ある野良魔導士の書斎

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先週水曜日はすみません (フーレイ、早めのアップ)


 次々に襲いかかる無人の鬼械。コーラルやパールの生徒たちと教員たちは率先して鬼械を倒していく。しかし、人が乗り込んだ鬼械はなかなか倒せなかった。
「一体どこにいるのかしら、ディート殿下は」
ジェムフラウが呟いていると、狼の鬼械に乗った男が呟いた。
「お前は右を。ハクビには左を当たってもらっている。私はまっすぐ行ってみるよ」
「わかりました、ドクター・ランタノイド」
ドクター・ランタノイド……いや、ラジェルシードはくすり、と笑って頷いた。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
7:(どさくさ感がぬぐえない)契約っ!!

「おい、てめぇら!!堅気の衆に被害を出すなよ!サツと手を組んで避難誘導をきっちりやれ!」
「第一部隊は避難経路確保を。第二・第三部隊はアスワドと鬼械を止めて!そこ、防御が薄いよ!!」
パトスの怒号が響き、それにアスワドの科学者たちは気合のこもった返事をする。一方クルーエの指令に警察もきりっ、とした声で答え、両者は連携を取り合っていた。その傍ではギーエルが手に持ったバズーカーで鬼械を打ち取っている。しかし、数はかなり多く彼らだけでは抑えるのが精いっぱいだった。
「…こっちにオトメを少し回してくれると、助かるんだけどなぁ~ん」
ギーエルはぽつり、と小さく呟いていると……見覚えのある影が鬼械相手に大暴れしていた。『黒焔』のオトメであるフィクロルクが蛇腹剣をふるいつつ高笑いをしていた。
「はーっはっはっはっ!てめぇらごときにここを落とさせてたまるかってんだっ!ガルデローベのオトメたち!お前ら、パール1人にコーラル2人のチームで挑めよっ!」
彼女はどうやら幾人かのパール・コーラルを率いているらしい。それに、ギーエルの口元がわずかに緩んだ。

(……アスワドと警察が協力してくれているようだな)
周りの音から、スロウスはそう睨んだ。校庭の外から聞き覚えのある声が響き、それに顔をほころばせる。しかし、直ぐに表情が研ぎ澄まされたのは鬼械の攻撃が来たからである。
「ええいっ、邪魔だっ!!」
一瞬にして美力が膨れ上がり、ロッドが一閃!
―美力発動、スプラッシュクリムゾンッ!!
巻き起こった炎が狼の形をとり、次々に鬼械を破壊していく。しかし、その後から鬼械がわいてくる。いくら戦歴の猛者とはいえ僅かに疲労を覚えるスロウスだった。
(他の教師たちも生徒たちと一緒にこいつらを叩いてるんだろな。ああ、せめてあと1人…、あと1人マイスターがいれば乗り越えられそうなんだが)
内心、焦っていた。シュヴァルツの親玉を叩かない限り、これは続く。
(くっ、策に嵌められたか)
歯噛みしているその近くでは、3人のコーラルたちがディートたちを守っている。が、その奥。そう、ディートたちから不思議な気配を覚えていた。そして、それは動き始める。

 フユノはロッドを手に奮戦していた。ディートたちを、そして学園長を守るために。
(くそっ、追いつかねえっ!!)
守っているつもりでも、自分の身を守るので精いっぱい。そんな風に彼女には思えた。ともすれば、攻撃が腹を、頬を穿ち脳裏が白くなりかける。
「おらああっ!」
ロッドを握りしめ、己の根性を込めて下からすくい上げる!ひっくり返った鬼械が別の機会もろとも吹っ飛び、音もなく霧散する。けれど別の鬼械が次から次に襲いかかってくる。
「今の俺じゃ……敵わなねぇのかよ…」
思わず呟き、膝をつきかける。それでも体を起こすのは、守り人……オトメである、という信念。だけど、その体は悲鳴を上げている。脳裏に浮かんだのは、土に倒れた双子の片割れ。
「畜生……っ!」
泣きそうになった。悔しかった。だから、力がほしい。皆を守るための力、大切なものを守るための…そんな力が。それはそばで戦っていたエンゲットと陸も同じだった。ロッドで戦いながらも、己の力不足を痛感していた。
(もっと、強くなりたいっ!あたしちゃん、お父ちゃんみたいに傷つけたくないもん!)
エンゲットは歯を食いしばる。陸もまた、泣きそうになるのをこらえ、踏みとどまる。
(あの人みたいに、失いたくないっ!おいらだって……力がほしいっ!)
二人は必至だった。どうしても、力がほしかった。だから、三人はロッドを手に戦いながら、切実な思いを叫ぶ!!!

