ある野良魔導士の書斎

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『むげファン参加者に30のお題』より 20:影


 輝ける太陽の光を受け、それは音もなく伸びる。多くの一般人は、それがある意味危機感を呼び起こすなどあまり考えないだろう。だが、邪竜導士―ウロボロス―達が持つアビリティの中には、そういうものがある。

―その名は、≪ヴォイドスクラッチ≫



「さてさて……」
邪竜導士のギーエルはメイド服を身に纏い、颯爽と現れた。今は1人しかいない。目の前には元は冒険者であっただろう雰囲気のあるアンデットがいる。今日は1人でこれらを始末しなければならないのだ。4、5体ではあるが、油断ならない。小さく息を吐くと、音もなく黒い炎が体を舐めるように覆っていった。≪黒炎覚醒≫を施したことで、基本攻撃が≪ブラックフレイム≫へと変化する。
「かかってくるなぁ~んっ!」
ギーエルが杖を一振りし、挑発する。と、アンデットが襲い掛かってきた。距離はまだある。それをブラックフレイムで攻撃しつつ、相手を睨む。
(それじゃ、やるかなぁ~ん?)
杖を軽く地面へ打ちつける。口元を綻ばせ、軽く念じ……僅かな間を置いて影から無数の手が伸びていく。それらがアンデットへ絡みつき、防具を剥ぎ取っていくのだ。

「落ちろ、なぁ~んっ」
ギーエルは渾身の一撃を放ち、アンデットは崩れる。

ヴォイドスクラッチ。
それは術者の影から虚無の手を伸ばし、相手の鎧など防具を壊す技。
相手の鎧強度を無視し突き刺さる、邪竜の力……

「……だったらいいなぁ~ん」
ギーエルはカウンターに手を着き、傍らに置いた杖を見つめてそういった。影から虚無の手が伸びたら、どんなに楽しいだろう?そんなイメージがそこにあるのだ。この技を主に使う彼女はくすくす笑いながら杖を手に取る。
「キマイラ戦でも使えばよかったかなぁ~ん?そしたらちょっとはマシになったかもなぁ~ん」
この間、キマイラと戦ってきた彼女は黒炎覚醒と回復アビリティを積んで依頼に赴いた。戦闘では回復をメインにしたため、お気に入りのヴォイドスクラッチを積まなかったのである。地獄で行われた御前試合ではそれを上手く起用し、所属チームの勝利に貢献できた、と本人は思っている。
「アーマーブレイク効果は、伊達じゃないなぁ~ん」
彼女はそういいながら立ち上がり、かるく背伸びをした。その影のように黒いノソリンの尻尾をぱたぱたと揺らしながら……。

 よくよく考えてみればの話、ヴォイドスクラッチで生み出される手は影のように黒っぽい。だから影からにゅっ、と出てくるようなイメージが脳裏を過ぎったのである。敵がアーマーブレイク状態になり、焦るその顔を内心で楽しみつつイメージを膨らませ、またそのアビリティを使う。
「もう一発、喰らっておくなぁ~ん?」
今日もまた、彼女は影色の虚無を解き放つ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

どもーん、フーレイっす。
今回は「影」ってことで勝手にイメージしてしまったことを。キマイラ依頼と御前試合の話も少しはどうにかしたかったんですけど……一方は重傷者でてるし、もう一方は時間がたっているし、ということでちょいとだけ。そして実際にヴォイドスクラッチの際虚無の手が出てくるのが術者の影から、とは書いてないんでそこんとこはまぁ、ご愛嬌ってことで。

使用お題
『むげファン参加者に30のお題』(すみません、製作者は誰ですか:汗)

ぼちぼちとお題を消費しているわけですが、そろそろ3分の1を消費しようとしております。間に咲乱のSSも挟んでいるのでそうでもないかもしれないですけど。

イクスのSSについて。
いつかは書く所存ですが、いまんところはまだですね。まず咲乱の『17.4』を書き上げないといけませんから。十六夜なのに『17.4』なのは雰囲気的な問題なので気にしないでいただきたい。そして、イクスのSSは村での日常を冒険者になったきっかけを書くつもりです。
暗いので注意。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-14 20:19 | 無限銀雨図書館 | Comments(0)