ある野良魔導士の書斎

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いちおう続く、物語 (咲乱とウィズム、でくわしたー)


「しっかし……なぁ」
漆黒のポニーテイルを揺らしながら、とある学校から出る青年が1人。彼は小さくため息をつくとなにげなくある店へと足を運ぶ。ガルデローベのグッズが売ってある店だ。
「土産だからってなにもオトメたちのブロマイドを頼まなくてもいいじゃんか、あいつら」
そういいながらも色々な商品をみていると、見覚えのある影がそばを通った。墨色の三つ編みを揺らした、小柄な少女らしき人影。
「ウィズム……さま?」
「その声は咲乱くんなのら。久しぶりなのら!」
ウィズムと呼ばれた少女…のような少年は小さく微笑むと駆け寄る。こうしてみると咲乱と呼ばれた少年のほうが年上に見えるが、実はウィズムが4つも年上である。彼は小声で耳打ちした。
「実は三日前に国王になることが正式に決まったのら。でもその為には僕のオトメを自分で任命してからなのら」
「……ガルサの伝統っすね。石にオトメを選ばせるって…」
「そうなのら。この『流水の透輝石』が選んだ相手が、僕のオトメなのら」
そういうと、ウィズムは小さく顔をほころばせた。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
3:元気がない時は

ガルデローベに来て早3日。ディートはコーラルの生徒たちとともに勉強していた。……が。
(うわぁ、むつかしいことわからないよ~!)
教科書に目を通しつつ、ディートは眉をひそめる。ある程度のことは知っているものの、それ以上のことがそれには書かれていたからだ。それをフユノやエンゲットはちゃんとこなしているのである。
「宿題を忘れたら真祖さまから厳しいおしおきが待っているけど、立派なオトメになるためだ。がんばらないと」
そういっていたのはコーラルNo1の月華 陸。彼女は小さく微笑みかける。主にディートのお世話をするのはフユノとエンゲットの役目ではあるが、陸はコーラルのトップとして時々ディートの面倒を見る。
「ふぅん、オトメになるって厳しいんだねぇ」
「でも、そうして鍛え上げられた逸材が国の守り人になるんだぜ?」
フユノが後ろから声をかけてきた。今は丁度お昼休み。食事のあとでディートたちはテラスで次の授業の予習をしていたのである。
「フユノちゃんはよく宿題を忘れるよね?」
「あ、あれは…トレーニングやっててつい、だよ!!」
「相変わらずなんだな、フユノ。でも、真祖さまもあきれるよ?」
そういわれ、フユノは苦々しい顔になる。ディートは彼女たちの会話を聞きつつ、胸元に手を置いた。僅かに鎖が見えたのか、陸が口を開く。
「ところでディート様。その首から提げているものは一体?」
「これ?……僕のお守りだよぉ」
そういい、ディートは懐からペンダントを取り出す。それは美しいオーブだった。青いそのオーブを見つめ、小さな声でエンゲットが呟く。
「こ、これは……『蒼天の青玉』?!」
「……僕ねぇ、ずっとこれをもっていたの。父さんと母さんがね、大切にしなさいって渡してくれたんだよ」
ディートはそういってにっこりと笑う。が、直ぐに表情を曇らせた。
「でもね、普段はみせちゃいけないの。悪い人に渡ったら大変だから。だから、僕、ずっと隠していたんだけど……」
そういって懐に戻すディート。現在国王は病に倒れ、実質王妃と国王の右腕である宰相ががんばって国を治めており、現在オトメはいない。本当は早く両親に会いたいものの、暫くの間は会えない、といわれディートはもの寂しい気分になっていた。それを知ってか知らずか、陸をふくめた3人はよくディートのそばにいてくれる。
(ディート様が生まれてまもなくヴィントのオトメは引退し、それ以降いない。殿下はヴィントの世継ぎだから、国王夫妻が託したのか。それなら納得できる。しかし……)
陸にはなにか腑に落ちない部分があり、少し考える。しかし何もわからいので考察をやめた。そして食後の紅茶を入れていると……白い手がおいしそうなクッキーを持ってきた。
「! ミィニャお姉さまではありませんか」
「みんなにおやつです。先ほどの実習で作りすぎたから、おすそ分けです♪」
そういって現れたのはパールNo2(トリアス)のミィニャ・ベルトゥリー。彼女は面倒見のいいお姉さまとしてみんなに慕われている。ちなみに、エンゲットは彼女のお世話係だったりした。
「はじめまして、ディートさま。僕はミィニャ・ベルトゥリーと申します。よろしくです」
「よろしくだよぉ。僕はディートといいます」
礼儀正しく挨拶するミィニャに、ディートはニコッ、と微笑みながら暖かそうな人だなぁ、と思った。

「ミィニャお姉さま、ディートさま…少し元気がないようなです」
しばらくして陸はミィニャに相談を持ちかけた。エンゲットとフユノがディートを励まそうとしているが、いまいち効果がないことも伝え、ミィニャは小さく頷く。
「恐らく、ヴィントに戻ったのにご両親に会えないから寂しいんです。
 どうにかして、元気になっていただきたいですねぇ。ディートさまの好きなもの
 でも作って様子を見るです」
そういったとき、陸は少しだけ「あ、」と小さな声を漏らす。
『そういえば、シュヴァルツに襲われたんだけどよ。
 そのとき俺たちの戦いを見ててディートはすっごく喜んでたよ!
 だから舞闘の授業とかみせたらよろこぶんじゃねぇかなーって俺は思うけど』
フユノの言葉をその時は窘めた。が、今思えば……。
「ミィニャお姉さま。いいことを思いつきました。
 ディートさまの歓迎もかねて、舞闘大会を開いてはどうでしょう?」
その言葉に、ミィニャは小さく頷く。
「では、早速学園長とトリアスのみんなにかけあってみるですっ!!」

こうして、ディート様歓迎記念舞闘大会が、開かれることになった。

(続く)
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by jin-109-mineyuki | 2008-12-03 23:28 | 閑人閑話図書館 | Comments(0)