ある野良魔導士の書斎

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一週間遅れ・・・(滝汗:アンバー、ちょいと……)



ルーンディア国境・無知の門。
そこにアンバーたち『六珠』と、アンバーの父であるトパーズがソルジャーによって検問を受けていた。
「…それでは、まずお前たちから見せてもらおうか」
男の言葉に、アンバーたちは頷きそれぞれが持つ身分証明書をみせるのであった。

『その魔力が見せる過去』

 身分証明書をみせたあと、一行はとりあえず自由行動にした。トパーズの依頼はルーンディアへついた時点で終了だそうな。それ故だ。
「なら、せっかくですし観光しましょう♪」
オニキスが珍しく提案し、ほかのメンバーも賛成した。そして一緒にみてまわろう、とトパーズは誘ったのだが、アンバー以外のメンバーはそれを丁重に断った。実は、久々に再会した親子二人でのんびりしてもらおう、と皆が画策したことだったのだ。そうとも知らず、アンバーとトパーズの父子は近くのレストランに入った。
「な、なんか気恥ずかしいなぁ」
「そういわない。さぁ、かるく食事を取りましょう」
少し頬を赤くして照れる息子の様子にトパーズはくすくすと笑い、メニューを開く。そして適当に見繕い、ホールスタッフに注文する。運ばれた水を口にしつつアンバーは小さくため息をつきながらあたりを見渡した。いろんな種族の人々が楽しく食事をしている風景は、どこか故郷の村を思わせる。
「いいなぁ、この雰囲気。俺、こういう空気がすきだな」
「私もですよ」
父子でほのぼのとその雰囲気を味わう。誰からも冷たい目を向けられることなく過ごす事が出来る。それが、心からの安息を約束してくれるようだった。暫くのんびりとしていたが、ふと、アンバーは数日前のことを思い出し、表情を曇らせる。
「そういえば……さぁ、親父。この間、冒険者にならないか、と誘ってくれた人に再会したよ」
「ああ、あの方ですか?」
「うん。でもその人……サードニクスとクインベリルとは別れたほうがいいって言ったんだぜ?種族がホムンクルスとヴァンパイアだからって……」
そのどこか苛立ち混じりの声に、トパーズはふむ、と唸る。思わず眉間に皺がよるのは考察を始めた証であり、それがどこか父親らしく思えて彼の口元が僅かに揺るんだ。
「クインベリルがヴァンパイアってのは知ってた。俺も血を飲ませたことがあるし。でも、サードニクスがホムンクルスってのは知らなかったな……」
頬杖をつき、ライムの香りがする水を飲み干しながら続ける。ヴァンパイアが迫害されてきたのはアンバーも知っているし、何よりそういうことに詳しい友人がいろいろ教えてくれたので覚えている。種族にホムンクルスという人工生命体が存在するのも。だが、スラムで拾ったあの少年がまさかソレであるとは、微塵にも思っていなかった。
「私は、なんとなく感じていましたね。あの子の魔力は天然のものとは程遠く、人間が生み出したものに近いですから」
トパーズはそういい、ふと目線をずらす。と、そこには見覚のある冒険者たちがいた。アンバーたちと同じくリューンを拠点とする冒険者チーム【ドルチェーズ】もまた、ルーンディアへ来ていた。彼は、瞳を細めて淡い紫色の髪の人を見つめていた。
「シオンさんたちもここに来ていたんだ」
シオンというのは一見長身な絶世の美女に見えるが、青年だ。その姿からは想像しがたいが、有能な剣士であり、腰には刀が下がっている。トパーズが見ていたのは、どうやら彼らしい。
「とても美しい女性ですねぇ、シオンさんという方は」
「親父。残念ながらシオンさんは男性だ」
アンバーがつっこみつつ言葉を付け加える。
「シオンさんは『静寂の鏡亭』という冒険者の宿に所属している冒険者なんだ。で、【ドルチェーズ】ってチームを率いているんだ」
「ふむ……」
