ある野良魔導士の書斎

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銀雨リアイベ「ディスティニーサーガ」舞台裏 (フーレイ、連載ぶっちぎった)

―午前9時ごろ。

 咲乱の友達である忍びの末裔、雨月 寒凪(うげつ かんなぎ)は小さく欠伸をした。
下宿先の部屋でパソコンを開き、何気なくメッセンジャーのスイッチを入れる。

カン:咲、そっちはどう?
舞椿:ん、ぼちぼち。

 咲と呼んだのは『銀誓館学園』に通う能力者であり、自分の将来の主、水繰 咲乱だ。今、かれは能力者の使命としてMMO『デスティニーサーガ』をプレイしている。寒凪もまた、クラン『ウィザーズファン』のメンバーとしてこのイベントに参加していた。

 この『ディスティニーサーガ』は見た目、ごく普通のMMOである。しかし「完全招待制」かつ「厳格な情報統制」の為、その存在は世間に殆ど知られていなかった。そして、その正体というのが『参加者の魂を奪う呪いのオンラインゲーム』だった。判明したのは銀誓館の能力者が調査してくれたおかげだ。

 寒凪はこのゲームが始まってからすぐに招待された。そして友人のクランに入っていた。彼がこの真実を知ったのは友人からのメールだった。

―かんちゃん。 このゲームは…死神だ。

その数時間後、友人は倒れ昏睡状態。現在、友達である陣内 燕の家で保護され、眠っている。こういう事件に縁のある水繰家や陣内家、はては播磨家、紺野家でも調査が行われたものの銀誓館同様データセンターの位置はわからなかった。そして、21日のイベントでプレイヤーの大量虐殺を行う、というのが判明した。

故に、銀誓館同様、正々堂々とイベントに参加し、それを食い止めるため、寒凪たちも立ち上がったのだった。

カン:っと、お前はグラップラーか。俺はローグさ。
   お互いに、がんばろうぜ?
舞椿:おう。ってか…まさかと思うけどさっき入った『ウィザーズファン』
    って結構多くない?
カン:ははっ、まーね。こういう事件に絡む知り合い数人に頼んで援護
   してもらうようにしてるから。

寒凪は小さく笑い、画面を見つめる。そして、ひとつうなずいた。
何も銀誓館の能力者たちだけがこの真実を知っている訳じゃない、と。

(午前9時 27分ごろ更新)
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―10時半ごろ。 某所。

「真珠、今回の事件ってどう思います?」
「たちが悪いよ、クルトン君。僕たちの手にも負えないからさ」
そんな事を言い合ってパソコンに向かう青年と少年。1人は糸目なヨーロッパ系外国人。1人は小麦色の瞳をした小柄な少年。そして、部屋はあるマンションの一室。クルトンと呼ばれた青年はため息をつき、部屋の主を見た。
「……ローンさん、眠ったまんまですね」
ベッドでは、彼らとそんなに年齢が変わらないであろう青年が1人眠っている。顔色は多少悪い。そして、何より、どこか『何か』が抜けている感じがした。
「咲乱様曰く『魂狩りのための媒体だった』と。いったい何のために魂を集めていたんだろう」
真珠と呼ばれた少年が記憶をたどりつつ、ノートパソコンに届いたメールと見つめていた。

―神楽家当主 神楽 真珠殿

 水繰家次期当主 水繰 咲乱として貴方と友達であるクルトン・バッカニア殿に協力願いたきことがあり、電文を送らせてもらった。同時に、関係のあるMMO『ディスティニーサーガ』へのご案内を。

 既にその調査に乗り出していたクルトンは渡りに船とばかりに真珠を自分が入っているクラン『ウィザーズファン』へと誘った。そう、寒凪が所属しているクランだ。実を言うと、『ウィザーズファン』を立ち上げたプレイヤーはゲーム開始直後から何かきな臭い空気を感じており、クラスメイトであった寒凪や文通相手であったクルトンに協力を要請し、銀誓館とは別の方法で調査を行っていたのである。

