ある野良魔導士の書斎

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因みに、61からは遠くへ? (水繰の剣亭、とりあえず一段落?)

冒険者の宿【水繰の剣亭】:60
何気なくの休日に

 奏でられるピアノに合わせて踊る、1組のカップル。それに黒髪の女性が厳しい指導を入れる。その様子を見ながら、1人…エトワールは頷いた。
(確かアンバーはソロのダンスコンテストで何度か優勝しているらしいのよね。本人は黙っていたけど)
彼女の手元にはアンバーの情報が書かれた書類。そして、その中に1つ気になる資料があった。それは……。

「はぁ……アンバーとネフライトはダンスの練習かぁ」
そう言いながらあくびをかみ殺すのはサードニクス。その隣ではクインベリルがトランペットの手入れをしている。更にはタイガーアイが本を読んでおり、2人に挟まれた状態の少年はちょっと気恥ずかしそうにしていた。
「レッドフロワーじゃないけどコンテストがあるそうよ。それでなの」
「昨日は衣装を見に行っていました。ネフライトさんのドレス姿、綺麗でしたよ?」
2人の言葉に、サードニクスはふぅん、と相槌を打ち……踊る2人を想像した。ネフライトは筋がいいのか、直ぐに基本をマスターした。まぁ、エトワールとバルディッシュの指導がよかったのかもしれないが。
「で、子供トリオ以外はどうしたんだ」
親父が不思議そうに言いながらちょっと退屈そうな3人に問いかけると、其々口にした。それをまとめると↓
・オニキスは自室で瞑想中
・ジャスパーは自分の師匠の手伝い
・パールは別宿の後輩冒険者の指導
・ヒスイはワディムさんの処へでかけて剣術の特訓
・コーラルは娘さんと図書館
・アメジストは先日依頼でいった教会の地下で本漁り

「まぁ、ばらばらだなぁ」
「それで僕らだけこうして退屈してるの」
サードニクスの言葉に親父は大いに苦笑した。クインベリルはトランペットをケースに入れると次はギターのチューニングを始めた。タイガーアイは本を読み終え、軽く伸びをする。
「そういえば、この間『六珠華・陰』で村の呪いについて調べてきたわよね」
「魚が食べられる、とヒスイとパールが何気なくはしゃいでたのを覚えてるわ」
「まさか濁流村も被害に遭っていたとはねぇ…」
3人はその時の事を思い出し、ため息をつく。フォーチュン=ベルから戻ったその日、一行は「村が呪われた」という話を聞き、その日のうちに清流村へと向かった。そして清流村の村長から「湖の対岸にある濁流村の人々が呪いをかけたに違いない」と言いだした。と、いうのもここ数日、何故か村の人々の眼が見えなくなる、という事件に見舞われているのだ。気になった一行は反対側の村でも話を聞き、調べていくうちに泉の祠へとたどり着いた。
「…あの大きい蛇には参ったよね」
「タイガーアイは毒をくらっちゃうし。聖なる葡萄酒がなかったら大変だったよ」
サードニクスとクインベリルが顔を見合わせる。タイガーアイもあれには参ったのか、苦い顔をしている。
「まぁ、どっちの村長さんも村を大切に思ってるのはわかります。けど、それを利用した邪水精は許せませんでした。倒せてよかったですっ」
そういい、彼女は小さく微笑む。親父はそうか、と相槌を打ちながら3人に温めたミルクとクッキーを差しだした。そろそろおやつの時間だ。
「まぁ、終わったあと魚料理が続いたんだ。あの時のアメジストの呆けた顔が笑えたなぁ。でも新鮮な魚は旨かったろ?」
「うんっ、とっても~。パールも大喜びだったよ」
その時の事を思い出し、笑顔になるサードニクス。
「あとねぇ、夏には遊びにおいでって湖伯様が言ってくれたの。だから今度は夏に行くの」
うきうきとした様子のクインベリル。
「アンバーさんたちにもお魚を味わってほしいです」
出そうになる涎を拭って、頬を赤くしつつ言うタイガーアイ。そんな3人の様子とこんな会話が、どことなく温かく思えた親父だった。

