ある野良魔導士の書斎

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偶然とはいえそれはねぇ、とおもいたかった (クインベリル、呆然となる)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:59
薬作りと海賊と冬の回想

 どことなく薬草やら葡萄酒の匂いがする。6人の冒険者と真剣な表情の老婆は鍋を覗きこんでいた。
「いいかのぅ? 何事も集中じゃ。注意力散漫じゃ、いいものはできんぞ」
「はっ、はい!」
老婆の言葉に、少年は頷く。棒を持っているのは普段【六珠】で活動しているサードニクスだ。ここはフォーチュン=ベル。その『象牙の杯』で【六珠華・陰】のメンバーは主であるセラヴィの手ほどきを受けつつ特殊なものを作っているのだ。アメジストは霜の精霊のカロンを肩に乗せて珍しい薬品に見入っている。
「ん、そろそろじゃねぇか?」
アメジストに言われ、サードニクスは手を止める。そしてセラヴィに頷いた。彼女は鍋を覗き込み、しばらくしてポツリ。
「どうやら『治癒の軟膏』は……成功したようだね」
そう言って、彼女は薬を小瓶に詰め、それをサードニクスの掌に乗せた。僅かに微笑んでみせると、少年もまた嬉しそうに頷く。
「しかしこの子は筋がいいね。『聖別された葡萄酒』も質のいいものを作った。気が向いたらまた作りにくるといい」
「よかったね、サードニクス」
タイガーアイはそういい、サードニクスの頭をなでるが少年は頬を真っ赤にしている。それに笑っていると、パールが何かに気付いたようだ。
「そういえばさ。何気にお前…日焼けしたなぁ。まぁ、商船の護衛で戦ったりしたもんな」
「皆焼けましたよ。クインベリルはすぐに元に戻りましたが」
ヒスイがそう言いながら腕をさする。まだひりひりしているらしい。それを見、セラヴィが苦笑する。
「後で日焼けに効く軟膏も分けようかね。結構焼けているみたいだから」
「そうなのよっ!海賊と戦ったからもあるけど」
クインベリルはそう言いながら手にしたギターをちょっと鳴らす。彼女の歌は船乗りたちを楽しませ、海賊への不安を和らげる事が出来たのだ。女性を船に乗せる事を躊躇った船乗りたちが彼女の歌とタイガーアイの舞いで全員陥落したのはここだけの話である。
「3日も出なかったんだ。俺としてはこのまま出ないでほしかったんだけどな。面倒なんだよ」
溜息まじりに呟くアメジスト。彼はそう言いながら黒いダイスを掌で転がすが、それを見てサードニクスが表情を険しくした。
「あの、アメジストさん。海賊との戦闘中に誤爆しましたよね…それ。敵味方巻きこんで全員に毒は結構きつかったんですから…」
「しょうがないよ、ダイスで出ちゃったんだもの。商人さんはそれに気付いていないみたいだけどね……、あの褒めようじゃ」
タイガーアイはそういうと肩を竦める。まぁ、それだけ腕を買ってもらえたのだろう。彼はまたアメジストたちに護衛をしてもらいたい、と言っていた事を思い出すとその複雑さも少しはぬぐえるものである。
「でもよ。あんな旨い飯が食える宿に泊めてもらったお陰で海賊の頭も倒せたんだと思うぜ~。ま、3倍の速度で来れても普通の海賊ってとこかなー」
「……パール。船について『けっ、赤じゃねーのかよ!』って言ったのは覚えています。3倍だから赤いというわけじゃないんです」
すかさずヒスイが言い……その戦いの事を思い出していた。

「俺が蒼き疾風のジャドだ。先日は子分たちをずいぶん可愛がってくれたじゃねぇか。その礼をさせてもらうぜ」
ジャド、と名乗った男に対し、前に出たのはパールだ。彼はゲイボルグを一回転させるとぴたっ、と彼の首筋に当てた。
「俺の名はパール。こっからはゲイボルグで語らせてもらうぜっ!!」
その瞬間、ジャドの剣が槍を跳ね上げ、双方もう一度ぶつかり合うとはじきあってはなれる。ジャドの表情は輝き、唇がつりあがった。
「くぅぅぅっ!本ッ当に面白そうな奴らだぜ!
 気合が入る…うおおおっ、行くぜ、野郎ども!!」
「ぐおおおおおおっ!」
「……えっ??」
海賊たちの声に、クインベリルがあらかじめ召喚していた熊が吠え、ジャドへと襲いかかる。それが、戦いの一撃となった。彼の怪訝そうな顔が、とても理解できた。

―何故船に熊?!

「結局、あの戦いで一番輝いていたのは熊さんでしたわ。まさかジャドを倒してしまうなんて……」
「でも、先に頭を潰せたから短い間に幹部が倒せたんだと思う」
クインベリルがうっとりするが、アメジストはなんだかなぁ、という気分でいっぱいだった。彼女があらかじめ召喚していたとはいえ……。
「もしかして、『笛吹きの歌』かい?そこのお嬢ちゃんは運が良かったと見える」
「でも…あのジャドさん…ちょっとかわいそうだったかなぁ。パールと戦いたかったみたいだし…」
サードニクスがそういい、ちょっとだけ苦笑した。

「っと、まぁ親父さんのお使いも終わった事だし宿に帰るとするか」
パールの言葉に一同が頷く。『象牙の杯』に別れを告げ、リューンへと歩き出す。その途中、ヒスイは1人の女の子とすれ違った。その薄茶色の瞳に、儚げな影に、柔らかな甘い香りにふと、足を止めてしまう。
(……今のは?)
振り返り、その女の子を探す。と、彼女はすぐに見つかった。けれどヒスイの記憶にある女の子とは全く違ったのか…彼は首を横に振る。
「んー?どうした、ヒスイ」
「何か落としました?」
アメジストとタイガーアイに問われ、ヒスイは苦笑する。そしてなんでもない、と言うと再び歩き始めた。けれど脳裏には、ある女の子の事がよぎっていた。
(そういえば、あの女の子…とても可愛かったですね。また、会えたらなぁ…なんて)
そう言いながら、去年の冬を思い浮かべる。ロマンチックな光り輝く聖夜に、彼はある詐欺師を追っていた。その途中にぶつかった女の子だ。
(名前はわからないけれど、縁があればまた会えるかもしれません)
そんな事を思いながら、ヒスイは小さく口元をほころばせた。

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
希望の都 フォーチュン・ベル(Djinn)

今回参考にしたシナリオ(敬称略)
Serenade(にいかわ)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
 どもフーレイでーす。……えーっとフォーチュン・ベルですけど『商船護衛』中にマジで起こりました、ダイスの誤爆。青いダイスではなく黒いダイスにチェンジしてみましたけど…えらい事になりました。全体に毒っすかー(涙)。青誤爆では大ダメージだったんですけどねー(別パーティでしたら確実に敵味方双方に大ダメージが)。

 そして今年の冬にリプレイ予定のSrenadeのプロローグも載せてしまいました。ヒスイ1人でリプレイです。これは今年のクリスマスかクリスマスイブに掲載できたらいいなぁ、と思っています。これに合わせて
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by jin-109-mineyuki | 2009-10-19 19:37 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)