ある野良魔導士の書斎

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アニメ化希望・・・ (ジョーカー、奮闘!)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:49
決戦!ジョーカーVSトアメルの呪い!!

 サードニクスはというと、ジョーカーの治療で安定していた。そして、1人ため息を突く。何もできないことが悔しいが、今は信じることしかできない。そして、ジョーカーの口から漏れた『ホムンクルス』という言葉が、引っかかっていた。
「…何を、考えているのです?」
ジョーカーの言葉に、サードニクスはゆっくり顔を上げた。
「僕は…ホムンクルス…なの?」
「やはり知らなかったのですね」
ジョーカーは悲しげな目で彼を見つめた。彼が知る中で、人間型のホムンクルスはもう1人いる。紫色の、刃物のような空気を纏う個体だ。
「……僕は、人間じゃ…ないの?」
その問いかけに、静かに頷いたとたん、少年の表情はこわばっていた。
「……じゃあ、お、母さん…が…」
最初からいなかったんだ、という言葉は出されなかったが、ジョーカーには聞こえていた。静かに頷くことしかできない彼に、サードニクスは僅かに瞳を細めた。
「…なおさら、死にたく…ないな。天国…で、だれ、も待って、ないから」
少年にできるのは、そうやって無理に微笑むことだけだった。と、その時だった。聞き覚えのある声が響いたのは。
「ただいま!」

 ナナミが竜眼の宝珠をジョーカーに渡す。5人はごくり、と息を呑んでそれをみつめた。
「……これこそ、竜眼の宝珠ですね。魔力が強い」
そういい、彼は助手の名を呼んだ。ナナミは即座に頷き、準備に取り掛かる。
「対価を支払われた以上、患者の命は責任を持って救います。…我が真名にかけて!」
「……お願いします、ジョーカーさん」
アンバーはそういい、頭を下げる。オニキス、クインベリル、ジャスパーもまた、同じようにし、フライマンバも目礼する。そして、パールがいつになく真面目な顔でその背中に叫んだ。
「名に誓った以上、違えんなよ!!」

 「それでは、患者サードニクスの治療を開始します」
厳かにジョーカーの声が響く。サードニクスは静かに瞳を閉ざし、二人に全てを託した。アンバーたちが危険を犯してまで対価を払ったのだ。治療に耐えてまた一緒に旅をする。そうでなければ…自分は作り出された意味がない。
「霊脈バイパス、患部からの呪詛を他部へ影響させないよう遮断。
 六感麻酔」
「六感麻酔。遮断します」
ジョーカーは手早く治療を施し、ナナミもそれについていく。対価を持ってきたアンバーの瞳が脳裏を過ぎった。あの青年にとって、この子はとても大切なのだろう。それがひしひしと伝わってきた。腕にのこった醜い傷は、おそらくノスフェラトゥとの戦闘で負ったものだ、と推測した。
(治療が終わったら、あの若者の治療も施しましょう)
ただし、その治療費を受け取るつもりはなかった。
(そして、闇の眷属たる猫の男に吼えられてしまった。この子は絶対に、助けてみせます)
その決意を胸に、彼はナナミへと手をだす。
「アグラの短剣を」
「かしこまりました、ジョーカー様」
ナナミが頷き、短剣を手渡す。その重みが、いつもに比べやけに重い。それでも、彼は迷いなく切り開く。ポルターガイストにも臆せず、彼は瞳を険しくした。
「マテリアライザー」
彼の言葉に、ナナミが薬を手にし、
「マテリアライザー注入。呪詛の具現化、完了しました」
言葉を紡ぎながら投与する。同時に言葉が終わるか否かで呪詛が醜い塊として浮かび上がる。それにジョーカーは瞳を懐かしそうに細めた。耳障りな嗄れ声が、空間に放たれる。
「我は魔神トアメルの呪いなり…。我は契約に基づきサードニクスに苦痛に満ちた死を与えるために存在している…」
「私はジョーカー。魔医師ジョーカー。サードニクスの定めに無き死を拒むもの」
厳かに名乗るジョーカー。その響きはまるで教会の鐘のように重く、じわりとした真剣みを帯びている。しかし、呪詛はそれを肯定するはずも無い。
「否!誰であろうが関係ない!我は我の存在意義を果たすのみ!!邪魔する者は」
「アグラ・テトラ・グラムマトン」
その言葉を遮ってジョーカーは唱える。
「アグラ・テトラ・グラムマトン…」
「ぐわっ?! さ、最後まで言わせ」
「アグラ・テトラ・グラムマトン…」
問答無用で、呪文を突きつける。ナナミもまた呪文を繰り返し、それは徐々に呪詛を蝕んでいく。そう、この少年を蝕んだ己のように。
(あの瞳を裏切るわけにはいかない)
ジョーカーの脳裏には、アンバーたちの瞳が…そして嘗て治療した青年と、その仲間たちの瞳が脳裏を過ぎった。
(あの瞳は、裏切れない!)
二人の呪文が続き、呪詛が身もだえ、首元をかきむしる。そろそろ頃合だろう、と睨んだジョーカーはきっ、とそれをにらみつけた。
「我が真名において命ずる。汝、直ちにサードニクスの魂より離れ滅せよ!」

