ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

危険があぶない (ハッカ、時には真面目に活躍したい)


「……なんか、見られている気がする」
クリウス商会へ走る途中、ジンジャーが思わず呟くもののその首根っこを引っつかんでハッカが走る。疾風のように駆け込んできた6人に、従業人は額に汗を浮かべたが、ハッカたちの言葉を聞き更に青ざめた。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:3(著:天空 仁)

「ちょっ、その……急にそんなことを言われましても…。それに、クリウス様は間が悪い事に外出中ですしですし……」
極度に緊張したのか、微妙に言葉がおかしい。何時帰ってくるのか分からないといわれ、ベイジルは思わず口元をほころばせる。……いや、青ざめる従業員の顔に反応しているらしい。
「…ベイジル、落ち着いてくれ。それと悠長な事言っている場合じゃないんだ!何処に行ったのか教えてくれ!」
そんな彼女を揺さぶりつつも器用にハッカが言う。その形相に怖気づいたのか、従業員の声が微妙に上ずった。
「そ、それがクリウス様は盗賊ギルドに出かけているのです」
「たしか、財団員が居たわよね。だったら話が早いわ。……いきましょ」
ベイジルの言葉に一同頷き、おなじみの盗賊ギルドへと走っていった。この後、この従業員が腰を抜かしたというのは知らないままそこへと駆け込むと、一見優男風のクリウス商会会長が一人の男と話している。
(言っちゃ悪いけど、浮いてるなぁ……ドルイズさん)
カモミールはふと、そう思ってしまった。思わず目があった盗賊風の男にはなーんか弱そうと言いたそうな目を向けられているので余計になんだかなぁ、という気分だ。
「ああ、皆さん。どうもお久しぶりです」
気づいたのか、ドルイズがほえほえとした笑顔を6人に向ける。微妙に脱力しそうなのを堪えていると、盗賊風の男が口を開いた。
「ドルイズさん、知り合いで?」
「ああ、そうだ。ルーラルの一件で助けてくれた【カモミール小隊】のみなさんだよ」
ドルイズに紹介され、カモミールたちは一礼する。と、盗賊風の男はへぇ、と目を丸くする。
「こいつらが化け物機械をぶっこわした連中か?……たいしたもんだぜ」
「いや、それほどでもないよ」
先ほどのことを思い出し、カモミールが苦笑する。
「ああ、自己紹介がまだだったな。俺はバンバーダっていうんだ。よろしくな。まぁ、ここいらでは俺を『バム』って呼ぶから、そう呼んでくれ」
そういってにっかりと笑うバムに、一同も笑顔を返す。なんだが、気が合いそうだ。根は悪くないらしい。ドルイズ曰く、クリウス財団のトレジャーハンターで、カーターの友人らしい。
 とりあえず、カモミールは今朝起こった出来事を簡単にまとめ、ドルイズに話す。それにバムはあからさまに表情を渋らせた。
「早速GFの暗黒魔術師がおいでなすったか」
「やっぱり、大変なことになってしまいましたねぇ」
ドルイズもまた、ずれた眼鏡を正して頷く。そして、GFについてバムと話していた、とため息混じりに呟いた。カモミールもまた、先ほど襲い掛かってきた存在のことを思い出す。
「ああ、あのあんちゃんもGF暗殺者の幹部だっていっていました」
「なんか、とんでもない魔法をかけられて、情けないことに手も足もでなくて。まったく歯が立たなかった…」
ジンジャーが苦々しい表情でいう。彼も暗殺の技を持つが、何も対抗できなかった、というのが悔しいのだ。バムもそれには表情を険しくする。
「ゲッ、幹部クラスが来たのか?!厄介な事になりやがったな。で……その男の名前はなんてえんだ?」
「カシアス=ベイスよ。赤い髪の……ね」
ベイジルが憮然とした顔でいい、瞬間、二人の顔が若干こわばる。不思議に思ったミントは首を傾げるが、バムは目をしばたかせる。
「ど、どうしたの?」
「あのカシアスか!! お前ら、よく生き残ってるなぁ!」
「私も、噂には聞いていたわ。内心、嘗められたた気分よ」
「いや、その…バムさんとベイジル…その人知ってるのか?」
ジンジャーが二人に問うが、ベイジルは例のごとくふふ、と笑うだけである。カモミールは小さく苦笑した。
「ジンジャー、彼女に聞くのは無駄だ。俺も上層部も知らない情報網があるのはたしかだろうが…」
「正直、ベイジルが知っているのは驚きだが。カシアス=ベイスってたら裏社会じゃ知らない者はいないぜ。噂じゃ騎士団の一個師団を一瞬にして崩壊させたってぐらい凄腕の暗黒魔術師らしいしな」
