ある野良魔導士の書斎

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絆は終わらない (アンバーとオニキス、協力し合って)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:53
深き森の少女たちと深き淵の咎人たち (前)

『メロア、聞こえるか?』
夜に響く、アンバーの声。彼はオニキスが呼び出したネレイデスたちの力を借り、短時間ではあるが鱗を通じて会話ができるようになっていた。
『ええ、聞こえるわ』
程なくして、メロアの声が聞こえる。彼女はちょうど休憩をしていたようだ。
『とりあえず、まぁ……時々話しかけるよ。
 だから、もうあんなことは……しないでくれよ?』
アンバーの言葉に、メロアは小さくええ、と返す。暫くの間のあと、二人はわけもなく小さく笑い合った。
『アンバー…。なんでまた、こんなことが?』
『いや、この鱗に触っていたら歌が聞こえてさ。君のいる場所にちょっとでもつながりがあると思って。で、精霊使いのオニキスから力を借りて、話しているってわけ』
そういいながらオニキスをちらりと見る。と、ネレイデスたちがあたりを覆っている。オニキスはしょうがない、という顔でアンバーに笑いかけていた。

 一方、他のメンバーはというと別の部屋で食事をしていた。ここはペジテ。地図にない小さな村だ。遊びにやってきた一行を、アルマをはじめとする村の住人たちは喜んでくれた。猫耳亭ではアルマが腕によりを奮って沢山のごちそうを作ってくれていた。
「どんどん食べてね。まだあるんだから!」
「なら、どんどん食べないとね♪」
サードニクスは瞳をキラキラさせてラザニアに手をつける。こんがりと焼かれたそれが放つ優しい匂いに、少年は顔を綻ばせる。
「あー、ほらほら!口元ついてるよ」
ユーディが苦笑しながらサードニクスの口元をナプキンでぬぐってやり、少年は頬を赤くする。そんな様子にパールとジャスパーは顔を見合せてくすくす笑う。
「これでホムンクルスっていうのが不思議よねぇ」
「……っ!? 人間じゃないのか?!」
エルフの少女、ラティーシャの言葉にジャスパーは一つ頷いた。
「そうよ。サードニクスは…大きな声じゃ言えないけど、人工生命体だしアンバーだってハーフエルフよ。半分はあなたと同じなの」
「オニキスは天使で、俺は闇の眷属……つーか猫の獣人。で、クインベリルはヴァンパイアなんだ。人間はジャスパーだけさ」
パールが葡萄酒に口をして笑うと、ラティーシャは目を丸くした。その傍らでカッツェルも目をぱちくりさせていた。
「シパト族に似た水鳥族にあったことがある。彼らも君たちシパト族と似た姿をしていて、あと精霊術に秀でていた。今は数が少ないけど、いつか会えるといいよな」
「会いたい!おれ、仲間っぽいやつら、見たい!」
カッツェルもうれしそうにニコニコ。久し振りに和やかな空気の中ラティーシャはあたりを見渡した。オニキスとアンバーの姿がないのだ。
「あれ? 二人は?」
「ああ。実はラティーシャに会わせたい人がいるんだ。だから、その準備をしているんだって♪」
サードニクスがラティーシャにサラダを進めながらいう。
「会わせたい? 俺、会いたい!! どんなの?どんなの?」
「もちろんいいよ。数が多い方が彼女たちも喜ぶと思うの」
クインベリルの言葉に、二人は笑顔になった。

 依頼の帰り、突風で重傷を負ったクインベリル。そして、見かけたエルフの娘。追いかけた先にあった小さな村。まるでおとぎ話のようだが、【六珠】はこうしてペジテへやってきた。傷を負わせたのは風の精霊を伴ったラティーシャ。彼女は人間に深い恨みを持っており、知らずにペジテへ近づいていた彼らを追い返そうとして風を放ったという。
 翌日、アンバーたちは宿の主人であるアルマから魔物退治を依頼された。彼女は魔物を一人で倒そうとするラティーシャをすごく心配していた。目の前で繰り広げられた口論の様を見ればそれは一目瞭然だった。
 ラティーシャが人間を嫌っていたのは、ペジテを襲った12年前の事件が原因だった。元々ペジテの住人達は生粋の人間ではない。みんなエルフだったり獣人の血を引いていたりする。その事が原因か、心無い冒険者たちによってラティーシャを除く全てのエルフと半数以上の住人達が殺されたという。
「……無理もないわな」
それをアルマから聞き、静まり返った中から、パールの声がぽつり。彼は小さく咳払いをすると泣きそうになるクインベリルの頭をぽん、となでた。そして、一行は情報を集めたのち、ラティーシャとともに青い竜と……魔物を凶暴にしていた存在を打倒し、少しだけ邂逅したのだった。

食事が終わったころ、オニキスが姿を現す。彼はにっこり笑って他のメンバーやラティーシャ、カッツェルを連れてアンバーのいる部屋へ連れて行く。
「……そういえば……。あの時、お前は酷く悲しそうな顔をしていたな」
「あの時? ……ああ」
ラティーシャに言われ、オニキスは小さく苦笑する。そしてそっと頭をなでてやりながら瞳を細めた。
「少し、思い出したことがあっただけですよ」
「……」
オニキスの言葉に、ラティーシャは口を噤んだ。自分と同じように彼らも何かを失っている。あの時、ラティーシャを諭した彼の瞳には、確かに涙が浮かんでいた。
「…で、オニキス。準備はできてるの?というより……そんなことできるの?」
訝しげに問いかけるジャスパーにオニキスはにっこり笑いかける。ありありと浮かぶ自信に苦笑しつつパールとサードニクス、クインベリルと顔を見合せて笑った。
「今、アンバーが1人で精霊たちの力を借りています。私も早く戻らないと……」
「大丈夫! 私も歌で援護するわ!」
クインベリルはそういってギターを取り出し、一同は部屋に入る。と、そこには1人、手の鱗を押さえて念じるアンバーと、たゆたうように浮かぶ水の精霊たち。そして……青々としたベールに浮かぶ、2人の水棲族の姿であった。

(次回に続く)

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今回遊んだシナリオ(敬称略)
深き淵から(cobalt)
深き森の民(NINA)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

後書き
ども、フーレイです。
えーっと、ひっぱるねぇ、『深き淵から』ネタ。これはオリジナルで通信用に応用した精霊術で、実験中っぽいものです。まぁ、『天空版』故にだとおもって下さいませ。いや、やっていたらさぁ・・・・・・あの鱗で何かができそうだとおもいましてね。
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by jin-109-mineyuki | 2009-04-18 22:44 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)