ある野良魔導士の書斎

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いぇす、ふぉーりんらぶ! なダンスが見たい(アンバー、覚悟きめました?)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:55
教会と舞と一つの誘い

「あの時は本当にご迷惑をおかけしました」
そういっているのは一見か弱そうなお嬢様。しかし、彼女は大司教の一人でルノアール様である。そんな彼女が僧兵2人を伴って冒険者の宿である【水繰の剣亭】へとやって来たのは【珠華】が受けた依頼の事だ。マルタン議長に引っ張り回された件を詫びたい、とのことらしい。
「いや、俺達は俺達で案外楽しかったし……、1000spも貰っていいのか?」
肩に霜の妖精を乗せたアメジストが困惑気味に問う。と、ルノアールは赤い瞳を細めて頷いた。
「いやぁ、あの人には結構余罪もありましたし。こっちとしても申し訳ないんですよ~」
そう言いながら僧兵のシモンは苦笑する。そして傍らにいたモーランが懐から袋を出し、ネフライトに手渡した。
「どうかお納めくださ~い。まぁ、魔王討伐とはいえなくとも世の中の役には立っているんですからねぇ」
モーランはシモンやルノアールと顔を見合せて笑い、【珠華】のメンバーは小さく苦笑するやら素直に喜ぶやら反応した。
「……で、その大司教様がどうしてこんなところに?これぐらいなら使者を送れば済むこと……じゃないかな?」
コーラルが不思議に思って首をかしげていると、軽い音がしてドアが開いた。そこにいたのは金髪とペリドットを思わせる瞳の女の子。そして、長身痩躯で黒い髪のエルフ。
「こんにちは。アンバーはいる?今日はルノアール様の依頼で踊りを披露することになっているのよ」
「そうだったの?! 通りで最近依頼の張り紙を見ていないわけね」
「まぁ、その前にいろいろあったのもあるんですけれど」
トルマリンが驚く傍でヒスイが小さく苦笑する。その原因(?)とも言えるネフライトはというと少しだけ頬を赤くする。
「あっ、アレは……。僕のミスですから。本当にご心配おかけしました……」
そう言ってメンバーに頭を下げる彼女だが、アメジストは少し機嫌が悪そうに鼻を鳴らす。それをタイガーアイがまぁまぁ、と窘め……客人である2人が顔を見合せて苦笑する。
「っと、アンバーさんだったら呼んできます。今日は公園で舞の練習をしていると思うんで!」
「それだったら僕がいくよ。用事もあったし」
そう言ってネフライトは客人たちに一礼し、外へ出た。それを見送りつつルノアールは小さく微笑んだ。
「何かあったみたいですね」
「あったもなにも。1組のカップルが互いに素直になれたってだけさ」
面白くない、というような顔でアメジスト。それにトルマリンがひじ打ちを鳩尾に決め、狐族の男は体をくの字に曲げて悶絶する。
「…折角幸せそうにしていたのに思いっきり聖鎚で撲殺しようとして挙句のはてに自分が不利益をこうむってたんこぶ作ってたわよね……」
トルマリンがくすくす笑いながら、蹲るアメジストをつつく。その光景に苦笑しながらルノアールは出された紅茶を口にするのだった。

 ネフライトが公園へ行くと、そこには人だかりができていた。クインベリルが奏でるギターの音色に合わせ、アンバーが見事な舞を披露している。
(いつ見てもかっこいいなぁ。やっぱり村一番の踊り手だっただけはあるよ)
優雅に舞う姿に見とれていると、演奏が終わった。アンバーが優雅に一礼し、ネフライトににっこりと微笑みかける。手を伸ばし、軽く振るとそれに応えてくれた。
「見に来てくれたのか?ありがとな」
「相変わらず綺麗だね、アンバー。実は見に来たわけじゃなくて…ルノアール様とエトワールさんたちが迎えに来たんだよ。そろそろ準備しないと」
「あ、忘れてた……」
アンバーの表情が険しくなり、クインベリルは少し肩をすくめる。
「だから時間には注意してって言ったのに。早くしないといけませんね」
その言葉に頷き、3人は宿へと歩きだした。アンバーはそれとなくネフライトの隣に行き、ベールを取った。短く切られた黒髪が、僅かにはねている。
「アンバー、傷の具合はどう?」
「すぐに治療したから痛みもしない。それよりさ、ネフィは大丈夫なのか?」
「うん。もう調子はいいの。……貴方にも助けられたし…」
そう言い合い、僅かに見つめあって笑いあう。そんなことで少しだけ、鼓動が速くなった。
2人が言っているのはこの間受けた依頼の事だ。2人である依頼を受けたのだが張り込み中に雨に打たれたのが原因か、ネフライトが熱を出し倒れた。おまけに見張りに見つかって戦闘へ発展し、ボスが彼女へと放った魔法の矢をアンバーが庇った。
(もっと、気遣えばよかったな……)
その時の事を思い出し、アンバーの口内に苦いものを覚える。が、その後……自分の思いを曝け出せたから、本当の意味で深い仲になれたようにも思える。
「アンバー?」
不意に、ネフライトが声をかける。顔をあげたとたん、彼女と視線が合う。その瞬間がくすぐったくて、2人とも頬を赤くし……思わず笑いあう。そんな2人にクインベリルはどことなくにやにやと笑ってしまった。
「見せつけてくれるじゃない、ご両人さん♪」
そんな言葉に苦笑しているネフィであったが、アンバーはそれを聞いていなかったのか、少し何かを考えているようだった。無意識にあの時負った傷に手を置き、小さくぶつぶつと呟いている。
「どうしたの?」
不意にネフィが問いかけると、アンバーの瞳がどこか意味深な色になる。彼は小さく頷き、
「ネフィ。レッドフロアーで一緒に踊って欲しいんだけど……」
「えっ?!」

(続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
魔王迷討伐記(FooKe)
旅路の果てを夢見て(名も無き喪男)

今回ネタになったシナリオ(敬称略)
キミとステップを踏んで…(楓)

ようやくレッドフロワーネタが舞い降りました。56からはアンバーがネフライトと一緒にレッドフロワーを目指す話も混じります。依頼やりながらはきつそうですけど。で、前回優勝したのが『見えざる神の手亭』に所属するエトワールとバルディッシュの2人だった、という事になっています。で、アンバー。どうせならばと許嫁と踊る事を決意しましたよ!!
ってか、本当に急だなぁ、おい。
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by jin-109-mineyuki | 2009-05-23 09:21 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)