ある野良魔導士の書斎

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『むげファン参加者に30のお題』より19:うた


空は澄み渡り、雲は流れる。その下で繰り広げられているのは模擬戦闘だ。しかもアビリティをつかってもいい事になった、本格的な。そのなかで、痩せたエンジェル族の少年が身の丈にも近いクレイモアをぶんまわしていた。その豪快な戦い方に、繊細なステップが加わる。まるで炎のように繰り出される一撃が、紅を纏って相手を翻弄する。
―少年の攻撃が、相手の背中を土につけた。

ここはホワイトガーデンにある小さな村。
その自警団での模擬戦闘に、冒険者となったディートも参加させてもらっていた。
自警団員の中にはグリモアに誓いを立てた者も多く、そのためディートも入れたのだ。

た』

「ふぅ、つかれたんだよぉ」
そういいながらディートは気の根元に腰を下ろした。先ほどまで模擬戦闘で戦っていたが、負けてしまったので退場となったのだ。うまくフレイムブレードが決まった直後、別の相手のブラストタックルを喰らって倒れたのだ。
「それにしても、皆強いな」
そう思いながらまだ戦っている仲間達を見つめる。誰か1人になるまで戦い続ける模擬乱闘戦で、ディートは最後まで残ったことがない。
(こんな姿を見ていると、なんかドキドキしちゃうな)
強い同業者たちは、今も楽しそうに戦っている。武器のぶつかる音、砂の毀れる音、僅かに血が飛ぶ音……。その全てが少年の心を振るわせる。
「もっと、強くなりたいなぁ。そう思ってたら歌いたくなっちゃったなぁ…」
そういいながら、徐に立ち上がる。と、少年はすぅ、と息を吸った。

 あたりに、やさしい歌声が響く。その声に瞳を細めながらエンジェル族の青年が白く短い髪を弾ませながらディートの側へと駆け寄った。ディートは気づいていないのか、のびやかに歌い続けている。
(ああ、あの子はやっぱりあいつの子供なんだな)
どこかもの寂しげに微笑みながら彼は歌う終わるまでその場から動かなかった。が、気づいたのか、ディートは歌うのをやめてにっこりした。
「おじいちゃん、どうしたの?」
おじいちゃんと呼ばれた青年、ハーシュは微笑んで歩み寄る。
「いや、なかなか歌が上手いなと思ってな」
ハーシュはそういってディートの頭をなでる。くすぐったそうに瞳を細める孫に、彼は少しだけ顔を綻ばせる。
(てっきり父親や妻と同じ吟遊詩人になると思ったが…まさか狂戦士になるとは)
それは、あの一件が原因か、と思い出しながら瞳を細め、その場に座り込んだ。

 ディートは冒険者になる前、ギアに取り込まれたことがある。それを冒険者に助けられて、彼もまたグリモアに誓いを立てたのだ。そう聞いたとき、ハーシュは最初父親と祖母がなっている吟遊詩人になっていると思った。ディートは今より小さい時から歌ったり踊ったりするのが好きだったから……。しかし、ディートは大きな剣を手にし、狂戦士として戦うことを選んだ。

『おじいちゃん、僕、強くなりたいの』

そういって、剣の扱い方を教えてほしい、と来た時のことを思い出し、納得がいった。あの子は歌よりも剣を選んだ、と。でも、今はこう思う。

―あの子は剣も歌も選んだんだ。

 孫の頭を撫でながら、ハーシュは思い出す。ディートの戦う姿はどこか舞を舞っているように見えるのだ。そして、飛んだり跳ねたりする音や武器と武器がぶつかる音などが不思議と、歌っているように聞こえてくる。ディートの体は、確かに、戦うたびにその喜びを歌っている。さっきまで歌っていた歌のように、のびやかに、元気よく……。そんなふうに戦う孫を、ハーシュは愛しく思う一方で、危うくも思う。
―いつか、その戦い方で壁にぶつかるかもしれない。
それでも、切実に願っている。
ディートがディートらしさを失わないまま戦い続けることを。
仲間を奮い立たせるように、歌い続けることを。

(終わり)
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……お題にそっているがはさておき……。

ディートの過去を少々。あの子は過去にギアにとらわれたことがあるのです。だから「ギアと戦う力が欲しい!」と思い冒険者に。でも今ギアは……DGだけだっけ?とりあえず、この子はこれからも冒険者としてがんばりますよ。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-26 00:51 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)