ある野良魔導士の書斎

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とりあえず、後日ギーエルでまたやります (ニルギン、そつなく)


……雨が降っているような、音。
それで我に返ったのか、壁にもたれて座っていたセイレーンは閉ざしていた瞳を開いた。妙にぼやけた世界に僅かな青が揺らき……普段はまとめている髪を解き、眼鏡を外していることを思い出した。
(やはり、眼鏡がないと落ち着きませんね)
小さくため息をつきながら眼鏡をかける。漸くはっきりとした視界は妙にギアのように見え、僅かに口元が引き締まる。今、自分がいるのはコルドフリード艦隊・最終撃滅艦隊。そこで一人瞑想をしていたのだ。
「……結果は出ました。ならば、私は私の誓いを守り役目を果たすまでです」
彼は小さく呟くと、軽く体を伸ばした。

無限のファンタジア・プライベートテイル
『苦みの先の笑み -選ばれなかった選択肢を選んでも-』 (著:天空 仁)

 2時間前。ニルギン・シェイド(a55447)は霊査士であるエルフの女性、ユリシア・メルローズ(a90011)と向き合っていた。
「……」
ユリシアは綺麗な眉を僅かに顰めた。目の前にいるセイレーンの武道家は眼鏡を掛け直しながら手渡された資料を真面目に読み返している。
「これが、決戦を望んだ方々の意見ですね」
「ええ。……確かに、ドラゴンロード・スイートメロディアとの戦いは厳しいものになるでしょう。それでもこれだけの冒険者が決戦を望んだのです」
ユリシアの言葉に、ニルギンは小さくため息をついた。
 魔石のグリモアを目指していた同盟の冒険者たち。その前に立ちふさがったドラゴンロード・スイートメロディア。竪琴を核とする新たなるロードはコルドフリード艦隊から放たれた『最終撃滅砲』を受けても再生した。そこで撤退か、決戦かという選択を迫られたのである。そしてその結果はニルギンが読んでいる資料にある。ため息をつくニルギンを、ユリシアは黙って見つめる。
(納得は、している見たいですが……)
目の前の武道家が浮かべる表情に苦笑し、精神年齢が上がっても未熟さが残る彼に小さく微笑む。
「今回は緊急でしたし、しょうがないのかもしれません。それに、基本私たち同盟の冒険者は立ち向かう敵を排除に向かう傾向にありますから」
ずれた眼鏡を掛け直しながらそういい、資料をユリシアへと手渡す。が、彼の瞳はいつになく厳しいものだった。
「しかし、撤退を望んだ冒険者たちもまた仲間を思っていての事でしょう。そんなに気にすることではないとは」
ユリシアはそういいながら、資料を整える。霊査の腕輪が僅かに音をたて、揺れるさまを僅かに見つつため息をついて。視線をニルギンに戻すと、彼はまだ少ししゅん、としているように見えた。
「ユリシアさん。『最後の戦い』は覚えていますよね」
「ええ」
「あの時、私は戦うことを選びました。あの時は戦わないと、生き残れなかったからです」
ニルギンは鋭い目のまま口を開いた。彼はあの戦場であきらめた仲間たちに、そんなひまはない、と叫んでいる。その時の事を思い出して。
「でも、今回は違います。まだ、戦わなくても生き残れる。私はそう睨みました」
「どういう、意味ですか?」
「そのままの意味です。おそらく、あの様子だと……彼女は私たちを追撃しないような気がしたんです」
ニルギンはユリシアが不思議そうな顔をするのを見、やはり甘い考えかもしれませんが、と付け加えたうえでドラゴンロード・スイートメロディアが復活した時の事を思い出す。
「彼女は我々に攻撃せず、ただあの一撃を食らい…復活しました。彼女は、自分の再生威力を見せ付ける為だけに現れたような気がするのです。だから、この好機にいったん下がり、彼女の弱点を探る時間を作りたかったのです」

