ある野良魔導士の書斎

fureinet.exblog.jp
ブログトップ

これ、リプレイするなら何度か遊ばないと(汗:ヒスイ、暫く立ち直れないかも)


冒険者の宿【水繰の剣亭】:42
ありのままの貴方が消えないように

 宿を飛び出したヒスイは、いつの間にか近くにある『礎の神話亭』という冒険者の宿に来ていた。そしてカウンターに座り、一人白ワインを飲み干す。エールが苦手な彼は酒を飲む場合大抵白ワインだ。
(参ったな)
彼が思い出したのは護衛中に出くわした依頼だった。奇跡をうけ『処女解任』がおこったと騒いでいた村で裏を調べて欲しいとある少年から依頼された。
―しかし、翌日…その少年は殺されていた。
 それもまた、恐ろしく変わり果てた状態で。
村の人々は『処女解任』を信じきっており、その少年の遺体はトランス状態の人々によって焼かれた。共に護衛の依頼を受けていたデシールとトゥーレの二人の冒険者もあの異変に巻き込まれ――いや、デシールは元々その異変を解決することが目的だった――、ヒスイたちはその真実を見……結果、レーテに宿ってしまった異形と対峙し、2つの命を失った。
仲間と、彼女を。
「……っ」
「おい」
涙を堪えていると、声が振ってきた。振り返ると翡翠色の髪をした青年が笑いかけている。
「なんだ、ソウキュウさんか」
ソウキュウと呼ばれた青年は『礎の神話亭』の冒険者であり、【スズキ組】のムードメーカーである。彼はヒスイの隣に座ると親父にエールを注文する。そして、いつもの笑顔で覗き込んだ。
「どーした?何しけた顔してんだよ」
「……ちょっと、色々ありまして」
その横顔に酷い影を覚え……ソウキュウは真面目な顔でヒスイの頭をわしゃわしゃと撫でてやった。それにまた泣きそうになるも、ヒスイは必死に堪えた。
「俺もまぁ、結構長いからな。無理には聞かねぇよ。でも、辛かったら泣いていいんだぜ」
「……」
ソウキュウはエールを受け取り、ため息混じりにそう言って一気に飲み干す。ヒスイはただ、の見かけの白ワインを見つめ、小さな声で話し出した。

 キャラバンの護衛で出会ったデシールとトゥールの事。途中の村で聞いた『処女解任』の奇跡。その裏を探りたがったが故に殺されたクインシー。奇跡の娘とされたレーテ。『神に背くもの』、力の源たる『トーテム』と汚染された区域『グール』。ドクウツギ。悪霊の語った真実。トゥーレの過去。花に埋もれた遺体。狂った一瞬。散った紅。失われていく温度と変化のない重み。そして、呼び続けた名前。

その全てをヒスイはぽつぽつと語り続けていた。いつのまにか、涙が毀れていた。
「…あの時、俺にも聞こえていました。魔物の声が……宿ってしまっていたあの存在の声が、です。そして、とめることが出来なかった。その事は、やっぱり…悔しいんです」
それだけ言うと、ヒスイは黙り込んだ。ただ、溢れる涙を抑えきれず、俯いたまま、泣き続ける。
「お前な。難しく考えるな。その子が欲しがっていたものを与えられたわけだし、その子を覚えているんだろ?」
ソウキュウは小さくため息を突いた。そっと頭を撫で、一度だけぎゅっと抱きしめる。
「失った仲間のことを覚えているか?…なら、覚えておけ。そして、その子の事も。たとえどんな選択を選んだにしても、残ったならばその道を歩き続けなきゃいけねぇ。……俺はそう思うんだ」
「……アメジストと同じ事を、いいますね」
俯いたまま、ヒスイは泣き腫らした顔で小さく微笑んだ。

 一方『水繰の剣亭』ではコーラルが一つの瓶を握り締めたままベッドに寝転がっていた。心を揺らした相手は、目の前で死んだ。その時何も出来ず、しかも仲間を庇って……。
(複雑な気持ちがする)
瓶を抱きしめたまま、翼で自分を覆うと彼女は小さく呟く。
「トゥーレ……」
あの時、アメジストが自己嫌悪に陥るヒスイに言った言葉が脳裏を蘇る。それが、今彼女に名を紡がせていた。

貴方の名前を唱えましょう。 ありのままの貴方を覚えているために。

一階の酒場に残ったアメジスト、ネフライト、タイガーアイ、トルマリンは顔をつき合わせ小さくため息を突いた。
「あー、言い忘れていた。あの一件が原因でさらに教会からの依頼が舞い込むらしい」
その一言に三人は目を丸くする。タイガーアイにいたっては飲んでいたミルクを噴出しそうになっていた。あっけに取られたネフライトが怪訝そうに声を潜める。
「どこで聞いたんです、兄さん」
「コネで」
と、アメジスト。彼は狐の耳をぴこぴこ動かしながら言葉を続ける。
「多分、デジールの上司とか関係者がからんでんじゃねの?そうとしか思えないけど……」
吐き捨てるように……そしてどこか不適に微笑んで、こう付け加えた。
「ま、俺は神なんて信じないけどよ。そいつらが俺らを手足みたいにしたいんだったらとことんつきあったろうじゃねぇか……なぁ」
「貴方らしいというか、なんと言うか。でも、忘れないでね。私はラミアよ。教会にしては拙い存在じゃなくて?」
「多分、気づいていないかと」
タイガーアイはくすくす笑い、ミルクを飲み干した。

(続く!)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回遊んだシナリオ(敬称略)
アモーレ・モーテ――或いは<存在/非存在>についての言及(Fuckin'"S"2002)

このリプレイ(もどき)は、上記のカードワースシナリオをプレイし、その結果と感想を元に書き上げております。シナリオ本来の著作権は各シナリオ作者さんのものです。また、リプレイに登場したスキルの著作権は、各シナリオの作者さんに既存します。

 多分名作といわれているかもしれない『アモーレ・モーテ――あるいは<存在/非存在>についての言及』の後日談っぽくなってしまったーっ?!これをやると最後でいつも涙ぐみます(因みにレーテに話しかける人を策士さんにしてしまうと感動が半減するので注意。過去にやってすっきりしすぎた:汗)。しかし僕なりの解釈つきで。と、いうのもある組織をのちほど敵として出したくて、その為と冒険者=悪者というイメージを持ちたくないのが本音なんですね。それ故にちょいと解説からちょいと引用したかったのですが、止めておきます(滝汗)。その代わり、彼らには今後も聖北関連依頼を中心にやってもらおかと考えています。彼も出てきたことだし?
[PR]
by jin-109-mineyuki | 2008-11-22 21:18 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)