ある野良魔導士の書斎

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設定が (ディート、ばれ・・・・)


 舞闘大会は盛り上がりを見せ、いよいよ決勝戦となった。そこに立つのはフユノとエンゲットである。
「ふむ……。出場したパール全員がやられるなんてね」
ユイエが呟いたとおりで準決勝まで残ったパールもこの二人に倒されたのである。傍らの陸とディートはステージを見つめていた。
「でも、それだけあの二人が舞闘に関しては優れている、ということだね」
陸はため息混じりに呟く。と、いうのもステージ上の二人はきらきらと瞳を輝かせているからである。それは獲物を前にした狼にもなんとなく見え、オトメらしくない、と少し苦笑する。
「ガルデローベは確かに競い合う場ではあるけど……やはり、戦う姿も競い合う姿も華麗じゃないと」
「競い合う場?」
ディートが首をかしげる。ユイエと陸は静かに頷いた。
「ああ、そうさ。ディート、この学校には入学試験があるのは知っているよな?一体何人ぐらい毎年応募すると思う?」
ユイエの問いに、ディートは目をぱちくりさせる。オトメが人気の職業であることは知っていたが、毎年の入学志願者数までは知らなかった。黙って首を傾げていると彼女の口が開く。
「毎年500人から600人ぐらいだ。そこから筆記・実技・面接・舞闘と四種類の試験を受けて50人がやっと入学できる」
「そこから進級できるのは大体25人から20人。そして……最終的にオトメになれるのはほんの一握りなんだ」
陸が言葉をつなげ、そっと瞳を細める。
「だから、競い合う場でもあるんだよ」
と、その時…建物が大きく振動した。それも立て続けに何度も……。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
5:襲撃!?

「……!」
振動に気がついたフィクロルクは瞬時にマテリアライズし、周囲を警戒する。スロウスもまた二人の客人を守ろうと身構える。
「これは一体…何だ?!」
咲乱が怪訝そうな顔をしていると、ウィズムがステージ上を見ていた。手の中のGEMから真っ白い光が僅かに毀れている。
「あの子たちのどっちかが、僕のオトメなのら!今すぐ会いに行くのら!!」
「まってください、陛下。今は危険すぎます。とりあえず避難を」
スロウスが止め、咲乱もまた頷いて彼女へついていく。舞闘場ではオトメたちが振動を堪え、陸とユイエはディートを庇っていた。
「くそっ、何者かが攻撃を喰らわせたようだな。
 トリアスに告ぐ。今すぐ大会を中止させろ。そして全生徒で調査に当たれ!わかり次第捕獲なりなんなりしろ!上手くクリアしたものにはオトメハートなり刑罰なしなりなんでもやるぞ!」
スロウスは通信をいれ、二人を案内しつつそういった。

