ある野良魔導士の書斎

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ファンの皆さんごめんなさい。 彼、はっちゃけさせてぇーっ!! (ベイジル、ちょいと苛々?)


 ……そうですか…。
 貴方がたが彼を殺した冒険者……なのですね?


その声はどこか現実的ではなく、けれど妙に透き通ったテノール。不意に、カモミールは口を開く。
「なぁ、今なんか声……しなかったか?」
「確かに聞こえた。姿は見えないが、生命反応が一つ多い」
クミンシードが頷く。他のメンバーも目だけで相手を探す。動いたら攻撃される可能性があるからだ。暫くすると、また響いてくる。

 まぁ、あのロラントはともかくとして。
 あのヘイトマシーンを倒してしまうとは……。
 大したものですね。正直、仲間として引き入れたいぐらいです。


風は吹かない。ベイジルが静かに問う。
「いるんでしょう……? ロラントの名を知っているのは……」
瞬間、最初からそこにいたかのように、紅い髪の人がいた。赤い瞳が特徴的な長髪の青年。一度見ただけでは性別が分かりづらいが、声からしてカモミールたちとさほど変わらない年齢だろう。彼は小さく微笑んだ。

カードワースシナリオ『眠れる狂気』(作:a-system)より
『俺らと奴と狂気の使者』:2 (著:天空 仁)

「ええ、居ましたよ。最初から……」
「! 何者だ」
ジンジャーが問うが、ベイジルが愚問よ、と小さく呟く。そしてため息混じりに言葉を続ける。
「GFの幹部かなにかかしら?」
青年は、ベイジルの言葉に対し慇懃な雰囲気で一礼した。それが様になっているので微妙に嫉妬しそうになるカモミール。
「ご明察。名乗り遅れましたが私はカシアスといいます。GFの第二委員会で幹部を務める者です」
「暗殺者……殺しに来たのか」
ジンジャーの表情が、『仕事』のそれに変化する。空気が冷たくなり、カシアスと名乗った青年はくすくすと笑う。
「いやいや、そうじゃありません。それに、命令が下されていたら即始末にかかりますから。いくらなんでも命令無しで無意味な殺害などしませんよ」
その言葉を聴き、今まで黙っていたハッカが顔を上げる。そして紅い瞳を合わせて口を開いた。その目はいつも以上に鋭い。
「そいじゃ……ディックがやった事も意味があるのか?」
「……それは、私の判断するところではありませんね」
彼は醒めた表情で肩をすくめる。微妙にぴりぴりとした空気の中、【カモミール小隊】のメンバーは息を呑んだ。暫くカシアスと6人は黙って互いを見ていたものの、その静寂を破ったのは客人だった。
「折角ですから、ついでにあなたたちの力を試させて頂きますよ」
そういうと、ぱちん、と指を鳴らす。微妙な魔力の変動に、ベイジルが眉を顰め…
「これは…!」
「?!」
一気に、眠気が襲い掛かってきた。音もなく、強力な…。
「な、なんか、意識が後頭部から一気に抜き出され……」
マルパッチょの言葉を最後に、全員が眠りに付く。その寝顔を愛でるように瞳を細め、カシアスは嘯く。

 どうです?
 私の能力《スリーピング・マッドネス》の感じは


「な、何よ……これ?!」
ミントが我に返ると、辺りは漆黒に染まっている。他のメンバーもその状況に若干驚きを隠せないでいる。ベイジルだけが最初から知っていたように平然としている。
「体感するのは初めてだけれども、やはり甘く見ていたようね…カシアス=ベイス」
「……何か来るぞ!」
腕を組むベイジルの傍らでハッカが身構える。目の前に現れたのは、機械人形のようなもの。それは一行に反応する。
「……カクニン。戦闘指数41パーセント以下ノセイメイエネルギーホソク。
 コレヨリ、破戒シマス」
瞬間、六人が動くよりも早く機械人形の手から光がほとばしり、その一撃でベイジルが倒れる。
「ベイジルッ!…!?」
カモミールたちも体が動かせなくなるものの、ジンジャーだけが《猫の業》で抜け出し戦闘態勢を整える。素早く氷の戦乙女を召還し、己も攻撃に踏み切ろうとする。
「くそっ、一撃でも……ッ!」
しかし、再び迸る青白い光に打たれ、全員が力尽きた。体が酷く軋む。しかし、それは僅かな間のことで、死に至るものではない……と全員がすぐに悟った。
「……洒落たことしてくれるじゃない」
ベイジルの皮肉に、カシアスがくすくす笑う。

 なかなかやりますね。
 更なる成長を期待していますよ…ふふっ。


「もう、どうしちゃったのよ!?もしもし? もしもーし? 生きてますかぁー!」
パプリカの声で我に返り、【カモミール小隊】は辺りを見渡す。そこに、カシアスは居ない。
「……いきなり眠ったから、何が起こったのかはらはらしたぞ。まぁ、6人とも一気にあの世行きってのは考えなかったけれどな」
クミンシードがため息混じりにいい、六人をみる。誰も健康状態に問題がない、と確認した上で
「カシアスの旦那だったら、とっくの昔に出て行ったよ」
と呟いた。
「…にげられちゃったねぇ」
マルパッチョが醒めたコンソメスープに口をつけながらいい、クミンシードは軽く瞳を閉ざした。
「約3時間前に姿を消したと思われる。俺も能力に多少やられたらしいが、大体そのぐらいだろう」
と、不機嫌そうな表情で珈琲を口にした。ベイジルは懐から医療で使われるメスを取り出し、くるくるともてあそび始めた。不機嫌になったとき、精神を沈めようと無意識にやる彼女の癖だ。
「もし、彼の言っていた事が事実だとすると……なかなか面白くなるわ」
「って暗殺者が来ているってことでしょ?」
ミントが声をあげ、彼女は言葉を続ける。
「早くカーターさんたちに教えないと。殺されてしまうかもね。私たちにしたってどうなるかわからないわ」
「……と・に・か・く!まずはクリウス商会にしらせなくちゃ!行こう!!」
いつもの調子のベイジルに思わず頭をかきむしりたくなるカモミールではあるが、とりあえずしめるところはしめるのだった。が、ふと……彼は恋人を見る。
「何?」
「いや、お前……なんでヤツの名前を知ってたんだよ?」
「ふふ、私の情報網でかじってたのよ」
ベイジルはそういうと、小さくあくびをする。そして、赤い瞳を細め僅かながら苛々したような声を漏らす。
「でも、正直彼の力を侮っていたわ。私としたことが……」

(続く)

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とりあえず、こんな感じで次にいきます。次回は次回でぐでぐで。
それでもいいならば、楽しみにしていただけると幸甚でございます。

 あと、NPCのカシアスさん登場。シリアス続きなのでこの人をはっちゃけさせたいのが本音だが、だめっぽそうです。ブルーラインズでの彼は痛々しい……(汗)。
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by jin-109-mineyuki | 2009-06-18 13:20 | 札世界図書館 | Comments(0)