……妙に引っかかるな)
ヒスイが首を傾げていると1人の男と目があった。その男に一礼すると、早速聞いてみる。
「すみません、少しよろしいですか?」
「……?ええ、いいですよ」
男は小さく微笑み、ヒスイの問いに答えてくれた。シトラスについては知らなかったが、オレンジの名を出すと、彼は少し眉間にしわを寄せ、瞳を軽く閉ざした。
「オレンジ・ザボンさん…ですか。恐らくですが、偽名でしょうね」
「えっ?! 偽名……といいますと?」
「長年、探偵をしていると勘が閃くものでしてね。
 そして、貴方もそう思っているのではないですか?」
彼はくすっ、とヒスイに笑いかける。ヒスイはその言葉にきょとん、としてしまった。そんな顔を見、探偵が苦笑する。
「いえいえ、冗談ですよ…申し訳ありません」
とぽりぽり頬をかき、言葉を続ける。
「実は過去にですが貴方の依頼人とは違う方から依頼を受け、その人を探した事があるのです。役場で名前を隅々まで調べましたが、同じ名前はありませんでした」
そう言って、小さくため息をつく。なるほど、とヒスイが納得していると、その引っかかりが溶けたのに、胸の奥で妙な予感がした。
「過去に探偵である貴方が調べても見つからず、今回も見つからない。
 その名の人はいるのに記録にはない…故に偽名の存在……」
「私は、そう推理します。……手伝いたいのは山々ですが、今別の仕事がありまして」
と、探偵は苦笑するも、ヒスイは首を横に振った。
「いえ、その気持が嬉しいことです。ありがとうございました」
ヒスイは一礼し、タンジェリンから教えてもらった方へと歩いて行った。そこに依頼人の家がある筈だから……。

 「……えっ?!」
 「……シトラスは…」
依頼人の家。そこで、ヒスイは丁度買い物から帰ったシトラスの母と出会った。そして、彼女から聞かされたのは……シトラスの死であった。
「玄関先と言うのもなんですから」
と、母親はヒスイを中に入れ、紅茶を勧めてくれた。彼女の話によるとシトラスは二週間前に病で亡くなったという。
「肺の病でした。……一カ月前まで元気な笑顔を見せていたのに、三週間前酷い吐血をしまして……」
「……肺結核……ですね」
ヒスイの言葉に母親は頷いた。彼女は小さく笑い、泣くまいと気丈に振舞っていた。
「聖夜には好きな人と過ごすから、と笑っていたのですが……そのような依頼を冒険者に依頼していたとは。私の前では心配させないように振舞っていながらも、死期を感じていたのですね」
「……辛い話をさせてしまい、申し訳ありません」
ヒスイが深く頭を下げると母親は首を横に振り、優しい頬笑みを向ける。しかし、その綺麗な目には光るものがあった。
「覚悟は、できていましたから。それに…何時までもうつむいてはいられません。前を向かなくては…。こんな時こそ、笑わって過ごさなければならないのですね」
そんな姿にヒスイの胸も熱くなった。どうにか、この依頼を完遂したい、そんな思いが強かった。ふと、外を見ると……そんな思いとは裏腹なのか、酷く寒そうな色をしていた。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書
 諸事情により一部変更させて頂きました。そんなフーレイです。聞き込みシーンをちまちまとリプレイにするとなんかまどろっこしいんじゃなかろうか、と想いこんな形に。重要な所だけを抜き出してみました。あと、何言なくリプレイで登場したNPCの名前を出しました。レーテの事は若干引きずったみたいで、いずれ他の方面でも影響します。

 それで、なのですけどこのシナをプレイした方ならばエンディングを知って居るでしょうが、あえていいます。天空版では別のエンディングを用意しております。作者さん、すみません。

それではまた明日。
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by jin-109-mineyuki | 2009-12-28 14:46 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)