ある野良魔導士の書斎

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微妙に、なんかノリが…… (六珠、本気です)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:48
レッツ取立てという名の戦闘

 六珠が立ち寄った村は、とんでもない状況だった。村に入るなり、村人からにらみつけられ、抑揚のない声で
「でーてーけー」
「でーてーけー」
と、コールされてしまったからである。これには一同若干たじろぐ(オニキスとナナミ以外)。
「なーんーでー?」
パールが乗りで問いかける。
「よーそーもーのーにーいーうーひーつーよーうーせぇーはぁーなーいー」
村人の1人が言う。
「つか、その言い方はねぇだろう」
「そうじゃて」
アンバーと村長らしき男の言葉に一同静まる。
「まぁ、説明いただけますか?セオリーですし」
「ちょっとまて、その言葉は禁句だぞ、オニキス!!」
オニキスの言葉に思わずアンバーが突っ込むが、長老はその理由を話してくれた。
「…無関係なのですが」
「いや、この場合は放置プレイなんて惨いことできないのよ。命を1つ助けるも2つ助けるもドル箱いっぱいたすけるも同じじゃない?」
ジャスパーは笑顔で答え、クインベリルが頷く。
「私たちはジョーカーさんを信じているの。私たちが帰るまであの子は死なせないってね」
「理解に苦しみます」
ナナセがそういう傍らでアンバーは長老となにかを話している。
「…つまりは、ノスフェラトゥの農場にされている、と」
「ええ。今年は孫娘が生贄になる予定です…」
「よし、こっちは治療費滞納請求をある医者から受け持っているんだ。いっそやってみるか、ノスフェラトゥ退治」
アンバーの言葉に、一同が頷く。ナナミは理解できないまま、それに従うことにした。

 次の日、岩肌を登り洞窟へとたどりつき、ついでに門番っぽい狼を倒した。
「……邪魔したことをお恨みなさい」
オニキスがいつになく冷たく言い放ち、ナナミがため息を突く。
「目的を忘れていませんよね?」
「ああ!ノスフェラトゥをぶったおしてサードニクスと村の人々を助けるんだろ?」
輝かしい笑顔でアンバーが答え……ナナセがぽつり。
「摩り替わっています。治療費の取り立てです」
「でもアンバーったら倒すって約束しちゃっているし、合っているとおもうわ」
ジャスパーがのりのりで銀の剣を握り締める。
(本当は私もロード級のヴァンパイアなんだよね。ああいう同種の始末……久し振りだから腕が鳴るわ)
傍らではクインベリルが不敵な笑みを零し、パールもまた己の武器を手に目を輝かせている。
「そいじゃま、面を拝みに行きますか!」
「「おーっ!!」」
パールの言葉に、全員が手を上げる。仕方がないので、ナナミも付き合い程度に拳を上げたその時。
「煩い。人の眠りを妨げるな……」
と、青い衣を纏った男が姿を現した。そして、それに反応したのはナナミとクインベリルであった。
「お初にお目にかかります、ノスフェラトゥ。私は773号人工魂魄搭載型人造人間です」
「その顔は覚えているぞ。確か以前会った時は500番台だったか。そして……何故そこにあなた様が…」
ノスフェラトゥの表情を強張らせている。一同、思わずクインベリルを見る。彼女はにっこり微笑んで一礼する。
「覚えていていただけたなんて嬉しいですわ。
 クインベリル・ブレス・エアギアス、修行の為に冒険者をしております。現在はジョーカーさんの依頼を受け、あなたが払っていない治療費を取り立てに来たのです」
その言葉に、ノスフェラトゥは僅かに震え、素直に頷く。
「そういうことで未払いの治療費の代わり竜眼の宝珠を頂に参りました」
「そうか…」
ノスフェラトゥは素直にそれをナナミに手渡した。灰になったときに助けられたらしいが、そんなことはアンバーたちに関係がない。
「もう一つ用事がある。
 ……あの村を開放するためにも、散ってもらうぞ」
アンバーの言葉に、ナナミは眼を閉ざす。
「どうしても、戦うおつもりですね……。しかし、見捨てるのはジョーカー様の意思に反します」
彼女はそういい、瞳を開く。それに反応したのか、ジャスパーが彼女へと銀の剣を手渡し、ナナミもそれを受け取った。ノスフェラトゥは鋭い眼光で6人をにらみつける。
「お、愚かな…」
「それはあなたよ、名もなきノスフェラトゥ。罪なき人間を蹂躙するは同種であれど赦しがたき所業……。裁きを受けよ!」
クインベリルが叫び、一同が襲い掛かる。雷の矢が虚空を切り裂き、トランペットが響き渡る。槍が閃き、拳が唸る。
「くぅっ?!」
ノスフェラトゥは反応できず、それらの攻撃を食らいながらも襲い掛かったアンバーへと爪を立てる。鋭い爪に切られ、彼の腕に紅の化粧が施される。
「てめぇっ!」
アンバーがグレイブを振り上げるも、それを避けたノスフェラトゥはにやり、と笑う。
「死して我が下僕となれ!」
「!」
鋭い牙が肩へと吸い込まれる。が、顔面に丸いものがぶつかった。フライマンバがすかさず治癒を施し、隙をついて銀の煌きが突き刺さる。ノスフェラトゥの身を蝕む一撃が、音もなく。ナナミとジャスパーが握っている武器は、あの時サードニクスがくれたものだ。それまで歌を歌って援護していたクインベリルだったか、敵の弱り具合をみてそれを止め、腰に下げていた剣を抜く。
「久々に、儂も活躍できるかな」
「ええ。お願い、スライプラー……」
名を呼ばれた聖剣は久方ぶりの出番に身を震わせる。クインベリルはそれを手にひらり、とノスフェラトゥへ切りつける。聖なる力が悪影響を及ぼさないヴァンパイアは同族の非道を赦したくなかった。
「くっ、やはりエアギアスの血筋!穏健派リーダーの令嬢の力…」
「おしゃべりしている暇は、ありません!ナーデシア!!」
オニキスが叫び、風が巻き起こる。ナナミが攻撃している間にも風の乙女は傷ついたアンバーたちを治療し、勇気付けられたパールがぐっ、と踏み込む。
「そぉらっ!!」
ばっ、と紅が散る。パールお得意の『運命の歯車』が決まったのだ。愛撫するかのように血が流れ、激痛にノスフェラトゥは思わず悲鳴を上げる。
「きっ、貴様らぁああああっ!!」
「それ以上の苦しみを、あの子は受けているのよ!」
ジャスパーが叫び、銀の剣を振るう。そして、アンバーがもう一度グレイブで切りかかる!
「村の人に約束したんだ。あんたを殺すってね!」
その攻撃を避け、爪を振るってアンバーへと攻撃する。それを敢えて受け、パールが傷薬を施す。その間にもクインベリルが再び聖剣を切りつける。
「そして、未払いの治療費もちゃんと貰って、サードニクスを助ける!それが…」