その言葉に、ベイジルとジンジャー以外の全員が絶句する。
「一個師団…それも案外嘘じゃないかもね」
ベイジルが冷静に呟き、バムはあくまでも噂だが高位の暗黒魔術師なら…と付け加える。
「なんでも、奴が通り過ぎた後には傷一つ無い騎士どもの亡骸が山積みにされていたっていうぜ。ホント、お前ら運がいいな」
「そうかもしれない…な」
バムの言葉にジンジャーはため息混じりにうなづくが、その様子をハッカたちは若干ぴりぴりとした空気に身をこわばらせた。
「軍人暦もあるし、冒険者としても案外長いが……あいつらの会話が微妙に…」
ハッカの言葉にうんうんとうなづくミントとマルパッチョ。
「GFが雇っている暗黒魔術師についてはプネウマから色々聞いています」
ドルイズが穏やかにいい、それにベイジルが肩をすくめる。
「私が思うに、私たちの力ではどうにもできそうにないような気がしますが。まぁ、無茶をしろというのなれば、しますが?」
その言葉にドルイズも表情を曇らせるが、カモミールたちはそれが上辺だけの言葉であると感じている。ベイジルの目は相変わらず楽しげだからだ。それに気づいているか分からないが、ドルイズは苦笑する。
「ええ、恐らく正面から戦っても勝てる相手ではないことは確かでしょう」
「でも、あきらめちゃダメだぜ?凡人があきらめちゃ取り柄なんてないだろ?」
バムの言葉に、全員が笑顔に戻る。
「はは、確かに言えてるな。でも、カシアスがやったように魔力で結界を張られたらどうしようも…」
ハッカがそういって首をひねった時、ばっ、とドルイズの手が彼の肩にかかる。そして、妙に輝いた瞳を向けていた。
「なっ?!」
「そ・こ・な・ん・で・す!!プネウマも言っていましたがその結界さえどうにかすれば勝てなくはない、と!」
「いや、近い!近いってドルイズさん!!」
(その前に軍人であるハッカさんが動けないって……)
微妙に輝いた顔のドルイズをとりあえず落ち着かせるハッカ。それをみつつもマルパッチョは若干身をこわばらせる。
「で、でも結界はどうやって破る?」
ハッカの素朴な疑問に、空気が凍る。カモミールたちは結界そのものを壊す力を持っていない。せいぜい魔法を無効化させるだけが精一杯だ。普通、魔術師の結界を破るにはそれ以上の術士が力を試行する必要がある。バムは魔法が使えない、といい首を横に振る。
「それに関しては前に彼女と同じ話をしました。曰く、暗黒魔術師の力の源泉を押さえるしかない…とのことで」
ドルイズはハッカから離れ、眼鏡をかけなおす。どういうこと、とマルパッチョが首をかしげると彼は一つ頷く。
「GFの雇った暗黒魔術師はそもそも『バロン神(BULON)』という悪霊の力を源泉としているらしいんですよ」
その言葉に、空気がどん、と冷え込んだ。
「BULON……悪魔の力、ね」
魔族であるベイジルがくすり、と笑う。この悪魔の力を押さえる事が何より重要になる、と彼はプネウマの言葉を思い出しながらそう言った。
「バロンって、聞いたことはある。たしか聖北でも立派に悪魔って認定されているよね」
マルパッチョの問いに頷くドルイズ。一行は表情を引き締めた。バムも悪魔と戦ったことはないらしく、厄介だなぁと呟く。
「と、いう訳でとりあえずこれを持って行ってください。プネウマの話どおりならば、役に立つ筈ですよ」
と、彼は一つのメダイを取り出しミントの首にかける。ミントもまた、そのメダイが聖なる力を持つのはありありと分かった。
「ありがとう、ドルイズさん」
「いえ。それと、バムも皆さんに同行しますよ」
その言葉に、全員はきょとん、となるが彼曰く他にも守ってくれる人がいるとのことだった。
「ま、よろしくたのむぜ」
「おう!」
バムの言葉に、ハッカは笑みをこぼし彼とハイタッチした。こうしてカモミール小隊はバムとともにあのルーラルへと向かうことになった。が、ここであることに気づくカモミール。
「……またヒゲだな」
「でもカーターの旦那にくらべりゃ普通だろよ」
バムは思わず突っ込んだ。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 えーと異世界からの侵略者(?)『カモミール小隊』では科学チックなシナリオのリプレイを今後もやっていきます。基本、シリアスでもギャグ交じりで!!
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2009-06-24 22:00 | 札世界図書館 | Comments(0)