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ある野良魔導士の書斎

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とりあえず、マンガ版第一話と比較しないで(汗:ディート、ついにガルデローベへ!?)


 なにやら騒がしい。それに気づいた少女は素早く支払うとその騒動の場所へと赴いた。転がるバスとパトカー、剣呑な空気。そして…コーラルオトメらしく少女と守られている少女。シュヴァルツらしき二人組はどうやら、白い髪の少女を狙っているらしい。そして、警察官らしき二人も少女たちを守ろうとしている。
(……あの子は…一体誰なのら?そしてシュヴァルツの狙いはあの子なのら。一体何が…)
そう思っていると、少女が持っていたGEMが僅かに反応した。ふんわりと輝くそれを懐へ戻し、彼女は騒動を物陰から見つめていた。

 風が吹く。エンゲットたちが顔を上げると、そこには1人の女性がいた。小柄だが中々のないスバディでしかもどこか豪胆そうな雰囲気も漂う。彼女は白衣を棚引かせるとふっ、と不敵に微笑んだ。

お芝居SS『舞―乙HIME アナザー☆フェザー』
2:マテリアライズ!

「俺様はフィクロルク・シルバー・グロウ。『黒焔の金緑石』って名が今は通ってるが…てめぇらもそれぐらい知っているだろう?」
「って保健医じゃんかよ!?」
眼鏡を正しながら言うロルクに、フユノがあからさまにいやな顔をする。が、それを見逃す彼女ではない。
「フユノ、お前帰宅したら校庭100周な」
「職権乱用!!」
「まあまあ落ち着いて……」
指差しで言われたことにフユノが怒り、エンゲットが諌める。シュヴァルツの二人はその間にも砲撃をロルクへと合わせていた。
「くそっ、マイスターかよ!」
「ここで討ち取ればいいのですわっ!」
と、機械を動かし…砲口をロルクへと向ける。が、誰もが緊張しなかった。ただ、ディートだけがはらはらとその様子を見ている。
「あの人はマイスターオトメだから、大丈夫だよ。安心して」
「そうだなぁ~ん。クルーエのいうとおりだなぁ~ん」
二人の警察官に言われても、ディートはおろおろするばかり。しかし、ロルクは微笑んだ。彼女はそっ、と左耳に二本の指を添え、何かを唱える。
「くっ、容赦いりませんことよ、ハクビ!」
「おうっ、派手にいくぜーっ!!」
ジェムフラウの言葉にハクビがスイッチを押し、砲撃が炸裂!轟音と共に煙が立ちこめ、建物が倒壊する。
「ほ、保健医さーんっ!!」
ディートが叫んだ途端
「っ、派手にやってくれたじゃねぇか」
とロルクが無傷で姿を現した。黒い短めのパンツからすらりとした足が伸び、その手には蛇腹剣が握られている。ローブを展開した彼女はその場にすたっ、と降りコーラルコンビに目を向ける。
「ローブ使用を許可してやる。展開しやがれ!!」
「応ッ!」
その言葉に、フユノが勢いのある返事を返す。エンゲットと顔を見合わせ頷いているとロルクがそれぞれのピアスにそっ、と唇を寄せた。
―これが、承認の儀式。

「「マテリアライズッ!!」」

瞬間、眩い光が二人を包む。そして、音もなく紅のローブに身を包んだ影が姿を現す。
「っしゃあっ!!我慢していた分暴れるぜ!!」
「いくよっ!!」
フユノとエンゲットがそれぞれロッドを握り締める。そして素早く機械へと詰め寄る。
「見習い程度に負けなくってよ!」
ジェムフラウの叫びに、フユノが気合と共に思いっきりロッドを振り上げる。派手な音を立ててへこむ装甲。同時にエンゲットが後ろからロッドを叩きつけ、ロルクが重ねるように一撃を見舞う。瞬く間に砲台がばらばらになり、
「! 姐さん、まずいっすよ!うごかねぇ!!」
反撃できぬまま攻撃手段を奪われた機械に青ざめるハクビ。ジェムフラウはぐぅ、と呻く。
「てめぇら、纏めて飛ばしてやるぜぇ?クークックックッ!」
そんな笑いと共にロルクが眼鏡を光らせる。そして蛇腹剣に力をため、そのまま一閃。
―美力発動 エナジーブラストッ!
バリバリバリバリバリッ!!
「「や、嫌な感じぃ~~っ!!」」
轟音がとどろき、淡い紫を帯びた光が機械を破壊する。その勢いで、シュヴァルツの二人組がぶっとんでいった。

「っと。署長と警部補さん。手ぇ煩わせてすまなかった」
「いえ。でも、オトメちゃんたちもこの子も無事で何よりだよ」
ロルクはそういい、署長と呼んだ女性に頭を下げる。ディートは初めて見たオトメの戦いに目を輝かせ、若干興奮ぎみである。
「凄いっ!すっごーいっ!!オトメってすっごいんだねぇ!!」
「強すぎる力だから、考えなきゃいけないんだよ」
そういいながら、署長はディートの頭をなでる。警部補はふふ、と小さく笑うとどうにか転がったパトカーを起こし、調子を見ていた。
「うん。動くなぁ~ん。とりあえず、俺たちは任務に戻るなぁ~ん。
 クルーエ、さっさか乗るなぁ~ん」
そういわれ、署長はパトカーに乗り込む。過ぎ去るパトカーを見送った4人は一息つくと顔を見合わせる。
「で……。
 今回のことはシュヴァルツを予測してなかった俺にも不備があるから、な。
 んでディート様にも怪我はない。ちゃんと守れたし、お咎めはないだろうよ」
ロルクはそういい、若干しゅんとなるコーラルの二人に笑いかける。
「けどよ、俺……なーんかやきもきしたな」
「仕方ないよ。承認もなしに展開できないんだから」
そんな事を言い合うフユノとエンゲットをディートがまあまあ、と嗜める。
「でも、僕は無傷だから結果オーライなんだよぉ。だから、元気だして」
「そーそー。そんじゃま、戻ろうぜ?……学園によ」
彼女の言葉に、一同が頷いた。

 暫くして、一同はガルデローベへとやってきた。ディートは暫くの間ここで過ごすことになる。そう思うと少し緊張した。
(男の子ってばれたら、追い出されちゃうんだよね。そうなったら、僕はどこで暮らせばいいんだろ?やっぱりアスワドに戻るしかないのかなぁ)
そんな少年の内心を知ってか知らずか、エンゲットはにこっ、と微笑みかける。
「大丈夫だよ、ディートちゃん。あたしちゃんたちとがんばろうね?」
「うん」
小さく頷いていると、ぽん、とフユノが肩を叩いて笑いかける。頼もしい笑顔に、少しだけ不安が和らぐディートだった。

(続く)
by jin-109-mineyuki | 2008-11-26 21:55 | 閑人閑話図書館