―大切な人を、守りたいだけなんだっ!

その言葉に、ディート、咲乱、ウィズムは顔を見合せ…頷く。手の中からは力強い光がこぼれ出る。そして、それぞれが選んだオトメへと……。
「フユノちゃんっ!」
ディートは叫び、倒れそうになるフユノへと駆け寄る。
「馬鹿野郎っ!お前は後ろに下がってな!」
「そうじゃないんだっ!フユノちゃん……ううん、フユノ・アトツキ。僕がもつGEMを受け取って欲しいんだ!」
ディートはフユノの手を取り、必死な瞳で叫ぶ。が、その上で瓦礫がうめき、大きな塊が降ってくる。
「あぶないっ!」
フユノより早く、ディートの体が動いた。少年は手を伸ばし、とっさにそれを持ち上げ、鬼械へと思いっきり投げつけた。それにフユノは息をのむ。ディートの瞳が、悲しげに細くなった。
「僕……こんなのだけど……」

「エンゲット・セイルーン。僕のオトメとして戦ってほしい……のらっ!」
膝を突こうとしていたエンゲットを支え、ウィズムが叫ぶ。突然の言葉に、エンゲットは目を丸くした。
「いっ、いきなり何いうの?あたしちゃん、まだコーラルだよ?!」
「コーラルとかパールとか関係ないのら。実をいうと、さっきの戦いをこっそりみていたのら。その時、このGEMと僕の心が響いたのら!君こそが、僕のオトメなのら!」
ウィズムは真剣にエンゲットを見つめる。飛んでくる攻撃を持っていた棒きれで避けつつ、彼は小さく微笑む。
「僕は、未熟な…無茶をしやすい王かもしれない。けど…君となら一緒にいける。そんな直観があるのらっ!」

 陸は戸惑っていた。目の前に故郷・ヤマト国の皇太子がいる。しかも、自分に対し跪いて手を差し伸べて。まるで踊りに誘っているようだ。でも、言葉や瞳は違う。
「こんな時になんですか。非常識にもほどが……」
「こんな時だからこそ、だ。月華 陸。……俺のオトメになってくれっ!」
瞳が重なり、陸はどきっ、とする。しかしその間を鬼械が裂こうとし…とっさに咲乱は陸を抱きかかえ、そのまま転がって攻撃を避けた。攻撃を食らったのか、右肩から赤い飛沫が上がる。
「で、殿下!」
思わず声を上げる陸。護る立場である自分が護られ、しかも傷まで負って……。
「はは、ざまぁねぇ。けど……陸。こんな馬鹿を……支えてくれねぇか?」

三人のコーラルは、同時に、頷いた。
 そして、三人のマスターは、それぞれのオトメにGEMを渡す。
 オトメたちはコーラルのピアスを外し、新たなピアスをはめる。
 マスターたちはそっと、指輪を指にはめた。

「我が乙女、フユノ・アトツキ、虚空のごとき蒼を抱きし蒼天の青玉の貴石を持つ武姫よ」
ディートの言葉に、フユノは顔を上げる。
「我が乙女、エンゲット・セイルーン、古に伝わりし白銀を纏いし流水の透輝石の貴石を持つ戦姫よ」
ウィズムの言葉に、エンゲットは表情を引き締める。
「我が乙女、月華 陸、情熱と信念を集めたる紅を秘めし孤高の紅翡翠の貴石を持つ騎姫よ」
咲乱の言葉に、陸は小さく頷く。

-汝の力を開放するっ!

同時にディートが、ウィズムが、咲乱が…フユノの、エンゲットの、陸のピアスへと口づけを施す。

―それが、契。

(続く)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

変身シーンは次回、ということでっ!
あと、今回長くなっちまったから削ろうとも思ったんだ。
でもできなかったんだぜー(涙)
あと、言わずもがな、『我が乙女』と書いて『マイオトメ』とよみます。

そして、完成したのでアップ。水曜じゃないがなっ!
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by jin-109-mineyuki | 2009-01-19 22:17 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)