「さて、どうなることでしょうか……」
とクルトンがモバイルを見つつ呟く。彼はそれから参戦しているのである。その顔はどこか真剣で、ゲームで遊んでいる風にはまるで見えない。
「まさかクルトンくんの弟も昏睡状態になってるなんてね。
 一刻も早くこの事件を解決したいよ……。でも、俺たちじゃ、だめなんだろうね」
真珠は何気なく呟き、電子メールを見つめる。彼が協力をしている相手、咲乱は巨大能力者組織『銀誓館学園』の一員だ。きっと彼の所属するそこが、事件を解決するのだろう。最近、『運命の糸』を見ることができるようになった彼はそう、感じていた。
「恋人さんは無事?」
「ええ。仕事が忙しくて、ゲームの存在すら知りませんよ」
「そういいながら昨日、一緒にお昼ご飯たべてたじゃないか~」
そんな会話をしつつ、真珠とクルトンもまた『ディスティニーサーガ』の野望を阻止せんと、頑張っていた。

※:クルトンはアーチャーの『浮』(ふう)、真珠はプリーストの『バロック』でプレイ中である。

(午前11時 23分ごろ更新)
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―正午の数分前。

カン:それにしてもさ、なかなか手ごわいものだね。
舞椿:そういえばねぇ。でも、やるっきゃないじゃん?
 浮:しかし舞椿さん。
   そちらの方……なんか噂が立っているんですけど…。
バロ:うん。クラン『銀誓館学園』って巨大な組織が出資しているプロ集団で、
    デスサガ潰しにかかってるって。
舞椿:イベントはつぶしにかかっているけど、ゲーム自体はまだ無理。
    お前らだから言うけどさ……絶対つぶさないとまずいと思うんだ。
カン:そのつもりさ。魂狩りなんて、させちゃならねぇ……。
 浮:でも、何のためにするんでしょうかねぇ…魂狩り。
カン:なんか呼び出すつもりなのかな?
バロ:魂を使って……鬼かな? 悪魔かな?
舞椿:どーだろ。俺は微妙でならん……。
 浮:そうですねぇ。そこの調査は今後『銀誓館学園』の能力者さんにお任せしましょう。
舞椿:ああ、がんばるよ。

 メッセンジャーでそんな会話をしつつ、咲乱はため息をついた。『デスティニーサーガ』の話題を聞いた時から何気なく嫌な予感はしていた。友達とこの話題を話していた時、考えていたことがある。

……もしかしたら、能力者の片りんのある人を引き付けて、洗脳か贄(にえ)に?

なんとなく、考えていた路線は間違いではなかった。その事に咲乱は小さくため息をつく。けれど、きっ、と画面を睨みつけ、小さな声でつぶやいた。
「どこに嫌がるんだ、黒幕さんよ。
 俺たち銀誓館が絶対に追い詰めて、この代償を払ってもらうかんな…っ!」

(午後1時 14分ごろ更新)
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―午後1時ごろ。

 部屋に戻ってくるなり、月華 陸は着替えながらパソコンを起動させた。今日は運悪く午前中は部活だった。が、今からでも間に合えば……。
「陸、帰るなりパソコンかい?お昼はどうするの?」
「後で取りに行く」
苦笑交じりの父親の声。それに焦りながら陸は答える。買い換えたばかりのパソコンはすぐに起動し、陸はすぐさま『ディスティニーサーガ』へログインした。同時に音声チャットもオンにする。
(クルトンの情報が正しかったら……それってまずいことじゃないか!)
魂を狩るゲーム、と聞いて陸の何かが激しく震えた。こんなゲーム、許しておけない。
「陸、待っていたよ」
聞こえてきた声は優しいアルト。空手の試合で知り合ったユイエ・シロトクロがにこやかに笑う。
「これでクラン『九蘭』は全員集合だね。……どうにかクラン『ウィザーズファン』と協力して
 いたおかげで全員生きているよ」
続いて、穏やかな男性の声が聞こえる。足立 明午は陸とあるHPで知り合ったメル友である。
「んじゃ、いくで!フルスロットルでいかんと……。
 クルトンちゃんや真珠ちゃんも頑張ってるんやし、寒凪ちゃんの話によると
 咲乱ちゃんも『銀誓館学園』っていうえらい大きなクランでやってるんやて」
元気のいい女の子の声がした。玖凰 晶はクラン『九蘭』を立ち上げた張本人であり、彼女率いる少数精鋭はなかなか強いとの評判だった。
「うん、がんばる。
 そして、魂狩りを阻止しなくちゃね!!」
陸の声に、全員がうなずいた。