―俺たちの、やること!!

その答えを叩きつけるかのように、オニキスの杖がノスフェラトゥへと突き刺さる。
「私は死なん…死を恐れぬ者…いつか蘇り…その報いを…」
その言葉を最後に、ノスフェラトゥは消え…ようとしたとき、銀が打ち込まれる。ジャスパーが投げた銀の剣が、灰を散らす。
「ちっ、完全にはいかなかったわね」
と舌打ち。しかしナナミはぽつり、と呟いた。
「……この結末は範囲外でした」
それに、一同はぽかん、とする。そのままナナミは言葉を続け、5人を見つめた。
「予測の範囲を超え、不可能を可能にする…それが人間なのですね」
「ま、種族で言えば人間はジャスパーしかいないけどね」
クインベリルは照れながらもそういい、一同が笑う。
「しかしな、オマエさん。心さえあれば、誰だって不可能を可能にするんじゃよ」
彼女の相棒たる剣が、そっと言う。そしてフライマンバもまた、優しく口を開いた。
「種族なんて関係ない。大切なのは…心意気とノリなのさ」
ナナミには、それがわからなかったが、何故だろう、その言葉が、不思議と温かく感じた。
(ジョーカー様……)

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
命の対価(理のQ)

後書き
オニキスとナナミのなるほど!【存在元素】!!
オニキス「それでは前回ドクター・ジョーカーが言っていた
     【存在元素】について皆さんと一緒にお勉強しましょう」
ナナミ「それでは、まず注意点を。
    この設定はあくまで『天空版カードワースSS』や天空 仁著の
    小説にて登場するものなので注意してください」
オニキス「では、【存在元素】についての説明を」
ナナミ「これは『存在』を形作るもので、自然界に存在するものには確かに
    あるものです。そして、人工生命体を製造する過程でなくてはなら
ないものでもあります」
オニキス「天空の設定では
     生物は基本『肉体・精神・魂』から構成されるとなっています。
     人工生命体の場合、その三つを結束させるために自然界に生きる
     存在からそれを得る…となっていますね」
ナナミ「そうなります。ですから、私もジョーカー様から作られた時施され
    ていることになるのです。天空版では」
オニキス「それがなくなるとどうなるのですか?」
ナナミ「【存在元素】が少なくなることで、その存在が【崩れ】はじめます。
    自然に生まれた生命体の場合死亡した時点で流出が開始され、腐敗
    へと繋がります。人工生命体の場合は肉体が魔力へと戻り、霧散す
    る原因となるので注意が必要です」
オニキス「今回、サードニクスは35%消滅、とカルテにありましたが…」
ナナミ「危なかった、とジョーカー様も言っていました。40%以上流出すると、
    自己回復ができなかったのです。これ以降は他のかかわりが深い生命体
    から分けてもらう必要がありました」
オニキス「本当に、ぎりぎりでしたね」
ナナミ「はい。
    それでは、今回はこれで。残りは機会があれば説明しましょう」
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by jin-109-mineyuki | 2009-02-07 15:14 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Trackback | Comments(0)
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