―!!

瞬間、それは霧散した。そして、ナナミは静かに告げる。
「呪詛が魂から完全に分離しました」
それにそうか、と頷こうとした時、わずかに大気が震える。
―ジョーカー、またしてもお前か!!
虚空からする野太い声に、彼はあたりまえのように頷いた。
「ええ。魔神トアメル、お久し振りですね」
―契約に基づき、術者の魂と共に引き換えに植えつけた呪詛を、
 よくも消し去ってくれたな。
「それが、私の仕事です」
こともなげに言い放つジョーカーに、トアメルは僅かにいきり立つ。
―我ら魔人の契約は絶対不可侵でなければならぬ。
 それを人の身で覆すなど……。
その言葉に、ジョーカーはくすりと笑う。
「……聖アントニウスの法力で肘を失ったときそれを治したのが誰であったか覚えていますか?あと、貴方に反抗的な下級の魔神に虚勢手術を施したのは?」
―……お前だ。
「それでは、わかっていただけますよね?」
その言葉に、トアメルはむぅ、と唸ってしまう…が、急に反応が途切れる。
「?」
―うあっ?!ぐぅ…!!…き、貴様、何故ここに?!
『貴様は聖北の僧を敵に回した。故に処刑する。それ以上でも、それ以下でもない』
聞き覚えのない、美しい声がした。その持ち主だろう彼が、トアメルへ攻撃を仕掛けたのは間違いがない。そして、何度も響く銃声に、ナナミ共々言葉を失う。
―……そんな……馬鹿、な…。
暫くして、トアメルの存在が消失した、のを二人は感じ取った。恐らく、二度と彼は出現できないだろう。そして、声は続く。
『そこにいるのはジョーカーか。…混沌たる医者よ、その首をいつの日か貰いうけよう。このホムンクルスの少年共々…』
「それが、あなたの存在意義…ですか」
その言葉に、青年は『そうだ』とだけ答え……空間に静寂が戻った。空気が変わったのがありありとわかる。
「ナナミ」
そっと、助手の名前を呼ぶ。と、彼女は申し訳ありません、と頭を下げる。
「…経路バイパス解除。念の為霊脈の洗浄もしておきなさい」
「畏まりました、ジョーカー様」
ナナミはいわれたとおり手早く処置を施す。そしてジョーカーは糸状のエクトプラズムで手術跡を縫合し、ようやく安堵の息を漏らした。
(こんなに緊張する手術も久方ぶりですね)
内心でそんなことを呟き、彼はそっと、ナナミに微笑んだ。
「ナナミ、ご苦労でした」
「ありがとうございます、ジョーカー様」
ナナミはいつものように一礼し、静かに瞳を閉ざした。

(続く)
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今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

すいません、あと一週引っ張ります。
つか、端折りました、時々いろいろと(汗)。そして登場謎の青年(声の出演)。
ま、いろんな意味で波乱だ。
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-14 23:59 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)