―私は、死にません。 それゆえのスイートメロディアです。

確かに、彼女はそう言った。ニルギンはその言葉のどこかに弱点や意味があるような気がした。
「しかし……多くの方は今こそ戦いの刻(とき)と睨んだようですね。私は臆病風に吹かれていたということでしょうか?」
若干自嘲の笑みを零し、眼鏡を正す。ユリシアはそれに首を横にふり資料を胸に抱いた。
「けれど、ニルギン様は戦うことができます。是までドラゴンウォリアーとしての責務をちゃんと果たしてきたではありませんか。一度ぐらい……そういう思いがよぎってもいいと思いますよ?」
そう言いながら、彼女はそっと微笑み……ニルギンに切実な目を向けた。
「私たち霊査士は悔しくても戦うことができません。ただ、貴方がたを信じる。それだけです」
「……わかっています、ユリシアさん」
ニルギンはそっと、僅かに苦笑した。そして一礼し、資料を読ませてもらったことに礼を述べた。

「ニルギンさん、どうしたなぁ~ん?」
不意に、優しい声がした。レイメイ・レーレン(a90306)がバスケットを手に歩いてくる。
「今回の決戦について、少し考えていたんです」
ニルギンはにこっ、と笑いながら答え、レイメイはニルギンの傍に駆け寄る。どうやら、お弁当を持ってきてくれたらしく、彼女はおいしそうな匂いのする包みを渡した。礼を述べ受け取ると、それはケバブサンドで、早速食べてみるとなかなかおいしい。
「これは怪獣の肉ですねぇ。下ごしらえがきっちりとされていて凄く美味しいです」
「よかったですなぁ~ん。なんか元気がでたみたいですなぁ~ん」
レイメイの言葉に、ニルギンがきょとん、とする。
「ニルギンさん、結果がでてからちょっと悲しそうな顔をしていましたなぁ~ん。ニルギンさんの気持ちは、わかりますなぁ~ん……」
レイメイはそういい、すこししゅん、となる。投票の日、彼女はニルギンの意見を聞いていてそれ故にどんな反応をするかなんとなく予感していた。
「すみません、レイメイさん。ご心配おかけしたようで……。でも、もう大丈夫ですから」
ニルギンの顔は、自然な笑顔でレイメイもそれに頷く。そして互いに笑いあっているとなぜだろうか、すこしだけ不安が薄れた。
(この笑顔のお陰で、私は逃げずに立ち向かえている気がしますよ)
にこっ、と笑う彼にレイメイはちょっとだけ首をかしげる。が、ニルギンは僅かに頬を赤くしてウインクし、思ったことは口にしなかった。そして、内心で呟く。

―この苦味を越えて、戦い抜こう。
  愛しい貴女を、仲間を、艦隊(ふね)を守るために。

彼の胸の中は、ずいぶんと楽になっていた。撤退を選んだ事に対し、少し自分が情けなかったとはじめは思ったが、今では後悔していない。
(やってやろうじゃありませんか。確かに撤退をすすめた私ではありますが、戦うときまったなら…)
しょげていた自分がすこし恥ずかしくなって、なんだかちょっとだけ泣けてきた。ニルギンは眼鏡をはずし、赤くなった頬を両手で押さえてため息をつく。そんな彼の青い瞳にうっすらと浮かんだ涙に、レイメイは少し苦笑した。
「ふふ、泣いちゃだめなぁ~んよ?」
そう言いながら手を伸ばし、指でそっと拭う。それに礼を述べるセイレーンは、やはり少しあどけなくて、ほんの少し、かわいく思えた。

(終)

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あとがき
ども、フーレイです。えと、今回の事に若干納得がPLとして行かなかったので気持ちの整理をつけるために文章に。ニルギンとレイメイさんでもうちょっとラブラブさせたかったなぁ。でも、あまりラブラブさせると戦前なんで自重しろと言われそうだな、と。でも、年上のレイメイさんに少しだけ甘えてみたニルギンでした。

で、今回は同盟の代表的なユリシア様を出してみました。どうでしょ?
一応ニルギンは「ユリシアさん」と呼んでいますが……。
やっぱり「ユリシア様」のほうがいいかなぁ。

とにもかくにも、今後がいろんな意味で気がかりですが、3月 1日はがんばります。
あれ?銀雨は……卒業式なんじゃ?!
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-28 18:07 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)