※陸はナイトの『リク』、ユイエはノーブルの『燐』、晶はグラップラーの『トモ』、
  明午はローグの『ネヴミ』でプレイ中。

(午後4時36分ごろ更新)・・・誤って記事を消したので
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―午後2時半ごろ

 「あのでかすぎるクラン『銀誓館学園』……凄いよね」
ぽつり、とユイエが呟く。パソコンから離れ、ちょうど携帯を鳴らしていたのだ。その相手は音楽仲間のハロエリス・コウロギモリだった。運良くバイトの休みが取れた彼はネットカフェから参戦している。
「そうっスねぇ。しかも皆お金持ちっス。……噂で聞いたプロっスかねぇ」
ハロエリスは自分のキャラクター、ファイターの『アヌビス』の姿を見つめながら、ちょっとだけ苦笑する。彼の聞いた噂では『巨大なクラン「銀誓館学園」にはスポンサーがおり、沢山のプレイヤーを雇っている』と。一部のプレイヤーの間では「ルール違反だ」「排除対象でしょ?」という声もささやかれたが、一部のプレイヤー達……ほとんどが真実を知る者達……は彼らを信用している。
「咲乱にそこの所を聞いてみたんだけど……口ごもっちゃったんだよなぁ。
 言いづらいんだろーね」
「そうかもしれないっスね。もしかしたら能力者団体の1人としての参加かもしれないっスから」
二人でそう笑い合い、そして携帯を切る。ハロエリスは小さくため息をつくと再びパソコンに向かった。彼のキャラクターは『ウィザードファン』である。その一員として朝から参加しているが・・・・・・ローグとクルトンの弟、パセリア以外は倒れていない。
(……解決したいっス。クルトンさんの弟さんもローグさんも助けたいっス)

―午後3時 10分ごろ。
 ある青年を見、陣内 燕はため息をついた。巫女服のまま命を守る祈祷を続けてはいたが、効果は薄い。しかたなく、弟にすべてを任せ彼女もパソコンに戻った。プリーストの『スワロウテイル』はクラン『九蘭』に所属している唯一のプリースト。倒れるわけにはいかない。そう思いつつメッセを開くと、丁度同じクランの仲間が声をかけてくれていた。
「ああ、カディ先輩…」
「ん。ようやく陸ちゃんもきたし、頑張ってる」
カディと呼ばれたのは伴澤 カディナルト。大学生であり、本来ならば今頃実家のレストランで働いているはずだ。しかしここにいるという事は……
「元々休みの予定だったの。他の料理人さんと一緒に魚釣りだ。
 とにかく、残りをつぶさないと」
カディの文体は明るい。燕もうなづいた。が、表情はわずかに厳しい。
「……水繰家次期当主も大胆な事をしますわね。うまく伏せて協力を仰ぐなんて。
 ま、偶然でしたけれども?」
「相変わらずとげがきついね、燕」
燕はカディの言葉にそっぽをむく。と、言うのも水繰家とおなじ人間の『負の感情』の吹きだまりを制御する陣内家。ライバル的存在ともいえ、燕は次の当主に対し複雑な思いを持っていた。
「・・・今はそんな事を言っている場合ではありませんわ。 …まだ敵はいますのよ」
そういいながら、燕はパソコンを見つめた。

(午後5時 48分ごろ更新)
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―午後6時

 咲乱は『宵闇館』の食堂にいた。パソコンの電源を落とし、部屋に戻すと今度は厨房に立つ。
「さて、料理でも作るかなぁ」
そういいながら冷蔵庫に手をかけ……携帯電話がなる。不思議におもい、携帯を開くと何通かのメールが入っていた。そのすべてが「ディスティニーサーガ」に参加していた咲乱の友達だった。
「……お前らも、ファイナルクエスト……戦うつもりなんだな」
ひととおり目を通し、呟く。それが何を意味するのか、咲乱にはわかっていた。このファイナルクエストは1つのクランのみが参加可能だが・・・彼らには彼らの形で共に戦う、と言っているのだ。

―敗北は参加者全員の死を意味する。

だからだろうか。何故か体が熱くなる…。思いが伝わって、胸が熱くなった。
「ホント、ありがとう。俺も頑張るよ……」
咲乱はぎゅっ、と携帯を握りしめ、一人うなづいた。

