ある野良魔導士の書斎

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プロローグですよ、奥さん (スズキ、何気に乱入)


冒険者の宿【静寂の鏡亭】:前哨の前哨 【序】
ある冒険者の宿の夕方。

―聖歴1373年・8月初旬。

 冒険者という職業は、ある意味努力次第だ。まぁ、どの職業もそうなのだが。夢を燃料にあれやこれやと人々の為に依頼をこなす冒険者の姿は滑稽でもあり、美しくもある。その数多の困難を乗り越えて、一掴みの冒険者だけが成功する……と、思われている。

 リューン。冒険者の宿が密集する地区が点在し、交易都市として賑わう町の、その一角。冒険者の宿の1つ【静寂の鏡亭】はその日もにぎわっていた。所属する冒険者は決して多くはない。有名な冒険者は出ているか、と言えば誰もが首をかしげる。
(いっそ下宿にしちまおうか)
なんて、宿の親父であるカンバイ・アーシュレイが思うほどだった。魔導士と学者がここを下宿代わりに使っており、その前には行き倒れの若者を拾って家族にしている。それを考えるとそんな事も考えたくなるのだった。

 カンバイ・アーシュレイ。ハーフエルフの男で、30年前には『銀の賢者』という二つ名で有名な魔導士だった。が、それも昔の話。冒険者を引退し、妻の実家である冒険者の宿【静寂の鏡亭】を継ぎ(多くの人々が軍使や研究員として欲したが丁重にお断りした)、妻との間には1人娘、アカネ・アーシュレイが生まれている。彼女はこの宿の看板冒険者だ。
(……ん?)
カンバイが顔を上げると1羽の猛禽類がエルフっぽい男と一緒にカウンターへやってきた。鷹のような、隼のような猛禽類は雌で、名はスズキ。近所にある冒険者の宿【礎の神話亭】に所属するパーティ『スズキ組』のリーダーだ。一方、カウンターの端に陣取ったのはランティス。ここからやや離れた冒険者の宿【万魔殿の休憩所】に所属する冒険者だ。
「なんだ、お前たちか。それぞれの宿で飲んだらどうなんだ?」
カンバイが苦笑しながら1羽と1人に問うとランティスがぽつりとつぶやく。
「ん。ちょっとこいつに誘われて。それにしても……この間ごっそり引退したんだって?」
「ああ。結構有名になったかなぁ、とおもったんだがな。なんでも故郷のお袋さんが死んじまったそうでな。実家を継ぐとか。それでパーティ解散して…他の連中は他の宿にいったり旅立ったり」
カンバイの言う通りで、今登録している冒険者は自分の娘であるアカネともう一人……子供に読み書きを教えつつ冒険者をしているラシュという同種の男だけであった。
「でも、最近下宿してる子がいるじゃないか。天使族の女の子で…そう、ユズハ。俺んとこのリーガルトの従姉妹ちゃん、冒険者にならないの?それにハーフエルフの学者さんも」
スズキが不思議そうに首をかしげていると、カンバイがにやり。
「まぁ、興味は持っている。あと覚悟とか人が集まれば冒険者をやるかも知れん。それに……あいつが率先して面倒を見ているあいつも…」
そう言っていると、一瞬、冷たい風が吹いた……気がした。2人の背後に、1人の若者が立っていたのである。そこまでは、ごく普通のことだ。が、ランティスは言葉を見失う。
「…………おい」
たっぷりと30秒は間を置き、漸く小さな声で呟く。彼はハッキリ言って戸惑った。性別で迷うのだ。肌は透き通るように白く、腰まである髪は夜明けの空を思わせるような淡い紫色。瞳は磨かれたアメジストがそこに2つはまっているようだ。目、耳、鼻、口、輪郭、体形。そのどれもが『完璧に作られた』ように美しい。人間の域を超えた、美しさを固めたような存在だった。彼が今までに出会ったどの女性よりも美しい。
「……? いらっ…しゃい、…ま、せ…」
不思議そうな顔をした青年(ランティスは声で判別した)は一度だけまたたきをし、軽く頭を下げた。そして、水をランティスとスズキの前に置く。
「彼はシオンよ。シオン・アーシュレイ」
スズキがいった。シオンと呼ばれた青年は真顔でカウンターへ入るとカンバイが作った料理を言われた席へ運んでいく。
「へぇ……。それにしても、人間じゃねぇみたいだ」
ランティスの言葉にカンバイの表情が僅かに険しくなり…すぐに元に戻った。が、彼とスズキはそれに気づいた。そして目を合わせこの話題を口にしまい、と誓う。
「シオン。この二人のオーダーを頼む」
「はい」
カンバイの声に、シオンは頷き、料理を置くなり1羽と1人のもとにやってきた。一つに纏められた髪がはね、天使の輪がキラリと光る。そして、思わず見とれた男がエールを零してしまった。
「あー、またか」
「シオンが来てからああなのよねぇ。男の子って知らないで告白する奴はおろか襲う奴もいるし?」
カンバイが呆れていると、赤毛の女性がため息をついて頷いた。アカネは持っていたモップで床を拭く。それに気づいたのか、シオンがカンバイを見た。
「……親父さん、エー…ルを…注が、なく……て、いい、のか?」
「俺が行く。お前が注ぐとまた零しそうだ」
「ちがいねぇな」
ランティスが笑いを堪えながら頷く。それにシオンがきょとんとしているように見え、彼とスズキは顔を見合せて小さく微笑んだ。
(まるで子供みたいだな)
そう思っていると、シオンがランティスを見つめていた。注文を取りたいらしい。ランティスは適当に頼む、と言うとシオンは頷いてそのままカンバイに伝える。と、カンバイはことん、と葡萄酒の瓶とグラスを置くのだった。スズキには菜っ葉が出される。新鮮なそれをついばんでいるとシオンがスズキの頭をなでた。
「スズキ、…彼、も冒険者……か?」
「ええ、そうよ。ここいらでは有名な先輩冒険者よ。この間依頼の帰りも助けてもらったの」
シオンの問いに鳥は答える。そしてもったいつけるように毛づくろいをし、シオンを見上げた。相変わらず、彼は人形のように表情に乏しい。が、初めて会ったときに比べれば変わるようになった。そんな事を思っているとシオンの滑らかな唇が動く。
「冒険者……か……」
その小さな呟きを、カンバイは聞き逃さなかった。

(続く)

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はい、フーレイです。
ついにスタート?した【静寂の鏡亭】リプレイ。今回はとあるメッセ仲間さんのPCであるランティスさんをゲストにシオン登場を。他のメンバーは次の前哨の前哨【破】・【急】で出しますので。

何気なくシオンの美人さんアピール。 どーでしょ?

前哨の前哨は【序】・【破】・【急】の3つですけど深い意味はないので気にしないでください。
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by jin-109-mineyuki | 2009-08-09 21:08 | 冒険者の宿【静寂の鏡亭】 | Comments(0)