ある野良魔導士の書斎

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いや、多分僕だけだと思うけどね (バム、どこからどう突っ込もうと悩む:汗)



 結界が壊れたのを感じ、一行はミントが走るその後を追った。そしてたどり着いたのは、2番目に結界を壊した場所であった。
「この奥……物凄く嫌な気配がする」
そういい、ミントは己を抱きしめる。バムもまた眉間にしわを寄せた。
「そうだな、ただならぬ気配を感じる」
「この先にいるのは暗黒魔術師…委員会の暗殺者しか、考えられないな」
ジンジャーがいつになく真剣に呟き、全員が気合の入った顔になる。
「皆、準備はいい?」
「もちろん」
マルパッチョの問いに、カモミールが頷く。一行はその先へと踏み出した…のだが、そこでまっていた人物に、思わずカモミールは笑顔になる。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:7(著:天空 仁)

「……?」
「どうした、カモミール」
待っていた人物は首をかしげる。ハッカが問いかけるとカモミールは
「えっ、だってこのひとぐっさ」
「大変残念なことに、有名なコメディアンではないのだよ。私の名前はフィータスです。お見知りおきを」
笑顔でいうカモミールに対し、彼は冷静に首を横に振る。そして小さくため息をついた。
「ちょっと待ちわびていましたね。いつになったらくるんだろうって。どうでしたか?私が用意した結界は」
「……単調ね。どうせなら毎回違う敵をご用意なさいな」
彼の言葉にベイジルはきっぱりといいきる。彼の表情が聊か険しくなったように思えた。彼からしてみれば、そう言われるとは思っていなかったらしい。
「あなたが暗黒魔術師なのね」
ミントが問いかける。愛らしい顔に若干の嫌悪が滲んでいるのが仲間たちにはありありと分かった。フィータスは苦笑する。
「暗黒?とんでもない。私たちは生と死を司る神に従うに過ぎないものです」
「それってバロン神、だろ?」
ハッカの問いに、彼はええ、と静かに頷く。バムはふん、と鼻を鳴らした。
「どう言いくるめても悪霊から力を得る魔術を使ってる事に違いは無いんじゃねぇか?」
「あなた方はすぐ我らの神を悪魔呼ばわりしますね。何を根拠に…正当化するのでしょう」
語りかけるように、ゆっくりとフィータスは言う。が、ハッカはその声色に表情を顰めた。どこか粘着質のあるようなそれが、嫌なのだ。
「まぁ、いいでしょう。愚民が力を失った神に縋り続ける理由など、関係ありませんから。おしゃべりはここまで。さあ、はじめましょうか?」
「……そうだな」
カモミールは一つ頷き、ゆっくりと己の獲物に手を伸ばす。
「俺も丁度……あんたの顔をぶっとばしくなってきたんだ」
こうして、戦闘が始まる!
「私の力を、存分に味わうといい……」
彼が力を試行したとたん、召還していた存在が消滅する。それに内心焦りながらもカモミールは刀を閃かせた。
「ふっとんでもらうっ!」
「GFの暗殺者にそのような技を…こざかしいっ!」
フィータスの手が動く。と、同時にカモミールは体制を崩し術によって束縛されてしまう。それは槍を手に襲い掛かったミントにも発動する。
「歪ませた正攻法でも、無理ってかあっ?」
ハッカが叫びながら剣を振るい、ベイジルがメスを閃かせる。マルパッチョとジンジャーもそれぞれ攻撃するが彼にはあまり効いていないらしい。
「くそ、GFの暗殺者てのはこんな出鱈目ばかりなのかよ……」
「それは私たちにもいえるけれどね」
ジンジャーのぼやきに、ベイジルが苦笑し答える。と、ふいに空気が変わった。
「バカいってんじゃないよ、あんたたち。ふぅ、やっと助けに入れたわ。結界をやぶるまで入ることが出来なかったのよ」