 一方、オニキスはというと……1人、なぜか闇の中にいた。その中を静かに1人歩いて行く。彼は、その闇を何度歩いていただろうか。
(精霊術師になって漸く会えた。貴女が敬いし精霊であり、私の愛しの≪白銀≫を魅了する存在。私にとっては……好敵手と言えるまでになりたいのですが)
そんな事を考え……小さく苦笑する。なぜなら、彼が喧嘩を売りたい相手は、強力な精霊だったりするのである。どこか安堵するような、まるで母親の腕に抱きしめられているような感覚がする、そのような黒い回廊を、ただ歩く。が、幾度も歩いているとその感覚も薄れてきた。いや……、ただその黒が己の精神を研ぐような気がしてきた。
(そろそろ、ですか)
顔を上げる。と、いつの間にか古めかしい祭壇に辿り着いていた。目の前にはたおやかに微笑む女性の姿があった。そう、彼女の後ろにある、蛇のような、蟲のような存在を伴った女性の像のような…。姿を確認すると、オニキスは眼鏡をただし跪く。
「…久しぶりですね、ダナ。『数多の名を持ちし多貌たる母』よ」
「人の生き様に染まった汝(ナレ)らしいな。オニキス、『刃金に惚れし螺旋率』」
ダナと呼ばれた女性はくすり、と笑ってオニキスを見つめる。彼女は目の前で顔を上げた天使を見つめ、どこか楽しげに口元を緩めた。
「吾(ワレ)は悠久を微睡む。時の経過を語るのは無意味な事ぞ」
「解っているのですが、つい……」
たおやかに語る女神に、彼は苦笑とも自嘲とも言える微笑をみせる。女神は変わらぬ笑みで眼前の存在に口を開いた。
「思い上がりとは思わぬか」
「?」
溢された言葉に、オニキスが首をかしげる。それを見、女神は再び言葉を紡ぐ。その表情に変化は無く、オニキスもまた変わらぬ表情で耳を傾ける。
「汝の想い人が歩む道は、別に敷かれた彼の者のぞ。来る時を待てぬというのは無粋というもの」
手を伸ばし、その白い頬に触れながらエメラルドのような瞳を細める。オニキスは恐れることなく瞳を重ね、表情を険しくした。
「放してください。彼女は私の婚約者です。きっと戻ってきます。この試練を乗り越えて」
そこで一端言葉を切り、一度呼吸を整え、再び口を開く。
「私は只管、彼女を見守ります。貴女の手にかかるような存在ではありません。私はそう信じています。そして…戻ってきたならば共に歩き続けます」
「……」
ダナが挑発するようにオニキスを見る。白い翼をゆっくりと広げ、真剣な表情で自分を見つめる男を。そして、他者に与えられた筈の試練に対し横やりを入れようとする存在を。
「あれは彼の娘のが選んだ道。彼の者が汝の介入を望むとでも思うてか。
吾が彼の娘に与えし『刃金の道』は、汝の道ではないというのに」
朗々と女神の声が響く。駄々をこねる子どもを諭す母親の言葉のように聞こえるのはオニキスの思い違いだろうか。しかし、天使は表情を変えず、女神を見つめ続ける。
「それでも、手を尽くします。私には彼女しかいないのです」
オニキスの眼に、迷いはなかった。ダナはまたクスクスと笑う。それはまるで夢の中の出来事を話す子供の話を聞いた母のように。そして、ゆっくりと瞳を開いた。
「足掻くがいい、螺旋律のオニキス。
 吾は刃金の守護者故、道を切り開かんと進み、奮起する者を愛す」
其処までいい、僅かに「だが……」と言いかけて言葉を止めた。暖かな空間の中、目の前にいる存在だけが氷のような冷たさを僅かに放つ。明らかな『意思』を読み取り、そっと目を細めた。
「彼の娘もまた、切り開かんと足掻く者ぞ。
 吾はただ其処にある。そして、与え、奪うのみ」
「わかっていますよ、ダナ。慈悲深くも残酷な原初の女神…」
そういい、オニキスは僅かに睨みを利かせ、女神はただ微笑む。柔らかな微睡みの中で不協和音を響かせる男の『意志』に、古の女神は何もかもを包み込む眼差しで、静かに答えていた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
清流と濁流(DIV)
微睡む刃金 OP体験版(Y2つ)
↑伏線のきっかけでもあります(ぇ

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
えと、フーレイです。
実を言うと、アンバーはダンスコンテストで何度か優勝していたり。で、その事をひけらかさないものだから今までだまっておりまして。うん。

いや、丁度いいシナリオなんてなかったし(暴露)。

序にオニキスの伏線配置。
ダナ様と何気に認識のあったオニキスですが、『刃金の精霊術師』にはなりません(彼は水と風がメインなのです)。会話にも出た婚約者がそうなんです。絶賛「ダナ様の試練」中ではありますが。一応、フラグ回収できればいいんだけれども、ねー;
一応プレイはしてますがその内容かすってません。すみません。
というか、当初の設定から変更です。婚約者…。

あと、「清流と濁流」は最初「こ、公害問題か?!」とも思ったんですけど違ったんですねぇ。と、言う訳で次回はアメジストのSS。霜の精霊であるセルゲイじっちゃんとカロンじっちゃんとのお話でもあるし、何気なくレナータ出してます。

あと設定上ヒスイがワディムさんの元へ行っただけなのでシナリオはやっておりません。後日ちょいとやろうかと思ってますー。彼にはこのままワディムさんの技を磨いてもらおかと。








(2011年 2月 追記)

ダナ様関連に関して
 ちょいと気になる所があり、『微睡む刃金 OP体験版』の作者であるY2つさんに
アドバイス・添削してもらった上で加筆・修正をしております。

 ダナという刃金の精霊様は冗談抜きで描写し辛い存在です。でも、その分やり甲
斐はあります。
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-24 20:48 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)