アンバーが説明をしていると、その青年が席を立った。顔を上げた彼もまた、アンバーに気づいたらしい。シオンは徐に歩み寄り、小さく微笑む。
「アンバー……久し、いな」
「シオンさんも元気そうで何よりだよ。ああと、こっちが俺の父です」
アンバーに紹介され、トパーズは一礼する。すると、シオンはにこっ、と笑った。笑いなれていないのか、微妙にぎこちない。しかし、ややあどけなさも見える笑顔だった。
「俺、は…シオン・アーシュレイ、と…いう。アンバー……にはいつ、も、世話に…なっ、て、いる。よろし…く」
そういい、シオンは一礼する。トパーズもまた微笑み返すと、シオンの顔に安堵が浮かんだ。過去に色々あった人間の匂いをトパーズは感じ取っていた。
「シオンさんは幼い頃から傭兵団に育てられていて、剣術はとても強いんだ。『礎の神話亭』のソウキュウさんや『見えざる神の手亭』のバルディッシュさんにも負けないんじゃないかな?」
「よ、よして…く…れ」
シオンが、顔を少し赤くしてとめる。彼は肌が透き通るように白いため、余計に色づいた頬が目立つ。恥ずかしそうにしている彼を見ていると、やはり女性に見えるのだが。
「貴方も一緒にどうですか?」
「そう……した、いが、今…から、依頼、人と……こ、こで、会う……約束、をしてい、る」
シオンは残念そうにそういい、二人も残念に思う。が、依頼ならば仕方がない。
「そうですか。なら、次の機会にでも。私の住む村へ来た時には手作りパスタでもご馳走しましょう」
笑顔でそういうと、シオンは嬉しそうに頷いた。アンバーの村では本当に遊びに来て欲しい人には『手作りの』という言葉を付け加える。アンバーはそれだけ父が興味を持ったのだろう、と思った。シオンがそれでは、と一礼して席を離れる。と、トパーズは静かに瞳を細めた。
「かすかにですが、戦場の匂いがしますね。幼い頃からいたのならば、そうでしょう」
「ん? どうしたんだ?」
不意に呟いた父の言葉に、息子は不思議そうに首をかしげる。が、それを聞かず、トパーズは言葉を紡ぎ続ける。
「貴方は、その為に生まれたのですね」
「お、親父?」
その時、僅かにだがトパーズの体から魔力がもれるのをアンバーは感じていた。それに気づいたのか、彼は慌てて呼吸を沈める。が、反応したのだろう。トパーズと行動を共にする風の精霊が心配そうに寄り添う。
「アンバー。シオンさんはどうやら、貴方が思うよりずっと重い過去を持っているようです。もしかしたら、彼もまた……」
その言葉に、アンバーは息を呑む。一瞬だけ、彼にはその場の空気が張り詰めた気がした。

(終)

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後書き
ども、フーレイっす。
アンバーの父・トパーズですが、魔力が高い上、魔力の分析も出来るので、ああなりました。アンバーのSSにも引っかかるので、今回はこんな感じです。

どうなるのかしら(汗)。

おまけ:それぞれの身分証明書に書かれている住所

トパーズ・ティアーズ
及び
アンバー・ティアーズ
出身:アレトゥーザ・ソレント地方 ロリエル村

オニキス・ル・スターシア
出身:スターシア領内 エーデルワイス

サードニクス・フロレンティア
及び
パール・フレニール
出身:リューン スティード通り 33番

ジャスパー・エスファリア
出身:ラーデック シアン通り

クインベリル・ブレス・エアギアス
出身:ソレイユ領内 ヴェルファイア


サードニクスとパールはジャスパーの師匠である女性が保証人となっているためです。
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by jin-109-mineyuki | 2008-11-08 21:06 | 冒険者の宿【水繰の剣亭】 | Comments(0)