渋みのあるアルト。そして、凛としたまなざし。それに、全員の顔が明るくなる。
「ぷ、プネウマさんっ!」
「結界の件はたすかったわよ。それにしても、苦戦しているようね」
ハッカが笑いかけるとプネウマは苦笑する。一方、男もまたやんわりと笑った。
「これはこれは先輩じゃないですか!これで探す手間が省けましたよ」
「見ない顔ね。それにしてもまだ暗黒魔術の使い方が甘いわ。暗殺は……荷が重いんじゃないの?」
そのはきはきとした物言いが、頼もしく思える。一行が見つめる中、フィータスは小さく苦笑した。
「それはこれから味合わせてあげますよ、先輩。吟味してください」
戦闘が再開する。ハッカがアスカロンに力を込めるも、フィータスの結界の所為か、身動きが取れなくなる。これで動けるのは4人となってしまった。
(こういうときの治療法……ないのよね)
ベイジルは焦燥を顔に出さないよう刃を閃かせ、マルパッチョも同時に攻撃する。一方拙いと思ったジンジャーは一か八か血清薬というバーサークさせる薬を飲み干し、雄叫びをあげる。
「……実に下品だ、愚民が」
フィータスの呟きが聞こえるか否かは定かではないが、ジンジャーの瞳には彼しか写っていない。ぐるるる、と唸りながら襲い掛かり、それを彼は音もなく避ける。が、ベイジルのメスやバムの攻撃は避けきれず、思わずひるんだ。そこへジンジャーとマルパッチョ、バムが次々に攻撃をしかけ、ベイジルは彼の視界から逃れた。
(精神状態だけでも…っ)
と、彼女はブーケ『タッジーマッジー』を取り出した。これは精神を落ち着かせる効果を持ち、これで恐慌状態になっていた3人を落ち着かせることが出来た。
「たああっ!」
「ぐおおおおおっ!」
マルパッチョの鋭い蹴りとジンジャーの拳、そしてバムの一撃でいつの間にかフィータスはふらふらになっている。ベイジルはふふ、と笑った。
「よくも私たちの仲間にこすいまねしてくれたわね」
同時に閃くメスの連続攻撃。それにフィータスは目を見開き、束縛されていたカモミール達はようやく動くことが出来た。
「くっ、くそ……。こんな馬鹿な?!こんな所で私が滅びるなんて……あってたまるか!」
その言葉に、ジンジャーが黙って鋭い蹴りを一発浴びせる。起き上がれず、フィータスは喘いだ。
「た、立てない。立つことができないだと…?バロン様…ああ、バロン様…っ!」
その気持ち悪い様子に背を向けると、プネウマがため息混じりに佇んでいた。
「ああ、プネウマさん!生きてたんですね!」
「カーターはどうしたんだ?ちょっと気になるが…」
カモミールとバムの言葉に小さく微笑むプネウマ。彼女は安心して、というように…二人にチョップをかました。
「「いでっ?!」」
「せかすんじゃない。カーターは無事よ。南の洞窟に隠れているわ。
 騎士団が入ってきたから隠れていたのよね」
「そういえば、騎士団の連中から町長殺しの容疑をかけられたんだけど……」
ミントの言葉にプネウマはため息をつく。
「GFの委員会が手を回した、とみて間違い無いわね。十中八九」
「じゃあ、どうすんだ?騎士団に目をつけられちゃ……ルーラルに戻るのもままならねぇぜ?」
バムが肩をすくめると、彼女はもう一度ため息をついた。辺りの空気がやや冷たくなったの
は気の所為ではない。
「そうね。GFの追っ手がやってくる以上この街にはいられないわね。脱出しましょう」
「そうっすねぇー」
彼女の言葉にカモミールたちは頷き、南の洞窟へと急いだ。

(続く)
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by jin-109-mineyuki | 2009-07-29 15:13 | 札世界図書館 | Comments(0)