ある野良魔導士の書斎

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大変遅くなりましたが (スズキ、ランティスとこうして出会う)

「…でね。この間ソウキュウに故郷から手紙が来た訳で…」
「何でまた」
「どうやらお兄さんが噂を聞いたらしくてな」
「あー、そうだよなぁ。Lv10の冒険者ってそうそういねぇもんな」
時間は昼時。穏やかな空気の中、一羽の猛禽類とエルフのようなヒトのような青年が楽しげに話している。初めてみる人は驚いて振り返るも、ここいらの住人たちは微笑ましくその光景を見つめている。
「ねぇランティス。俺達ってさ、知り合ってどれぐらい経つんだっけ?」
不意に鳥がとう。と、ランティスと呼ばれた青年は小さく苦笑した。
「えーっと、ざっと…2年ぐらい?」
「確か俺がパーティを組んだ頃…いや、リューンに来た頃だっけか?」
鳥は彼の肩に止まると首をかしげ、瞳を細める。そんな様子に、エルフっぽい青年はやさしく頭をなでてやる。
「確かお前……迷子になってなかったかい、スズキ?」
そう言いながら、彼は澄んだ青空に目をやった。ちょうどあの日、スズキと呼んだこの鳥が自分の前に落ちてきたんだ、と。

カードワースプライベートSS
『1羽と1人』(著:天空 仁)

聖暦1372年 12月 25日。
「……寒いなぁ、おぃ」
そんな事を呟きながらランティスは所属する宿【万魔殿の休憩所】を出て行った。聖夜祭だというのに彼は護衛の依頼を押しつけられていた。まぁ、馬車で半時で行ける距離である。夜には戻ってこれるだろう。そう思いながら依頼人の処へとぼちぼち歩いて行った。
……そこまではいい。何時も通りだ。
ランティスが依頼人の居場所を尋ねると、初老とおもしき女性が彼を待っていた。が、その表情はどこかさみしげである。
「えーっと、貴方が依頼人のレミエラさんですか?」
彼の問いに、老婦人は首を横に振り小さな声でこう言った。
「申し訳ありません、冒険者様。依頼の件なのですが一週間後、また来ていただけませんでしょうか?お嬢様は体調を崩されまして、今日は出かける事ができません」
その言葉に、ランティスの思考回路が一瞬止まった。

「ったく……一週間後に先送りかよ」
ランティスは貰った袋を手で弄びながら1人ごちた。これだけでも200spはあるだろうか。だが、素直に喜べなかった。確かに寒いから、と珍しいチョコレートの飲み物をくれたのは嬉しい誤算ではある。が、彼の目当てであった依頼人は一度も顔を出さず、乳母だと名乗った女性も会わせてくれなかった。その事を考えると木枯らしが吹雪のような冷たさに感じ、思いっきりくしゃみをした。空しく木の葉が足元で踊り、街路樹が騒ぎ、ランティスは妙にむっ、とした。空を見上げればどんよりとした灰色。だから思わずため息を混じりに思う。
(こんなに寒いんだったら雪でも降りやがれッ!)
と、その刹那。

―ゴウッ!!

と、おもいっきり強い風が後ろから吹いてくる。それに身を縮めていると…

―ボフッ!!