 全てが終わり、寒凪は自室から出た。そして夕食を取る。それが終わるとクランでのチャットに参加する。後から咲乱や燕たちも参加することになっていた。音声チャットでカディナルトと話しつつ、時間を待っていた。
「ファイナルクエスト、ね」
「1つのクランしか参加できないのが口惜しい……。だが、まだ時間はある。私達でサポートできる分は、しないとな」
彼女の言葉に、寒凪はうなづきながら記憶をたどった。たしかカディナルトの言うとおりで1つのクランしか参加できない。という事は……『銀誓館学園』に頼るしかない。
(だったらサポートできる分は……サポートしよう。俺たちの分まで、頑張ってもらわないと……な!)
彼はいつの間にか、ぎゅっ、と拳を握っていた。
「丁度、いいクエストがある。それに誘ってみるよ」
そういいながら、カディナルトもまたパソコンのモニターを見つめた。

 クルトンと真珠は一緒にファミレスで食事をしながら今日のことを振り返る。ゲーム後、ローグを燕へ引き渡し、必死に頑張った。そのおかげでどうにか二人ともクラスチェンジできるようだ。それに安堵しつつも……表情を引き締める。
「……やるしかないよね」
「ええ。俺の弟と、ローグさんを助けるためです」
自分たちでできないならば、その援護をしよう。おそらくレベルアップをしなければならないだろうし……。せめてアイテムの提供ぐらいは、彼らにやってやりたかった。そう決意を固めていると、急に真珠の携帯が鳴る。相手は燕その人だった。
「ローグさんたちの容体は?」
「変化がありませんわ。……陣内家でどうにか守りますから、ご安心を」
そう言い、燕はこうも付け加える。
「こんな力を使うなんて、裏を知る者としては恥ですの。……重い裁きを受けさせなくてはなりませんわ」

 陸が食事をしに一階へ降りていると、丁度ユイエが遊びに来ていた。比較的近くに住んでいる彼女は時折陸の家に程近い心療内科に通っている(そこには明午も通っており2人はそこで知り合った)。
「えっ?ファイナルクエストに『銀誓館学園』がチャレンジするのか?」
「ああ。丁度そこのクランに友達がいてね。それで聞いたんだけど……。生存率0だろ?それで応援しようかとおもってさ」
ユイエはそう言いながら一つのフラッシュメモリーを陸に渡す。2人で2階へ上り、陸の自室にあるパソコンでデータを開く。と、それにはレアアイテムドロップモンスターの一覧だった。
「これ、どうしたのよ?」
「データ収集目的のクランから拝借したんだ。あいつらは真実を知らないけど、『銀誓館学園』を応援するとかで、俺含め何人かに託してる」
その言葉に、陸は小さくうなずく。魂を助けるために、彼らは戦うのだ。その為になら…できる限り、手助けしたかった。

 一方、明午は晶、ハロエリスとともに音声チャットをしていた。話題はもちろん『ファイナルクエスト』についてである。情報筋によると、それにクリアすれば魂は解放される……らしい。
「本当なんかな?」
「オレは信じるっス。これで向こうの野望がつぶれたらとっても嬉しいっス」
晶の言葉に、ハロエリスが頷くように答える。明午はふむ、と送られたデータを見ながら……考察を巡らせていた。
(向こうもルールを守らないと魂を刈り取る事が出来ない。と、いうことならばルールを乱してしまえばいい。だけど…方法が分からないな…)
数日前、寒凪にハッキングをお願いしたものの…徒労に終わっている。裏の手が使えない今、巨大クラン『銀誓館学園』に頼るしかない。それを悔しく思いながらも、明午は情報を探すのだった。
「でも、うち思ったんよ……。このゲーム、何の目的で魂をあつめとったんやろ?」
晶の呟きに、ハロエリスがぽつり。
「まさかと思うけど…悪魔か何かを呼び出すつもりっスかねぇ」
「……どうだろうなぁ」
明午は相槌をうちつつ、窓の外を見つめた。一体何人の人が眠っているんだろう。そして、その全員が助かるのは……。

 こうして、「ディスティニーサーガ」にかかわった若者たちは、其々複雑な思いを抱えながら夜を過ごした。だが、それは28日に行われる「ファイナルクエスト」への序章でしかなかった…。


(6月 22日 午前11時 43分ごろ更新:終わり)

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あとがき

ノリでPBMのPC出してみました。 うん、他の参加者も出したかったんだよ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-21 15:51 | 無限銀雨図書館