「まってましたっ!」
フユノがロッドを手にステージを降りる。エンゲットもまたそれに続き、陸とユイエもローブを展開していた。
「なんかすっごくノリノリだね、フユノちゃん」
その輝きようにディートが苦笑していると陸が頷く。
「彼女の事です。多分宿題未提出でもおこられないようにしてもらおうとか思っているんでしょう」
「それにしても、一体何者だろうな…ガルデローベに攻撃だなんて阿呆な真似を」
ユイエが真剣に考えている側で、エンゲットがふとディートを見る。確かシュヴァルツがディートの命を狙っていた。となると
「ディートちゃん狙いじゃない?」
「そのとーりっ!!」
不意に、声がした。そして、次の瞬間……、二人のシュヴァルツが姿を現した。エンゲットとフユノとディートには見覚えがあった。
「「「あ、やられ要因」」」
「その呼び方は不本意ですわ」
赤い衣服の女性、ジェムフラウが黒いローブ姿のハクビを伴って現れる。ハクビはにっ、と笑いかける。
「他の連中はうまく陽動に引っかかって別方向へ散ってくれた。戻ってくるまで時間がかかる」
「見習いオトメだけで勝てると思わないことですわ」
ジェムフラウがそういうなり、1人の男が姿を現した。白い髪が特徴的な、痩せた青年だ。盲目なのか、瞳を閉ざしている。そしてその人間に、ディートの表情がこわばった。
「はじめまして、オトメの見習いさんたち。そして、お久し振りですね、ディート殿下」
「……博士……」
「えっ?」
ディートの声が震える。周りのオトメたちにも動揺が走った。ディートが彼を知っていることが、微妙な空気を生んでいた。
「表向き、病気だった殿下は我々がお預かりしていたんですよね。そして軍資金をこっそり国王陛下からいただいていまして…我々はここまでのことをする事ができたのですよ」
「出鱈目いうんじゃねぇ!」
ユイエがエレキベースを構える。パールオトメの武器…マテリアルは本人の意思によって変化する。彼女の場合は特殊で、エレキベースがマテリアルなのだ。彼女は身構えると後ろのコーラル三人とディートに目配せし、出ろ、という。ディートが何かを言おうとするも、二人は素早くそこを離れた。
「あっ、待て!!」
ハクビそれをみつけ、四人を追いかけようとするもユイエは前をどかない。ピックを手にシュヴァルツの三人を睨み付ける。
「俺が相手だ、シュヴァルツ!いくぜっ!!美力開放……『電子低音偏執疾患(テクノベースパラノイア)』!!」
周囲を、深い低音が響き渡る。舞闘場が振るえ、重力が三人に襲い掛かる。が、彼らもオトメ対策をしているのか、例の機械を召還していた。今回は1人一台なのか、ハクビは虎、ジェムフラウは鷹、博士と呼ばれた男は狼を模したものだ。それでも響き渡る低音が、音波が、その3体の動きを奪う。
「くっ、噂には聞いていましたが……。しかし、貴女1人で3体も相手にできないのです!」
狼型の機械からノイズが放たれる。音波同士がぶつかり、その振動でマテリアルが振るえた。それでもユイエはしっかりとふんばった。ベースでメロディを奏でながら、敵の動きを奪い、少しでも時間を稼ぎたかった。

 誰一人息を切らせることなく、四人は走っていく。どうやら他にもシュヴァルツの機械はいたらしく、あちこちで戦闘がおこっていた。パールとコーラルで協力し、それでも漸く1体倒せるぐらいで、エンゲットとフユノ、陸はそれからもディートを庇っていた。
「……お前、まさか…シュヴァルツの施設から逃げ出したのか…」
フユノの言葉に、ディートは黙って頷いた。
「うん。僕、本当はねオトメ対策としての研究対象だったの。だから、僕……本当は病気なんかじゃなかったんだ」
「「オトメ対策としての研究対象?」」
エンゲットと陸は声を合わせて目を丸くする。オトメをよく思わない人間は確かにいる。が、そのオトメ対策としてディートが実験体になっていたとは、どういうことだろうか?
「オトメって、『男の人が持つ特定の酵素』っていうのが体の中に入ったらナノマシンが力を失うの。それは、みんなしってるよね?」
ディートは首を傾げつつそういう。その『男の人が持つ特定の酵素』が何なのか知らないらしい。少年の言葉を、三人は静かに聞きながら走った。
「つまりはね……」
ディートがそこから先を言おうとした時、大きな地震がもう一度おこる。そして、思わずこけそうになるのを、ふわり、とスロウスが支えた。
「が、学園長!あれ?そこの二人は??」
エンゲットが問うとおり、彼女の後ろには若い男性が二人いる。スロウスはばつが悪そうな顔になる。その二人は非常事態にも動じず、笑顔を浮かべた。

(続く)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急展開なのは、まぁ、大晦日までに決着がつくか否かであります。
契約シーンにまで漕ぎ着けられるかが不安。とりあえず石があるんだから、やらないとおもしろくないでしょ!!やった意味ないよ!?

―あれ? ディートの怪力見せる前に正体が(涙)。

(2009年 1月 7日 補足)
すみません、陸がぬけていました。と、いうわけで一部修正。
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-18 21:34 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)