っと、いきなり何かの塊がランティスの後頭部に激突した。
「ってーなぁ、おい!!」
そう叫びながら振り返ると……なんかあったかそうな塊がころがっていた。微妙に茶色い。あと、もふもふしていた。というより…息はあるけどくらくらしてそうな鳥だった。
「おいおい、どこかのペットかぁ?」
痛む頭をさすりながら鳥を見てみる。どうやら気絶しているだけのようだが……微妙に何かが違った。全体的に見て猛禽類だとおもうが、鷹でも鷲でもない様な気がする。とりあえずやや小型かなぁ、という印象は見受けられた。
(…ん?)
ランティスは何気なく足をみた。ペットならば鎖が付いている、とおもったのである。が、この鳥の足には何も付いていなかった。しかし野生とも考えられなかった。
(いっそ売っちまうかな。羽根は上等だし、帽子の飾りにはなるかな…)
なんて考えていると……目を覚ましたのか、もぞもぞと鳥が動き出した。しかも
「ん……」
と声が漏れた。低めではあるが、女性の声である。
「はあっ?!」
思わず声を上げるランティス。それで完全に目を覚ましたのか、鳥はばさっ、と翼を広げた。そしてまじまじとランティスを見ると嘴を開き
「はあ? じゃないわよ。ったく、ぶつかった事は謝るけど、何いきなり人の足掴んでんのよ!!」
と、いっきに捲し立てた。怒っているのか、羽根が逆立っているようにも見える。いきなりしゃべりだした鳥に面食らうっていると、鳥はばさばさとランティスの前に近付いた。
「…あら? あらあらいいエルフのお兄さんじゃない。まぁ、それはともかく。鳥だからって足に輪があるとかみないほうがいいわよ。デリケートな部分もあるんだから」
ため息交じりに、鳥はいう。が、ランティスは表情を険しくした。それもその筈で本来、猛禽類の嘴から人の言葉が出るのは考えられないのである。
(誰かの使い魔か?)
使い魔ならば納得がいく。魔術で鳥を通して視覚・聴覚を共有しての捜索もできると聞いた事がある。
「申し訳ない事をした。…いま使い魔をつれてそっちへいく。場所はどこだ?」
ランティスが頭を押さえながらそう言うと、鳥がきっ、とランティスを睨む。
「使い魔じゃない。俺はスズキ!喋る猛禽類だ!!」
「いや、普通鳥は喋らないから」
と突っ込みながら鳥をにらみ返す。使い魔でないならば、魔族なんだろうか?鳥の姿を取る事が出来る魔族もいてもおかしくはない。この世界はなんでもありだ、とランティスは考えていた。とりあえず、鳥を抱え直して目を重ねる。
「ふぅ……。すまなかったな、スズキ…。俺はランティスという。【万魔殿の休憩所】に所属する冒険者だ」
「ご丁寧にどうも。俺はスズキで【礎の神話亭】に身を置いているんだ」
「冒険者になるつもりか?」
ランティスはそう問いかけておきながら…何かが違う気がした。彼女(多分雌だろう)は鳥……猛禽類であるがため、ここは冒険鳥と言った方が良かっただろうか?目の前の鳥はそうよ、という意味か1つ頷いた。
「鳥の身で冒険者って、大変じゃねぇか?」
第一に喋る鳥なんてめったにお目にかかれない。寒村とか聖北のお膝元にいったら命が危ないんじゃなかろうか、とすら思う。ああいった処の人間は頭が固い。しかし、スズキの表情は変わらない。
「んー、覚悟の上よ。故郷であった事に比べればそっちの方が楽でしょし」
そう言いながら、スズキは身を1度だけ震わせる。まぁ、冒険者になるという人間は壮絶な人生を送っている連中が多い。彼女もまたそうなのだろう。深い検索はしない事にし、「そうか」とだけ答え、もう一度鳥を見た。案外人懐っこそうな眼をしている気がした。

 数分後。2人の姿は先ほどの場所に近い【静寂の鏡亭】にあった。元々冒険者の宿ではあるが、その半分は居候という話だ。主であるカンバイ・アーシュレイが2人の姿を見ていらっしゃい、という。
「スズキ、どうせならうちで冒険者をすればよかったじゃないか。人手が欲しいんだよ」
「ごめんね、カンバイさん。俺、どうしてもどこまで仲間とやれるか試したくてさ」
どうやらここの主はスズキを知っているらしい。そしてランティスを見るなり「噂は聞いてるよ、色男」と人懐っこい笑みをこぼした。そしておごりだ、と言って暖かいスープとパンを用意してくれた。スズキの話によるとこのカンバイという男は昔からの知人であるという。ならばちょっと納得する。
「ま、これから冒険者していくから色々顔を合わせるとおもうのよね。よろしくたのむわ、ランティス」
片目を器用につぶり、スズキがいう。その言葉に苦笑しつつ、ランティスもまた小さく頷いた。そして杯を掲げて飲む。
(奇妙な奴ではあるけど、悪い奴じゃなさそうだ)
ちらり、と鳥を見る。器用に食事を取る彼女はとても楽しそうだった。こんな彼女はどんな冒険をするのかも気になったし、もしかしたら彼女と仕事で会うかもしれない。それはそれでおもしろそうだな、と彼は思った。

それが、1人と1羽の邂逅だった。

(終)
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後書き

漸く書き終わりましたぁ。どもー、どもー、フーレイです。ランティスさんのPLさん、大変遅くなりましたが、彼らしさが出ていたらいいのですがいかがでしょうか?

とりあえずこれが2人の出会いなのですが、この後にもいろいろごたごたしていくのでした。まぁ、スズキがあんなノリですので。

あとはネタが湧き次第ほかの方とのコラボとかできたらな、と思ってます。
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by jin-109-mineyuki | 2009-11-09 14:27 | 札世界図書館 | Comments(0)